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15-1.如月結衣の悩みについて(Hパート)
アラームが鳴るより先に目が覚める。私はスマホの目覚ましを解除して、起き上がる。シーツがずり落ち、下着だけを身にまとった体に窓から差し込む日の光が当たる。
隣には彼が寝ている。
職場の二階、彼の寝室だ。ダブルベッドに化粧台、丸テーブルと二脚のチェア。どれも彼が扱うアンティーク製品で、正規の値段で買おうとしたらどれも私の月給よりも高い。
私が初めてこの部屋に入った時は、今ある家具はどれも無かった。シックな木の壁と床に似合わないパイプベッドが窓際に、作業用の机と椅子が入口あたりに。ワンルームマンション程の広さがある部屋にある家具は、初めそれだけだった。元は都内で一人暮らししていた時に使っていた物らしく、寝るだけの部屋だからこれで十分なのだと、彼は言っていた。
パイプベッドも勿論一人用で、二人で寝ると大分手狭だった。ただ寝るだけでそうなのだから、夜は尚の事。だけど私はその窮屈さを気に入っていた。
ーーでもお嫁さんを迎え入れるのにこれじゃちょっと。
寝ている彼の頭を撫でる。昨晩の激しさが嘘みたいに無垢な寝顔に笑みが溢れる。私は彼を起こさないようベッドを降り、そっと部屋を出る。誰もいない廊下はひんやりしていて、春から初夏になりつつあるこの季節はそれが心地良い。
洗面所は二階にもあって、私は寝室を出てそこへ向かった。赤い蛇口をひねってお湯が出るのを待つ間、鏡の中の自分を見つめる。ワイヤーのないナイトブラに四角いパンツ。あまり色っぽいとは言えない私の下着も彼は好きみたいで、抱かれるとき、彼はいつも可愛いと褒めてくれる。
彼は優しい。
私が告白して、彼がプロポーズしてくれたあの夜からもう三ヶ月ほど経った。さすが事業をやっている人と言うか、やると決めた彼の動きは早く、私の親への挨拶と、式場の予約をあっという間に済ませてしまった。今年の終わりには式を上げて、来年には籍を入れる予定だ。ただ、彼は親に勘当されたとのことで、私はまだ彼のご両親と会えてないのだけれど。
一応、今でも離れは私の家となっているが、この所ずっとここで彼と暮らしている。いい意味で彼は付き合う前と変わらず、家事を押し付ける事もなければ私をないがしろにする事もない。ちょっと遠出した時には必ずお土産を買ってきてくれるし、それに、毎日欠かさず『綺麗』『好き』と言ってくれる。
色々な事が足早に変わろうとしている事に対して、焦燥、と言えるような感覚はあるが、それも彼の優しさに包まれて後悔になることも無い。
夜だってそうだ。自分の快感よりもまず私を気持ちよくすることを優先してくれる。言葉巧みに私の要求を聞き出す事はあっても、自分の欲求を一方的にぶつけるような事はしない。
幸せ、なんだと思う。
だけど、
たまに、少しだけ物足りなさを感じてしまう。甘い言葉に優しい指先、心地良い快楽と適度な焦らし。そして確かな愛。その全てが揃った完璧なセックスなのに、もっと激しい物を求める自分がいる。私が「いや」と言ったその先を無理矢理こじ開けて、言い聞かせるのではなく服従で、彼の欲望を受け止めたい。いや、受け止められる以上のものを押し付けられたい。そう考えてしまう。
蛇口の水に触れるとすでに温かくなっていた。私はヘアバンドで前髪を上げ、洗顔剤で顔を洗い、化粧水と乳液を塗る。手の平を顔に押しつけるように乳液を馴染ませながら、鏡の中の自分を、その後ろの無機質な木の扉を見つめる。私はその扉が開いて彼が現れるのを想像する。
