銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

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第2章

魂の所有者⚠️

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ヴォルフが次に意識を取り戻した時、窓の外は完全に夜の闇に包まれていた。
重いまぶたを開けると、腕の中にはぐったりと自分に背中を預けたまま、泥のように眠るエリアスの温もりがあった。

そして身じろぎした瞬間、下半身に温かく埋まったままの感覚があることに気づく。
気絶する前、結合したまま眠りに落ちてしまい、そのままの状態で目が覚めたのだ。

「……んぅ……」

ヴォルフのわずかな動きに反応し、眠っているはずのエリアスが小さく声を漏らして身を震わせた。
肌を合わせているとよく分かる。エリアスの体温はまだ高く、ヒートの熱は完全には引ききっていないようだ。
敏感になっている今のエリアスは、ほんの少しの刺激にも反応してしまう。

(……可愛いな)

ヴォルフは愛おしさに目を細めると、エリアスを起こさないように、ごくゆっくりと腰を揺すった。
意識のないエリアスの身体が波打つ。
中の壁が反射的にヴォルフを締め付け、甘い声を漏らす。

「ぁ……ふ、ぁ……」

無防備な唇から漏れる吐息。
背後から抱きしめたまま、ヴォルフは嗜虐心と愛欲を混ぜ合わせたような衝動に駆られた。
このまま、意識のないエリアスがイッてしまうところが見たい。

ヴォルフはエリアスを目覚めさせない絶妙な加減で、最奥を優しく、執拗に攻め立てた。
数分もしないうちに、エリアスの身体がピーンと弓なりに反る。

「……っ、んんッ!」

エリアスはそのまま意識のない状態で、ガクガクと小さく痙攣し、絶頂を迎えた。
二人ともすでに限界まで出し尽くしているため、射精はしない。

ただ、脳髄を駆け巡る純粋な快楽だけがスパークし、二人の身体を貫いた。
ヴォルフもエリアスの収縮に煽られ、息を吐いて快感を噛み締める。

「はぁ……なんて可愛いんだ」

無意識なのに、余韻で痙攣しているエリアス。
可愛くて、愛しくて、胸の奥から湧き上がる衝動が抑えきれなくなりそうだ。

ヴォルフはエリアスの髪を掻き上げると、首筋に刻んだばかりの「愛咬の痕」に唇を寄せた。
黙々と、祈るように、そして貪るように舐める。
まだ少し鉄錆のような血の味がする。
それを舌で転がしていると、心の奥底にある昏い支配欲が満たされていくのを感じた。

(これで、エリアスは正真正銘、私のものだ)

そして、私もエリアスのもの。
二人は魂で繋がった、「番」となった。
書面上の契約や、法的な夫婦という枠組みとは違う、何人たりとも切り離せない固い繋がりを手に入れたのだ。

ヴォルフはエリアスの左手をそっと持ち上げた。
だらんとした白い指。その薬指には、アイスブルーの宝石が輝いている。
ヴォルフは満足げにそれを見つめ、自分の左手にあるセピア色の指輪と並べた。

(……本当に、探すのに時間がかかってしまった)

本気でこの宝石探しには妥協できなかった。
それほどまでに、ヴォルフはエリアスの瞳の色が好きだった。
彼の純粋さ、ひたむきさ。そして、他人のために見せる強さ。
それらをそのまま結晶にしたような、美しく透き通ったセピア色。
この瞳に見つめられると、ヴォルフは彼のためなら何でもしてあげたくなるのだ。

そう自覚したのはいつだったか。
エリアスに言われた通り、「最悪な結婚式」を終えたあと、嫁いできた彼に再会してからだ。
最初は怯え、心を閉ざしていたエリアス。

ヴォルフは妻として迎えたからには良い関係を築きたいと思い、贈り物をしたり気を使ったりしたが、良い反応は得られなかった。

けれど、あの湖に連れ出した日。
揺れる馬車の中で見つめ合った瞬間、そして湖の美しさに感動し、瞳を輝かせたエリアスと目が合った瞬間。
ヴォルフの中で、何かが音を立てて変わった。
その時はまだ小さな芽だったが、確かな独占欲が生まれたのだ。

『この美しい人を、誰にも渡したくない』と。
その人が今日、ついに番となった。
一生、離すことはない。

「……私のものだ」

ヴォルフは低く唸るように、エリアスの耳元で呟いた。
エリアスは、ヴォルフの狂気とも言えるこの重い独占欲さえも、受け止めてくれる。
「食べられてもいい」とさえ言ってくれた。

(だが……)

ヴォルフはエリアスの寝顔を見つめ、熱くなった頭を冷やした。

(もう理性を失って、絶対にエリアスを傷つけることはしない)

受け止めてくれるからといって、自分の全ての衝動をぶつけてしまえば、繊細なエリアスは壊れてしまう。
それだけは許せない。

壊さずに、守りたい。
外敵からはもちろん、自分自身の底なしの欲望からも。

(誓おう。君を生涯、守り抜くと)

ヴォルフは改めて心に誓い、エリアスの頬に優しいキスを落とした。
そして、ようやく名残惜しそうにエリアスの中から自身を引き抜いた。

ぐったりとしているエリアスの身体を、お湯に浸した布で丁寧に拭い、新しいパジャマに着替えさせる。
自分も身なりを整えると、再びベッドに入り、エリアスを宝物のように抱きしめた。

エリアスが言うには、激しいヒート期間はこれで終わりだ。
明日からは微熱の残るエリアスを看病し、甘く穏やかな余韻の時間を過ごすことになる。

その幸せな時間を想像し、ヴォルフもまた、愛しい番と共に深い眠りへと落ちていった。
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