銀色の商人と贋作の妻

真大(mahiro)

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番外編

悩める弟10(番外編・完)

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翌日、正真正銘心も身体もカイと結ばれたことを、ヨハンは大好きな家族であるジョセヌに真っ先に報告した。

「おやまあ!それは本当に良かったねえ!」

ジョセヌは手を叩いて、まるで自分のことのように喜んでくれた。

そして数日後。
どこまで察しているのか、ジョセヌはお祝いとして、ヨハンの部屋に入るギリギリのサイズで、今よりもひと回り大きな新しいベッドをプレゼントしてくれた。

「……あ、ありがとう、おばあちゃん」

ふかふかの新しいベッドを見ながら、ヨハンは内心思った。

(これで、狭くて落ちそうになることもないし……思う存分セックスができるし、その後も朝まで並んで眠れるから、カイといっぱいイチャイチャできる……)

そんな素直な喜びを感じつつも、祖母のような存在であるジョセヌに、そんな用途のための家具を贈られたという事実に気づき、ヨハンは耳まで真っ赤になった。

そして、兄であるエリアスにも速攻で手紙を書いた。

『兄さんのおかげで、好きな人とちゃんと結ばれたよ。また今度、二人で挨拶に行かせてほしい』

そう書いて送ると、すぐに返事が返ってきた。
便箋には、エリアスからの溢れんばかりの祝福の言葉が綴られていた。

『本当におめでとう。自分のことのように嬉しいよ。これからも何かあったらすぐに教えて欲しい。愛しい弟のためなら何でもするから』

エリアスの言葉に、ヨハンは嬉しくてふふ、と笑う。
2度と会えないかもしれないと思っていた兄と再会して、頼れる存在となってくれたのは本当に運がいいと思う。
返信には、『僕も大好きだよ。兄さんのためなら何でもするからね』と自分の気持ちを書いた。

そして、その最後には義理の兄であるヴォルフからの追伸もあった。

『ヨハンくん、おめでとう。結婚式を挙げる時は、我々は家族なのだから資金援助は任せてほしい。どんな式にしたいか、遠慮なく言うように』

「……義兄さん、気が早いなぁ……ふふ」

手紙を読みながら、ヨハンは思わず吹き出してしまった。
まだ付き合い始めたばかりだというのに、もう結婚式の費用の心配をしてくれているなんて。
けれど、「気が早い」と思いながらも、あの完璧な貴族である義兄が、ヨハンのことを本当の家族として扱い、その幸せを心から願い、サポートしようとしてくれていることが、何よりも嬉しかった。

そしてヴォルフの追伸には『気が早いけど嬉しいです。大きなケーキは食べたいと思ってます』と書いて、返信した。

この先、いつかこの花屋をヨハンが継ぐことになるだろう。
その時も、苗屋の息子であるカイとの関係は、恋人としてだけでなく、仕事上のパートナーとしても続いていく。

「むしろ、もっと協力して事業拡大しようか?」

なんて、そんな頼もしい話もすでに出ている。ジョセヌに相談すると、「私はもうそろそろ引退して隠居したいからね、ヨハンたちに任せるよ」と穏やかに笑って了承してくれた。

新しい花の仕入れや、品種改良、お客様のニーズに合わせた寄せ植えなどを協力して作れるように、これからカイとたくさん相談していく予定だ。

そして、まだ付き合ったばかりで結婚という話は早い気がするが、カイもまた、義兄のヴォルフと同じくらい気が早かった。
仕事終わり、いつものようにカイがヨハンの部屋に来て、ジョセヌがくれた新しい広々としたベッドの上でイチャイチャしている時のことだ。

「なぁ、ヨハン。俺たちが結婚して一緒に住む時は……花屋の近くに新しく家を建てようか?それとも、ジョセヌさんの家を改築して、部屋を増やそうか」

カイがヨハンの髪を撫でながら、真剣な顔で聞いてくる。
ヨハンは少し考えて、微笑んだ。

「僕は……おばあちゃんのそばを離れたくないから、後者がいいな。息子さんたちの部屋がそのまま残る形なら、おばあちゃんも改築を任せてくれると思うし」
「そうだな。俺もジョセヌさんには恩があるし、みんなで賑やかに暮らすのも悪くない」

未来の話をして、キスをする。
愛する人の体温を感じながら、明日も明後日も、この幸せな日々にはまだまだ続きがあるのだと実感する。
その感覚が、何よりもヨハンを嬉しくさせた。
ヒートが来たら、愛しい人と正式に番となる。
その日が待ち遠しい。

「……大好きだよ、カイ」
「俺もだ」

二人は広くなったベッドの上で、尽きることのない愛と未来を語り合いながら、穏やかな夜を過ごした。

(番外編・完)


これにて本編、番外編ともに完結です。
長らくご愛読ありがとうございました。
性癖詰め合わせな作品を番外編まで書けて満足しています。
少しでも皆様に楽しんで頂けたなら幸いです。

*********

明日1月21日からは「獅子は鳥籠を砕く」という新しい作品を公開します。

ーーー鉄の錆びた味と、蜜の味。
それは、二人の運命を決定づける、逃れられない契約の味がした。

偽りのアルファの運命の出会いを描くオメガバース小説。
毎日18時に3話ずつ更新予定。
第5章・112話完結。

【あらすじ】
公爵家の長男である美しいアルファ、ユリウス・フォン・ローゼンタール。
代々宰相となり国を支える責務のある家に生まれ、第一王子派と第二王子派に二分した国と学院内で、ユリウスは第一王子派の筆頭として第一王子カイエンの隣で6歳から学院で生活していた。
17歳になった年、学院に異例の途中転入してきた男、騎士団長の息子レオナルド・フォン・ブラントとの出会いにより運命は劇的に変化していく。

幼い頃から飲まされた薬でオメガとしての本能を殺された偽りのアルファであるユリウスは、運命の番であるレオナルドの血を口にしたことでその本能を目覚めさせる。
自分はアルファのはずなのに、どうして。
戸惑うユリウスに、レオナルドはこれからもアルファとして生きたいなら協力してやるとある提案をしてくる……
その提案の日から、レオナルドはユリウスと学院では距離を置き、夜だけの関係になってしまう。
ユリウスはレオナルドへの想いを自覚するが、レオナルドは在学中ユリウスを抱くことなく、卒業式前夜を最後に姿を消す。

レオナルドに捨てられたことで心を閉ざし、オメガとしても死んでしまったユリウスだが、心の拠り所にしていたカイエンが卒業後、突然国王暗殺未遂の容疑で投獄される。
腹違いの弟である第二王子ルシエルが実質の王となったとき望んだものは、美しいアルファであり次期宰相のユリウスだった。
投獄中のカイエンの命を盾にされ、10年間もの長い間ユリウスは籠の鳥となる。
ユリウスをアルファだと認識しているルシエルは最後まで手を出すことはないが、身体を貪り、愛の言葉を心から捧げるように毎夜ユリウスを支配する。
カイエンのために身を捧げているのにも関わらず、臣下たちからは第二王子に寝返った裏切り者の愛玩具として見られる。

ユリウスが心身ともに壊れていった10年。
そんなある日国民が熱狂して迎えた、見たこともない騎士団が凱旋する。
その先頭にいたのは、あの日ユリウスを捨てて姿を消した男……27歳になり、獅子のような風格でより逞しい男となったレオナルドだった。
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