目をつぶる。
彼は裸で、ペニスだけが朝の生理現象ではない、みなぎる性欲でいきりたっている。私のショーツをずり下げ、有無を言わさずあそこにペニスの先端を押しつける。準備の出来ていない私の割れ目に彼の大きすぎるペニスは先端も入らない。「いや、だめ」と私も口にする。だけど彼の勢いは止まらず、ただ荒い息だけを繰り返すだけ。私は彼に押しつけられて洗面台に両手を突く。急速に濡れはじめた私のあそこに、彼のペニスが無遠慮に突きつけられる。自分の性欲処理だけを目的にした荒々しいセックス。腰を掴み、ただ快楽を求めて私の中を暴れ回る。私の脚はきっとがたがたで、泣きそうなほどの甲高い声が部屋に響く。彼の動きがいっそう激しくなり、何の前触れもなく精液が吐き出される。引き抜かれると同時に太ももに生暖かい精液が垂れ、脚に力が入らずへたり込む。そんな私の顔を掴んだ彼は、まだ固さを保つペニスを目の前に突きつけてこう言う。
舐めろ。
目を開ける。閉じる前と変わらない扉がある。私は手を洗い、不意に生まれたもどかしさを押さえ込むようにぎゅっと太もも同士を擦り合わせる。ショーツの脇から割れ目に触れてみる。少しだけ、濡れていた。
わがままだという自覚はある。だけどもしこの気持ちを打ち明けたなら、優しい彼はきっと応えてくれるだろうという気もする。だけどそうやって叶えてくれる彼は、私が望んでいる彼の姿では無いと思うし、何より、それ以上に、恥ずかしい。何のきっかけも無くそんな事をーー私を乱暴に扱って、などと言い出したら引いてしまうだろう。いや、それだけならまだしも、私が過去にそういう事をされたとか、もしくは誰かにして貰いたいという願望を抱えていると誤解されたらお終いだ。彼だからそういうことをされたい、という事を上手く伝えられる自信が私には無い。
伊崎さんに相談してみようか。
三ヶ月前の仕事以来、まだ一緒に遊びには行けていないけど、近況報告という感じて時折ラインをする事はあった。直接口にすることは憚られても、文面だったらうまくボカシながら聞ける気がする。
そんなことを考えながら寝室へと戻る。さっきとは違う体勢で彼が寝ていて、たぶんもう起きてるだろなと思って不意に微笑んでしまう。ベッド脇に腰掛け、シーツの上から彼に触れる。
彼の目が薄く開く。
「おはよう」
「おはようございます」
「今、何時?」
「六時半です」
彼は手を伸ばして私に触れる。腰に手の平を当て、そのまま下に。ショーツのゴムに指先を這わせながら、太ももに手を落ち着かせる。
「ーー綺麗な体」
「ありがとうございます」
照れずにお礼を言えるようになったのは割と最近の事だ。今日みたいに朝早くに目が覚め、寝ぼけ眼と共に言われるのが一番嬉しく感じる。彼の混じりっけの無い本音を聞けているようで。
「まだ早いですし、寝てても大丈夫ですよ?」
「如月さんは? もう起きるの?」
「着替えて、朝食の準備とお化粧を。ーー結衣、って呼んでくれるんじゃなかったでしょうか?」
彼は数秒後に「あ」と言って、
「忘れてた」
「来年には如月では無くなりますから、それまでに慣れていただかないと」
「そういうきさら……結衣も、敬語とれてないよ」
「私は……まぁ、タイムリミットはありませんので」
言い切ってから少し考え、「ない、から」と言い直す。「じゃ敬語取れるまで僕も如月さんで」と彼が言うと、二人して笑った。
彼はシーツを持ち上げ、
「ほら、こっち」
「ダメですよ。顔、乳液塗ったとこです」
「うつ伏せにならなきゃ大丈夫」
「もう」
