107 / 251
第2章
羞恥と余韻の朝⚠️
しおりを挟むエリアスが目覚めた時、窓の外はすでに明るく、清々しい朝の光に満ちていた。
身体の不快感がない。
知らない間に身体を清められ、新しいパジャマに着替えさせられ、すっぽりとヴォルフの腕の中に抱きしめられて眠っていたようだ。
「……ん」
「……おはよう、エリアス」
身じろぎすると、ヴォルフがゆっくりと目を開けた。
美しいアイスブルーの瞳が、慈愛に満ちてエリアスを見つめる。
ヴォルフはエリアスを優しく抱き起こすと、昨日刻んだばかりの首筋の「愛咬の痕」に、崇拝するように口づけを落とした。
そして、そのまま顔を寄せ、唇にも甘い朝のキスをする。
「んっ、……おはようございます」
キスをされて、身体の奥がじんわりと温かくなる。
その感覚に、改めて自分たちは「番」になったのだと実感し、エリアスはふにゃ、と幸せそうに笑ってみせた。
「気分はどうだい?今日の食欲は?」
「はい……もう、ヴォルフと同じものを食べられると思います」
エリアスがそう答えると、ヴォルフは頷き、ベッドサイドにあったメモ用紙にサラサラとペンを走らせた。
そしてベッドを降り、部屋の重厚な扉の隙間から、そのメモを外へと落とした。
このヒート期間の七日間は、二人きりの時間を誰にも邪魔させないよう、メイドも他の使用人も一切部屋に入れないように徹底している。
食事の用意も、二人が浴場にいる間などを見計らって部屋の外に運ばせたり、カートで運び込ませたりして、徹底して二人の世界を守っていた。
「食事が届く間に、身体を温めようか」
ヴォルフは戻ってくると、エリアスを軽々と抱き上げた。
「昨夜は結局、湯船に浸からないまま眠ってしまったからね。布で身体は拭いたが、やはりお湯で洗うのが一番さっぱりするだろう」
「ありがとうございます、ヴォルフ」
エリアスもそう思って素直に身を委ねた。
しかし、ヴォルフは浴場に入ると、湯船の方へは行かず、その奥――トイレの方へと進んでいく。
(……え?まさか)
嫌な予感がして身体が強張る。
その予感は的中した。
「エリアス。昨夜は目まぐるしかったから、排泄できていないだろう?」
ヴォルフは当然のような顔で、エリアスを便器の前に立たせた。
「今から身体も綺麗にするから、ここで出してしまっていいよ」
「っ、まって……!い、嫌です!」
エリアスは慌ててヴォルフの腕の中で抵抗した。
「もう……今日からはヒートは余韻ですから! 自分でできます、大丈夫です!」
ピーク時のように身体が動かないわけではない。今は意識もはっきりしているし、足もしっかりしている。
しかし、ヴォルフは穏やかな笑顔のまま、決して引き下がらなかった。
「だめだよ。七日間が終わるまでは、君の『全部』をしてあげたいんだ」
「そんな……っ」
「ほら」
抵抗も虚しく、ヴォルフの手によってパジャマのズボンと下着を一気に下ろされてしまう。
下半身がスースーし、あとは出すだけという無防備な状態にされる。
(うそだ……)
シラフな上に、もう強いヒート状態に陥ることもない。
つまり、ほぼいつもと変わらない正常な精神状態で、排泄の世話をされるということだ。
それは、エリアスにとって心が折れそうになるほどの羞恥だった。
「で、できない……っ、恥ずかしいです……」
潤んだ目で訴えるが、ヴォルフは許してくれない。
背後から密着し、エリアスの腰の辺りを優しく、促すように撫でる。
「いい子だから。……ほら、力を抜いて」
「ぅ……っ」
ヴォルフの大きく温かい手が、膀胱のあたりを刺激する。
その感触と、耳元での甘い囁きに誘われ、身体が勝手に反応してしまう。
我慢していたものが、意思に反して緩んでいく。
ジョロロ……。
静かな空間に水音が響いた。
「あっ、あぁ……うぅッ……」
出そうと思って出したわけではない。
まるで、大人の人間に抱えられたまま、我慢できずに漏らしてしまったかのような感覚。
惨めさと恥ずかしさで、エリアスの目からボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
これまでの排泄の時も毎回泣いてしまっていたが、今回は理性が完全にある分、本気で泣いた。
「よしよし、いい子だ」
ヴォルフはそんなエリアスの様子を見て、嗜虐心が満たされたのか、すごく満足そうな顔をしていた。
泣きじゃくるエリアスを「泣かないで」と慰めながらも、手際よくペーパーで処理し、綺麗にしてくれる。
「うぅ、ひぐっ、うあぁ……っ」
泣いたまま、再び抱き上げられて浴場の方へ連れて行かれる。
シャワーで隅々まで洗われ、温かいお湯が張られた湯船へと浸けられた。
お湯の中でも、エリアスは羞恥が消えず、膝を抱えてぐすぐすと泣き続けていた。
「エリアス……」
ヴォルフも湯船に入り、エリアスを抱き寄せた。
「ごめんよ。もう泣かないで」
そう言いながら、頬についた涙を指で拭い、愛おしそうに目を細める。
「でも……恥ずかしくて泣いている君は、たまらなく可愛いよ」
「~~ッ!!」
変態だ。この旦那様は本当に、どうしようもない変態だ。
エリアスはもう反論する気力もなくして観念し、泣きながらも、心地よいお湯の熱と、ヴォルフの腕に身を任せた。
64
あなたにおすすめの小説
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる
水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」
人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。
ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。
「俺が、貴方の剣となり盾となる」
国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。
シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
今からレンタルアルファシステムを利用します
夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。
◆完結済みです。ありがとうございました。
◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる