銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

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第4章

安らぎと贖罪

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次にエリアスが目を覚ました時、身体は鉛のように重く、思った以上に指一本動かせなくて、思わず苦笑してしまった。

(……まったく、動かないな)

視線だけを動かして窓の外を見ると、まだ夜の闇が広がっている。
身体のべたつきや不快感は綺麗になくなっており、芯からほかほかと温まっている。
どうやら、ヴォルフは約束通り、気絶したように眠るエリアスを浴室へ運び、湯船に浸からせて身体を清めてくれたようだ。

ふと顔を上げると、すぐ目の前にヴォルフの寝顔があった。
エリアスはヴォルフの逞しい腕に抱きしめられ、その広い胸の中にすっぽりと収まる形で眠っていたのだ。
ハルトマン家の寝室で、いつもこうしていたように。
ヴォルフの体温と、落ち着く匂いに包まれてまどろむ。

それがどれだけ幸福で、得難いことか。改めて、じんわりとした温かさがエリアスの心を満たしていった。
ヴォルフしか、エリアスの心の穴を埋めることはできない。

あんなにも辛く、身を削られるようだった孤独な夜が、今は極上の癒やしの時間へと変わっている。
その安心感に、エリアスの意識はまたとろりとうとうとし始めた。

(明日……)

薄れゆく意識の中で、エリアスは明日のことを考えた。
屋敷に戻ったら、まずはアンナに謝らなければならない。
「書店に行きたい」と嘘をつき、彼女を騙す形で出ていってしまった。
突然の失踪に、どれだけ混乱させ、困惑させてしまっただろうか。

(……申し訳ないことをした)

アンナのことだ。自分の不注意のせいで奥様がいなくなってしまったと、自分を責めて泣いていたかもしれない。
あの時は、ヴォルフが帰ってくる前に静かに出て行かなければと必死で、自分の行動がアンナを傷つける可能性まで考えが及んでいなかった。

ちゃんと、目を見て謝ろう。
そして、シュミットや他の使用人たちも、心配してくれただろう。
結婚式であんなにも心から祝い、良くしてくれた人たちを、結果的に裏切る形になってしまって申し訳ない。

ぼんやりと、抗えない眠気に襲われながらも、エリアスは屋敷での光景を思い浮かべた。
どんな顔をされるか分からないけれど、誠心誠意、頭を下げて謝ろう。
そして、また迎え入れてもらえるなら、今度こそ彼らを大切にしよう。

そう心に決めると、エリアスはヴォルフの腕に包まれたまま、動かない身体の力を抜き、安らかな眠りへと落ちていった。
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