と言いつつ、誘いのまま彼の隣へ潜り込む。私のために伸ばされた腕に頭を乗せ、顔に垂れないよう髪を耳に掛けながら彼の懐に額を寄せる。彼の手の平が私の背中に回り、ぎゅっと抱き寄せられた。寝ているときと寝起きの彼はとても温かい。背中に当たる彼の熱を感じていると、またすぐ寝入ってしまいそうになる。
「一日こうしてたい」
彼がポツリと甘い誘惑を口にする。私は目を瞑ったまま「ダメですよ」と口にする
「今日は見学が三組も入ってます。見積もりも溜まってます」
「えー」
彼の手が私の髪を撫でる。私の手はシーツの中で置き場を求め、不意に、彼の下腹部に触れる。彼の手の平とは異質な熱と固さがそこにある。ボクサーパンツ越しにそれを撫でると、頭の上で彼が呼吸とは違う種類の吐息を吐き出した。
「昨日あれだけ出したのに」
「朝目覚めると綺麗なお姉さんが下着姿だったので」
「昨日脱がされたのです。この姿が好きな方に」
私は体を反転させて肘と膝で四つん這いになる。そのまま彼の上にまたがり、シーツを背中で持ち上げながら彼のペニスを撫でる。灰色のボクサーパンツにはすでに濃いシミが点々と滲んでいる。洗面台で濡れた秘部が、微かな熱を持ち始める。
「ーーします?」
「僕が上になろうか?」
「いえ、たまには、私が」
私は彼のボクサーパンツをずり下げる。すでに勃起した彼のペニスが天を向く。亀頭はぬめりけを帯びていて、私がその根本を掴んで何度かしごき上げると更に先走り汁が溢れた。ペニスの先端で雨粒のように丸まったままそれを親指の腹で潰し、亀頭全体に擦り付ける。
「ん、あ」
彼は眉をハの字に顰めて声を吐き出す。私は扱いて先走りを出し指先で塗りつける、という動作を何度も繰り返す。手の平は亀頭と同じくヌルヌルになり、動きも滑らかになる。手コキが洗練されると彼の感度も上がっていくのか、徐々に彼の吐息も荒くなっていく。
私も手の平で伝わる彼の熱に押され、股のもどかしさが増していく。脚の位置を変え、彼の右足の上に跨がる。秘部は彼の膝に近い、名前のわからない骨のあたりに当たっていて、そっとその固いところに割れ目が擦るよう腰を動かす。手の動きに合わせて動いた私の意図に彼が気付いたのか、不意に目があった時、彼は笑みを浮かべた。
「そろそろ入れたい」
「ーーはい」
このまま私に。
そう思ってペニスに跨がろうと膝立ちになる。彼は枕元に手を伸ばし、すでに封があいた箱からコンドームを一つ取り出す。慣れた手付きでペニスを薄い被膜で包む間、私は彼の優しさとともに少しのじれったさを感じていた。
ペニスが半透明のゴムに覆われ、彼の手が私の腰に伸びる。その手に導かれるがまま、私は彼のペニスの先端を割れ目に当て、ゆっくり、腰を下ろす。
「ん、……」
私は息を漏らす。新品のゴムの突っ張りに愛液をなじませるよう、何度か亀頭付近で上下させる。彼の両手は私の腰に添えられていて、動きを邪魔する事なく体重を支えている。私は手の甲で唇を押さえ、快感の吐息を押し留める。
「気持ちいい?」
彼の問いかけに「はい……」と答えた。愛液がゴムの表面に行き渡る。私は両手を彼のお腹に置いて、腰を最後まで落としていく。
「ん、っっっっ……!」
彼のペニスが膣に入る瞬間は、体が震えるほどに気持ちいい。この三ヶ月、何度となく繰り返したこの快感は褪せることなく、むしろ彼への愛おしさが積もる毎に増している気もする。
ペニスはキュッと締め付けられた膣の中をねじ広めながら進み、やがて子宮の壁にその先端を押し付けて止まった。脚もハの字に広げ、深く息をしながらお腹の硬い熱を感じる。ペニスがビクンと跳ね、私は体全体を震わせた。
「今、動きました」
「気持ち良すぎて……」
