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第1章
花園の食卓
しおりを挟む案内された会場は、屋敷の一階にある広々としたサロンだった。
磨き上げられた床の先には、天井まで届く大きなガラス戸が開け放たれており、そこから手入れの行き届いた美しい英国式庭園へと続いている。
柔らかな陽光と、風に乗って漂う季節の花々の香りが、会場全体を明るく開放的な雰囲気に包んでいた。
「こちらへどうぞ」
会場内には、すでにお付きのメイドや従者たちを含めるとかなりの人数がひしめいていたが、実際に白いクロスのかけられた円卓に着く「主役」たちは、全部で十五名ほどだった。
色とりどりのドレスを纏った貴婦人たちが、扇で口元を隠しながら優雅に談笑している。
その華やかな光景の中に、水色のスーツを着たエリアスが入っていくと、一瞬だけさざ波のように視線が集まった。
男性の参加者はエリアス一人だ。
やはり目立つ。けれど、エリアスは背筋を伸ばし、ヴォルフから教わった堂々とした歩調で進んだ。
会場には三つの円卓が用意されており、それぞれ五名ずつが座れるようになっていた。
エリアスが案内されたのは、庭園が一番美しく見える、中央のメインテーブルだった。
「ようこそお越しくださいました、ハルトマン卿」
その席で待っていたのは、この屋敷の女主人である男爵夫人だった。
エリアスよりも一回り以上は年上だろうか。
落ち着いた葡萄色のドレスを着こなし、穏やかながらも、この場を統べる者としての威厳と気品を漂わせている。
「初めまして。本日はお招きいただき、光栄です」
エリアスが洗練されたカーテシーを返すと、夫人はほう、と感心したように目を細めた。
成り上がりの妻だと侮っていたのかもしれないが、公爵家仕込みの所作に隙はない。
「ふふ、丁寧なご挨拶をありがとうございます。さあ、どうぞこちらへ」
夫人は自身の隣の席を指し示した。
「本日は人数が多いので、三つのテーブルに分けさせていただきましたの。初めて参加される方々は、こちらのテーブルにさせていただきましたわ」
「お心遣い、感謝いたします」
男爵夫人は優雅に微笑んだ。
その笑顔は温かく見えるが、目の奥ではしっかりと値踏みをするような光が宿っている。
「初めての方」を集めた席ということは、つまり「品定め」をするための席ということだ。
新参者がこのコミュニティに相応しいかどうか、女主人が直々に審査する最前線。
エリアスは緊張で喉が鳴りそうになるのを堪え、胸元の青いブローチにそっと触れて心を落ち着かせると、指定された席へと静かに腰を下ろした。
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