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抱いて 濡れて 溺れて 19

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「おはよう・・・」

ボクは寝ぼけた頭で階段を下りて、リビングに入るとそこにいたお母さんに挨拶をした。

「おはよう。顔洗ってらっしゃい」
「うん・・・」

毎日交わされる、定番のやり取り。
ボクはなかなか起きない頭で洗面所へ行くと、冷たい水で顔を洗って、頭をすっきりさせた。

昨日は夜勤だったから、10時くらいに帰ってきて、そのまま寝て。
今はもう夕方の4時になっていた。
今日はこのまま休みで、明日はまた日勤になる。
このシフトにもだいぶ慣れたけど、たまに疲れが取れない時がある。

それは悠貴さんにゆっくり会えない時。

お正月はゆっくり会えたけど、あれから1ヶ月。
病院ですれ違う程度にしか、顔を見れていない。
メッセージを送ったりはしてるけど、電話もしてないから、声も聞いていない。

やっぱり・・・一緒に暮したい・・・。
そうすれば、せめて寝顔だけでも見れるし、挨拶だけでも声が聞ける。

お正月に悠貴さんが一緒に暮らそうって言ってくれて、本当に嬉しくて。
本当はすぐにでも引っ越したかったけど、忙しくてなかなか日を決められないでいた。

もうすぐバレンタインだし・・・チョコを渡すのを口実に、引っ越しのこと、ちゃんと聞いてみよう。

そんなことを考えながら、ボクは一旦自分の部屋へ戻ってパジャマから、部屋着の黒いスウェットに着替える。

再びリビングへ行き、キッチンへ行く。
お腹が空いたから、何か食べようと思ったんだけど。

「お母さん・・・何でこんなご馳走作ってるの?」
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