「私、も、です」
また跳ねる。私の体は電気が走ったようにビクンと上下する。笑ってる彼を見て、今のは彼の意志なんだと知る。
「もう、私で遊ばないでください」
「ごめんごめん」
と笑う彼は両手を広げて「おいで」という。誘いのままに体を伏し、唇を合わせる。舌をお互いの口に差し込み、大人のキスをする。唾液が合わさり、たまにたれ落ちようとするそれを啜る音が響く。彼のペニスは何度もビクつき、私はその度に体を震わせる。彼は唇を離し、私の目を見ながら、
「愛してるよ」
「私も、愛してます」
だからもっとイジメてもいいんですよ? と心の中で呟く。あなたがしたい事はなんでも受け入れたいんです。ゴムも付けなくても良いですし、縛りたければ縛っても構いません。服従させたかったら喜んで跪きます。私が嫌と言っても止めたり謝ったりしないで下さい。私がそれを望んでいるのです。優しいあなたの優しくない一面を。理知的なあなたの本能的な側面を。
私の願いをかき回すように、彼の腰が動き始める。密着したまま、ベッドのバネの反発を使って私の奥を突く。「あ、あ、」とバネがギシギシ言う音に合わせてあえぎ声が漏れ出る。彼が私の上に乗って腰を振るのとは違う角度で、そしてより深く差し込まれたペニスが私の膣壁をえぐる。
「わ、私も動きます」
「いいよ、僕が気持ちよくするから」
「でも、いつも、ご主人様、ばっかり」
腰の動きが速くなる。彼は口にはしないけど、私が言う「ご主人様」という言葉はたぶん気に入っていて、この言葉を発した後はいつも激しくなる。私は身体を起こして自分で腰を振ろうとするが、彼の腕が荒縄のように私の背中を固定していてピクリとも出来ない。彼の頭の横で、枕に顔を伏せながら徐々に勢いが増していくペニスの快感を感じている。
「ご主人様、いく、いっちゃう」
「いいよ、いって」
「だめ、だめ、きちゃうきちゃう」
イくときはいつも痺れから来る。身体の底から背筋へ雷にも似た衝撃が走り、頭にたどり着いた後は体中に広がって筋肉が一気に強ばっていく。視界が狭く、思考が白く、ペニスの快感すら遠のいてただどこかに『いく』という感覚だけが支配する。
その一線を越えた後も彼の動きが弱まる事は無い。むしろ勢いを強め、彼自身の絶頂に向かい私の奥を一心不乱に突き続ける。
「あ、や、だめ、いや、あっ、あっ、あっ……!」
言葉を発する余裕も無くなり、ペニスの感覚だけが私の全てになる。私を抱き寄せる腕の力も強くなり、彼の体中から汗が吹き出る。私を気遣う彼の優しさもなりを潜め、ただ快楽だけを求めて私を突くその乱暴さに、私は二度目の絶頂を覚える。呆気ない二回目に気づくこともなく、彼は更に腰の動きを強めながら、
「いく……!」
「いって、下さい。ご主人様、私の中で……!」
最後の一突きが子宮に押し付けられる。中を突き破る程に思えるその強さに私はシーツをギュッと握りしめる。ペニスの脈動が治まり、残りを出すためか彼は何度かゆっくり往復させて、腕の力を弱める。
私は四つん這いで体を起こし、彼の乱れた前髪を上げる。手のひらに触れた額は汗ばんでいた。
「お疲れ様です」
「おつかれ」
彼は私の後頭部に手を当て、私を引き寄せた。長い、粘りつくキスを交わしたあと、
「お仕事、いたしましょう」
「しなきゃだめ?」
「はい」
子供のように、えー、と呟く彼が愛おしく、だからこそまた、めちゃくちゃにされたいという欲望が頭をもたげた。
後日談編です。
如月さんの下の名前については、三話でちらっと出てきておりました。
また週一で少しずつ書いていこうと思いますので、お付き合い頂けたら幸いです。
