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第2章
誘惑と勘違い⚠️
しおりを挟む防水シーツを手際よく片付けたヴォルフは、ソファで小さくなっているエリアスのもとへ戻ると、軽々とその身体を抱き上げた。
「お風呂に行こう。綺麗にしてあげるから」
その声は、悪戯心が満たされた後のような、どこまでも優しい響きだった。
エリアスはヴォルフの首に腕を回し、赤く染まった顔をその胸に埋めたまま頷くことしかできない。
連れて行かれたのは、寝室に備え付けられた広々とした浴室だった。
ヴォルフはエリアスを降ろすと、汚れてしまった衣服や下着をさっと脱がせ、丁寧に身体を洗ってくれた。
温かいシャワーで恥ずかしい痕跡をすべて流される間も、エリアスは羞恥で身体を縮こませていたが、ヴォルフはそんな様子すら愛でるように、慈愛に満ちた手つきで世話を焼いた。
そして、既に適温の湯が張られた浴槽へと一緒に入る。
広い浴槽の中で、エリアスはヴォルフの足の間に収まる形で抱きすくめられた。
背中に触れるヴォルフの胸板の感触と、全身を包み込む湯の温かさに、張り詰めていた緊張が少しだけ解ける。
けれど、先ほどの衝撃的な出来事への羞恥は消えず、エリアスはまだぐすぐすと鼻を鳴らして泣いていた。
「……よしよし。もう大丈夫だよ」
ヴォルフは背後からエリアスを慰めるように、その濡れた肌を撫でた。
大きな手が、胸元から脇腹、そして腰骨のあたりをゆっくりと滑る。
さらには、湯の中で無防備になっている臀部までもが、優しく、けれど執拗に撫で回された。
「ん、ぅ……」
ただ慰めてくれているだけのはずだ。
ヴォルフの手つきは優しく、そこに乱暴な気配はない。
それなのに、敏感な脇腹や腰を撫でられるたびに、エリアスの背筋には甘い痺れが走った。
排泄を見られたばかりの身体が、その手に反応して熱を持っていく。
(どうして……ヴォルフは慰めてくれているだけなのに……)
自分の身体がおかしい。
あんな恥ずかしいことをした後なのに、撫でられるだけで気持ちよくなっているなんて。
ヴォルフにそんな意図はないはずだ。ただ、泣いている自分をあやしてくれているだけ。
それなのに、勝手に興奮している自分が、たまらなく浅ましく、いやらしい人間に思えてきた。
「うっ、うぅ……っ、うわぁぁぁん!」
耐えきれず、エリアスは再び声を上げて泣き出してしまった。
突然の号泣に、さすがのヴォルフも驚いたようだ。
「エリアス?どうしたんだ、何がそんなに悲しい?」
ヴォルフは慌ててエリアスを強く抱きしめ、顔を覗き込もうとする。
エリアスは涙でぐしゃぐしゃになった顔を覆い、しゃくりあげながら訴えた。
「だ、だって……っ、わたし、すごくいやらしい人間になってしまったみたいで……っ」
「え?」
「ヴォルフは、ただ触ってくれているだけなのに……こんなの、変なんです……っ」
罪悪感と自己嫌悪で胸が張り裂けそうだった。
純粋な優しさを、卑猥な感情で受け取ってしまう自分が許せなかった。
その言葉を聞いたヴォルフは、一瞬きょとんとした後、すぐに全てを理解したように目を細めた。
「……エリアス」
ヴォルフの手が、エリアスの顎を後ろからすくい上げる。
「んっ……」
有無を言わせぬ動作で上を向かせると、ヴォルフはそのままエリアスの唇を奪った。
慰めのキスではない。
舌を割り入れ、口内の粘膜をねっとりと舐め上げ、唾液を啜るような、深く濃厚なキスだった。
「んぅ、……ぁ……っ」
頭が真っ白になるほどの快感を与えられ、エリアスは脱力してヴォルフに持たれかかる。
とろとろに蕩かされたところで唇を離すと、ヴォルフは愛おしそうに、エリアスの濡れた唇をぺろりと舐めた。
そして、耳元で熱っぽく囁く。
「すまない。君を混乱させてしまったね」
「ぇ……?」
「可愛いから、つい意地悪をしたくなったんだ」
ヴォルフはエリアスの腰を撫でていた手に力を込め、ぐっと自身の股間へと押し付けた。
そこには、明らかに硬度を増した雄の象徴があった。
「君が勝手にえっちになっているんじゃない。私が、君を誘っているんだよ」
「――っ!」
低く甘い声が、鼓膜を震わせて脳髄に響く。
ヴォルフはエリアスの耳に軽く歯を立て、愉悦に満ちた声で続けた。
「君の反応が可愛すぎて、ただ洗うだけなんて出来るはずがないだろう?」
「そ、そんな……」
意図的だったのだ。
あの優しい手つきも、触れる場所も、すべて計算ずくで、エリアスを感じさせようとしていたのだ。
その事実に安堵すると同時に、ヴォルフの手のひらの上で転がされていたことに、顔から火が出るほどの羞恥を感じる。
「可愛いエリアス」
ヴォルフは蕩けた顔をしているエリアスを見つめ、再びその唇を深く味わうように塞いだ。
「んっ、ぁ……ふ、ぅ……っ」
水音と、二人の唇が重なり合う卑猥な音が、湿った浴室に反響する。
エリアスの瞳からはまだ生理的な涙が零れていたが、それはもう悲しみの涙ではなかった。
与えられるキスのあまりの気持ちよさに、エリアスの思考は甘い熱に溶かされ、ただヴォルフに求められるままに舌を絡ませ続けた。
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