山田雑草園 書き出し集

山田ジギタリス

文字の大きさ
2 / 6

女装義弟は義姉に近寄る男を誘惑する

しおりを挟む
「お待ちください、お待ちください」
「ええぃ、邪魔をするな!」

 屋敷の方が騒がしい。庭でお茶をしていたこの家の令嬢エリザベスは眉を顰め振り返る。
そこには婚約者のロジャーがこちらに向かってくるのが見えた。ロジャーのそばには心配そうな少女が一人。
エリザベスは近くにいた年かさの侍女に二人分のお茶を用意するように指示した。

 エリザベスが立ち上がり優雅に婚約者に挨拶をする。
「ロジャー様、ご機嫌麗しゅう。今日は何か御用で? それにメアリーが何か?」
 その様子を見てロジャーは鼻を鳴らす。
「ふん、お前はいつもそうだ。」
「聞けば、お前は義妹だからと言ってメアリーをいじめていたそうじゃないか」

「そんなことはございません。何かの間違いでは?」
「それなりの年になった妹を夜会やお茶会どころかデピュタントにも出さないなど考えられないだろう。これがいじめじゃなくて何なのだ」
「それは……」
「ほら、答えられないだろう。お前はそういうやつだ……」
 そういいながらロジャーはエリザベスの胸元を見て、そこから目を離せなくなった。
 そこには、白く豊かな丘と深い谷間があった。
「……」
「ロジャー様?」
「……」
「ロジャー様?」
 エリザベスの胸元から目を離せないロジャーを不審に思ったエリザベスが声を掛けるが黙って見つめるだけのロジャー。腕にしがみついて視線を自分の方に向けようとするメアリー。
 そこにお茶のワゴンを押してきた侍女がその様子を見てロジャーの後ろに回ると、ぽかっと頭をはたいた。
「なっ、何をする、おまえ……義母上!」
「いくら婚約者とはいえ令嬢の胸元をそんな風に見るものじゃないですよ」
「すみません、義母上……ではなくてその恰好は何ですか、それになぜここに?」
「どう、似合う? 侍女見習いとしてあなたのお母様に仕えることになったときはうれしかったわぁ。お茶に入れ方はいかがでしょうか、エリザベス様?」
 
 ロジャーをたしなめながら義母のマリーは手際よくお茶を給仕していく。
 エリザベスは騒ぎにも平然としてマリーの淹れたお茶を味わっていた。

 二人分のお茶を淹れたマリーはまだ突っ立っているロジャーのそばによると耳をつかんで引っ張る。
「いててっ、義母上、痛いから、それに私はエリザベスとメアリーと大事な話が……」
「エリザベス様、このようなことになり大変申し訳ありません。帰ってから今度のことどうするか当主と相談してご連絡差し上げます。今日は、この馬鹿を連れて帰ってじっくり絞りますのでどうかお許しを」
「あぁ、マリー様、お気になさらず。今度のことはメアリーも悪いのだからお互いさまにできないか相談させてください」
 マリーはエリザベスに丁寧にあいさつをしてロジャーを引っ張っていく。離れても声が聞こえる。
 「まずは、家に帰ってお兄様と話しましょうね。これで何人目かしら」
 
 声が聞こえなくなると、エリザベスはメアリーに座るように促した。
「マイケル、何度目だ?」
「いくら幼馴染でもロジャー様はないでしょう、義姉上。女癖も悪いし、あのいやらしい目。義姉上の胸をあんな目で見るような奴には義姉上を任せられません」
 そしてため息をついて続ける。
「それになんでそんな恰好を。男の目に毒ですよ。あとマリー様がこんなところに、お戯れも過ぎますよ」

「マイケル、こっちに来ないか?」
「義姉上、聞いているのですか?」
「マイケルが怒るぅ」
「だから……仕方ないですね」
 エリザベスの顔を見てマイケルが素直にそばによると、エリザベスは、メアリーもといマイケルを後ろから抱きかかえ膝鵜の上に乗せる。女性にしては少しくなった背中に自分の胸を押し付けた。
「マイケル、ありがとうね。心配かけてごめんね」
「わっ、分かればいいのです。あと、胸が背中にあたってます、もうすこし、離れて」
「えぇぇ、だってマイケルとくっつきたいんですもの」
「だっ、だめです、僕だって男なのですから」
「えぇぇ、だって今日は女の子でしょ?だからくっついてもいいの!」

 夜、眠れないマイケルは侍従を呼んでお茶でも飲もうかと思ったが侍従がなかなか来てくれない。仕方ないので自分で淹れようかと部屋を出たところで隣の部屋を見ると義姉エリザベスの部屋の戸が開いていた。
「誰だろう、だらしないな」
 そういいながら戸を閉めようとしたとき中が見えてしまった。寝台の上には義姉が寝ているのだが掛け布団を飛び出している。見回しても侍女の姿が見えないし、まぁ、兄弟だからいいかと中に入り布団を掛けようとしたら、義姉の夜着がはだけているのが見えてしまった。さすがにそれは直せないな、布団だけかけようとしたところ腕を捕まえられた。
「なっ、義姉さん、起きていたの?」
「もう、我慢できない!」
「なっ、何を……」
「これだけ何度も邪魔するんだから責任くらいとりなさいよ、今日という今日は逃がさないからね」
 エリザベスを振り払うこともできず、マイケルはそのまま流されてしまった。

「おはようございます、お嬢様、坊ちゃま」
 エリザベスの侍女ハンナが平然と部屋に入ってくる。
「今日はお朝食はこちらで召し上がりますよね」
「あぁ、頼む。マイケルもこちらで食べるだろう」
「……」
「それからお二人にご主人様と奥様からご伝言です。食事が終わったら執務室に来るようにと。あと、これは奥様からですが、若いから夢中になるのは仕方ないけど、声は抑えてね、だそうです。これは私からのお願いですが、今度からはちゃんと扉を閉めてくださいませ。途中で扉を閉めたのは私の情けでございますわ」

 さすがにこれには二人は赤面するしかなかった。

 その後、無事エリザベスの両親の許しももらい、二人は、めでたく結婚することになった。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

幼馴染みのアイツとようやく○○○をした、僕と私の夏の話

水鏡こうしき@4/13書籍配信開始
恋愛
クールなツンツン女子のあかねと真面目な眼鏡男子の亮汰は幼馴染み。 両思いにも関わらず、お互い片想いだと思い込んでいた二人が初めて互いの気持ちを知った、ある夏の日。 戸惑いながらも初めてその身を重ねた二人は夢中で何度も愛し合う。何度も、何度も、何度も── ※ムーンライトにも掲載しています

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

処理中です...