隣には彼が寝ている。
職場の二階、彼の寝室だ。ダブルベッドに化粧台、丸テーブルと二脚のチェア。どれも彼が扱うアンティーク製品で、正規の値段で買おうとしたらどれも私の月給よりも高い。
私が初めてこの部屋に入った時は、今ある家具はどれも無かった。シックな木の壁と床に似合わないパイプベッドが窓際に、作業用の机と椅子が入口あたりに。ワンルームマンション程の広さがある部屋にある家具は、初めそれだけだった。元は都内で一人暮らししていた時に使っていた物らしく、寝るだけの部屋だからこれで十分なのだと、彼は言っていた。
パイプベッドも勿論一人用で、二人で寝ると大分手狭だった。ただ寝るだけでそうなのだから、夜は尚の事。だけど私はその窮屈さを気に入っていた。
ーーでもお嫁さんを迎え入れるのにこれじゃちょっと。
寝ている彼の頭を撫でる。昨晩の激しさが嘘みたいに無垢な寝顔に笑みが溢れる。私は彼を起こさないようベッドを降り、そっと部屋を出る。誰もいない廊下はひんやりしていて、春から初夏になりつつあるこの季節はそれが心地良い。
洗面所は二階にもあって、私は寝室を出てそこへ向かった。赤い蛇口をひねってお湯が出るのを待つ間、鏡の中の自分を見つめる。ワイヤーのないナイトブラに四角いパンツ。あまり色っぽいとは言えない私の下着も彼は好きみたいで、抱かれるとき、彼はいつも可愛いと褒めてくれる。
彼は優しい。
私が告白して、彼がプロポーズしてくれたあの夜からもう三ヶ月ほど経った。さすが事業をやっている人と言うか、やると決めた彼の動きは早く、私の親への挨拶と、式場の予約をあっという間に済ませてしまった。今年の終わりには式を上げて、来年には籍を入れる予定だ。ただ、彼は親に勘当されたとのことで、私はまだ彼のご両親と会えてないのだけれど。
一応、今でも離れは私の家となっているが、この所ずっとここで彼と暮らしている。いい意味で彼は付き合う前と変わらず、家事を押し付ける事もなければ私をないがしろにする事もない。ちょっと遠出した時には必ずお土産を買ってきてくれるし、それに、毎日欠かさず『綺麗』『好き』と言ってくれる。
色々な事が足早に変わろうとしている事に対して、焦燥、と言えるような感覚はあるが、それも彼の優しさに包まれて後悔になることも無い。
夜だってそうだ。自分の快感よりもまず私を気持ちよくすることを優先してくれる。言葉巧みに私の要求を聞き出す事はあっても、自分の欲求を一方的にぶつけるような事はしない。
幸せ、なんだと思う。
だけど、
たまに、少しだけ物足りなさを感じてしまう。甘い言葉に優しい指先、心地良い快楽と適度な焦らし。そして確かな愛。その全てが揃った完璧なセックスなのに、もっと激しい物を求める自分がいる。私が「いや」と言ったその先を無理矢理こじ開けて、言い聞かせるのではなく服従で、彼の欲望を受け止めたい。いや、受け止められる以上のものを押し付けられたい。そう考えてしまう。
蛇口の水に触れるとすでに温かくなっていた。私はヘアバンドで前髪を上げ、洗顔剤で顔を洗い、化粧水と乳液を塗る。手の平を顔に押しつけるように乳液を馴染ませながら、鏡の中の自分を、その後ろの無機質な木の扉を見つめる。私はその扉が開いて彼が現れるのを想像する。
目をつぶる。
彼は裸で、ペニスだけが朝の生理現象ではない、みなぎる性欲でいきりたっている。私のショーツをずり下げ、有無を言わさずあそこにペニスの先端を押しつける。準備の出来ていない私の割れ目に彼の大きすぎるペニスは先端も入らない。「いや、だめ」と私も口にする。だけど彼の勢いは止まらず、ただ荒い息だけを繰り返すだけ。私は彼に押しつけられて洗面台に両手を突く。急速に濡れはじめた私のあそこに、彼のペニスが無遠慮に突きつけられる。自分の性欲処理だけを目的にした荒々しいセックス。腰を掴み、ただ快楽を求めて私の中を暴れ回る。私の脚はきっとがたがたで、泣きそうなほどの甲高い声が部屋に響く。彼の動きがいっそう激しくなり、何の前触れもなく精液が吐き出される。引き抜かれると同時に太ももに生暖かい精液が垂れ、脚に力が入らずへたり込む。そんな私の顔を掴んだ彼は、まだ固さを保つペニスを目の前に突きつけてこう言う。
舐めろ。
目を開ける。閉じる前と変わらない扉がある。私は手を洗い、不意に生まれたもどかしさを押さえ込むようにぎゅっと太もも同士を擦り合わせる。ショーツの脇から割れ目に触れてみる。少しだけ、濡れていた。
わがままだという自覚はある。だけどもしこの気持ちを打ち明けたなら、優しい彼はきっと応えてくれるだろうという気もする。だけどそうやって叶えてくれる彼は、私が望んでいる彼の姿では無いと思うし、何より、それ以上に、恥ずかしい。何のきっかけも無くそんな事をーー私を乱暴に扱って、などと言い出したら引いてしまうだろう。いや、それだけならまだしも、私が過去にそういう事をされたとか、もしくは誰かにして貰いたいという願望を抱えていると誤解されたらお終いだ。彼だからそういうことをされたい、という事を上手く伝えられる自信が私には無い。
伊崎さんに相談してみようか。
三ヶ月前の仕事以来、まだ一緒に遊びには行けていないけど、近況報告という感じて時折ラインをする事はあった。直接口にすることは憚られても、文面だったらうまくボカシながら聞ける気がする。
そんなことを考えながら寝室へと戻る。さっきとは違う体勢で彼が寝ていて、たぶんもう起きてるだろなと思って不意に微笑んでしまう。ベッド脇に腰掛け、シーツの上から彼に触れる。
彼の目が薄く開く。
「おはよう」
「おはようございます」
「今、何時?」
「六時半です」
彼は手を伸ばして私に触れる。腰に手の平を当て、そのまま下に。ショーツのゴムに指先を這わせながら、太ももに手を落ち着かせる。
「ーー綺麗な体」
「ありがとうございます」
照れずにお礼を言えるようになったのは割と最近の事だ。今日みたいに朝早くに目が覚め、寝ぼけ眼と共に言われるのが一番嬉しく感じる。彼の混じりっけの無い本音を聞けているようで。
「まだ早いですし、寝てても大丈夫ですよ?」
「如月さんは? もう起きるの?」
「着替えて、朝食の準備とお化粧を。ーー結衣、って呼んでくれるんじゃなかったでしょうか?」
彼は数秒後に「あ」と言って、
「忘れてた」
「来年には如月では無くなりますから、それまでに慣れていただかないと」
「そういうきさら……結衣も、敬語とれてないよ」
「私は……まぁ、タイムリミットはありませんので」
言い切ってから少し考え、「ない、から」と言い直す。「じゃ敬語取れるまで僕も如月さんで」と彼が言うと、二人して笑った。
彼はシーツを持ち上げ、
「ほら、こっち」
「ダメですよ。顔、乳液塗ったとこです」
「うつ伏せにならなきゃ大丈夫」
「もう」
と言いつつ、誘いのまま彼の隣へ潜り込む。私のために伸ばされた腕に頭を乗せ、顔に垂れないよう髪を耳に掛けながら彼の懐に額を寄せる。彼の手の平が私の背中に回り、ぎゅっと抱き寄せられた。寝ているときと寝起きの彼はとても温かい。背中に当たる彼の熱を感じていると、またすぐ寝入ってしまいそうになる。
「一日こうしてたい」
彼がポツリと甘い誘惑を口にする。私は目を瞑ったまま「ダメですよ」と口にする
「今日は見学が三組も入ってます。見積もりも溜まってます」
「えー」
彼の手が私の髪を撫でる。私の手はシーツの中で置き場を求め、不意に、彼の下腹部に触れる。彼の手の平とは異質な熱と固さがそこにある。ボクサーパンツ越しにそれを撫でると、頭の上で彼が呼吸とは違う種類の吐息を吐き出した。
「昨日あれだけ出したのに」
「朝目覚めると綺麗なお姉さんが下着姿だったので」
「昨日脱がされたのです。この姿が好きな方に」
私は体を反転させて肘と膝で四つん這いになる。そのまま彼の上にまたがり、シーツを背中で持ち上げながら彼のペニスを撫でる。灰色のボクサーパンツにはすでに濃いシミが点々と滲んでいる。洗面台で濡れた秘部が、微かな熱を持ち始める。
「ーーします?」
「僕が上になろうか?」
「いえ、たまには、私が」
私は彼のボクサーパンツをずり下げる。すでに勃起した彼のペニスが天を向く。亀頭はぬめりけを帯びていて、私がその根本を掴んで何度かしごき上げると更に先走り汁が溢れた。ペニスの先端で雨粒のように丸まったままそれを親指の腹で潰し、亀頭全体に擦り付ける。
「ん、あ」
彼は眉をハの字に顰めて声を吐き出す。私は扱いて先走りを出し指先で塗りつける、という動作を何度も繰り返す。手の平は亀頭と同じくヌルヌルになり、動きも滑らかになる。手コキが洗練されると彼の感度も上がっていくのか、徐々に彼の吐息も荒くなっていく。
私も手の平で伝わる彼の熱に押され、股のもどかしさが増していく。脚の位置を変え、彼の右足の上に跨がる。秘部は彼の膝に近い、名前のわからない骨のあたりに当たっていて、そっとその固いところに割れ目が擦るよう腰を動かす。手の動きに合わせて動いた私の意図に彼が気付いたのか、不意に目があった時、彼は笑みを浮かべた。
「そろそろ入れたい」
「ーーはい」
このまま私に。
そう思ってペニスに跨がろうと膝立ちになる。彼は枕元に手を伸ばし、すでに封があいた箱からコンドームを一つ取り出す。慣れた手付きでペニスを薄い被膜で包む間、私は彼の優しさとともに少しのじれったさを感じていた。
ペニスが半透明のゴムに覆われ、彼の手が私の腰に伸びる。その手に導かれるがまま、私は彼のペニスの先端を割れ目に当て、ゆっくり、腰を下ろす。
「ん、……」
私は息を漏らす。新品のゴムの突っ張りに愛液をなじませるよう、何度か亀頭付近で上下させる。彼の両手は私の腰に添えられていて、動きを邪魔する事なく体重を支えている。私は手の甲で唇を押さえ、快感の吐息を押し留める。
「気持ちいい?」
彼の問いかけに「はい……」と答えた。愛液がゴムの表面に行き渡る。私は両手を彼のお腹に置いて、腰を最後まで落としていく。
「ん、っっっっ……!」
彼のペニスが膣に入る瞬間は、体が震えるほどに気持ちいい。この三ヶ月、何度となく繰り返したこの快感は褪せることなく、むしろ彼への愛おしさが積もる毎に増している気もする。
ペニスはキュッと締め付けられた膣の中をねじ広めながら進み、やがて子宮の壁にその先端を押し付けて止まった。脚もハの字に広げ、深く息をしながらお腹の硬い熱を感じる。ペニスがビクンと跳ね、私は体全体を震わせた。
「今、動きました」
「気持ち良すぎて……」
「私、も、です」
また跳ねる。私の体は電気が走ったようにビクンと上下する。笑ってる彼を見て、今のは彼の意志なんだと知る。
「もう、私で遊ばないでください」
「ごめんごめん」
と笑う彼は両手を広げて「おいで」という。誘いのままに体を伏し、唇を合わせる。舌をお互いの口に差し込み、大人のキスをする。唾液が合わさり、たまにたれ落ちようとするそれを啜る音が響く。彼のペニスは何度もビクつき、私はその度に体を震わせる。彼は唇を離し、私の目を見ながら、
「愛してるよ」
「私も、愛してます」
だからもっとイジメてもいいんですよ? と心の中で呟く。あなたがしたい事はなんでも受け入れたいんです。ゴムも付けなくても良いですし、縛りたければ縛っても構いません。服従させたかったら喜んで跪きます。私が嫌と言っても止めたり謝ったりしないで下さい。私がそれを望んでいるのです。優しいあなたの優しくない一面を。理知的なあなたの本能的な側面を。
私の願いをかき回すように、彼の腰が動き始める。密着したまま、ベッドのバネの反発を使って私の奥を突く。「あ、あ、」とバネがギシギシ言う音に合わせてあえぎ声が漏れ出る。彼が私の上に乗って腰を振るのとは違う角度で、そしてより深く差し込まれたペニスが私の膣壁をえぐる。
「わ、私も動きます」
「いいよ、僕が気持ちよくするから」
「でも、いつも、ご主人様、ばっかり」
腰の動きが速くなる。彼は口にはしないけど、私が言う「ご主人様」という言葉はたぶん気に入っていて、この言葉を発した後はいつも激しくなる。私は身体を起こして自分で腰を振ろうとするが、彼の腕が荒縄のように私の背中を固定していてピクリとも出来ない。彼の頭の横で、枕に顔を伏せながら徐々に勢いが増していくペニスの快感を感じている。
「ご主人様、いく、いっちゃう」
「いいよ、いって」
「だめ、だめ、きちゃうきちゃう」
イくときはいつも痺れから来る。身体の底から背筋へ雷にも似た衝撃が走り、頭にたどり着いた後は体中に広がって筋肉が一気に強ばっていく。視界が狭く、思考が白く、ペニスの快感すら遠のいてただどこかに『いく』という感覚だけが支配する。
その一線を越えた後も彼の動きが弱まる事は無い。むしろ勢いを強め、彼自身の絶頂に向かい私の奥を一心不乱に突き続ける。
「あ、や、だめ、いや、あっ、あっ、あっ……!」
言葉を発する余裕も無くなり、ペニスの感覚だけが私の全てになる。私を抱き寄せる腕の力も強くなり、彼の体中から汗が吹き出る。私を気遣う彼の優しさもなりを潜め、ただ快楽だけを求めて私を突くその乱暴さに、私は二度目の絶頂を覚える。呆気ない二回目に気づくこともなく、彼は更に腰の動きを強めながら、
「いく……!」
「いって、下さい。ご主人様、私の中で……!」
最後の一突きが子宮に押し付けられる。中を突き破る程に思えるその強さに私はシーツをギュッと握りしめる。ペニスの脈動が治まり、残りを出すためか彼は何度かゆっくり往復させて、腕の力を弱める。
私は四つん這いで体を起こし、彼の乱れた前髪を上げる。手のひらに触れた額は汗ばんでいた。
「お疲れ様です」
「おつかれ」
彼は私の後頭部に手を当て、私を引き寄せた。長い、粘りつくキスを交わしたあと、
「お仕事、いたしましょう」
「しなきゃだめ?」
「はい」
子供のように、えー、と呟く彼が愛おしく、だからこそまた、めちゃくちゃにされたいという欲望が頭をもたげた。
後日談編です。
如月さんの下の名前については、三話でちらっと出てきておりました。
また週一で少しずつ書いていこうと思いますので、お付き合い頂けたら幸いです。
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https://estar.jp/novels/26513389
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