『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。

ぬこぬっくぬこ

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プロローグ

レベル10

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「また泣いているのか?」

 父が私の頭をポンポンと軽く叩いてくる。

「すぐに帰って来るさ、なんかそんな気がするんだ」

 こないだ、クイーズが家を出て行った。
 そうするしかない、と分かっていても涙が止まらない。
 こんな事になるのなら、ラピスを店番に立たせなかったのに。

 ああでもダメかな。
 私だけだと……どうしてこんな顔つきに生まれついたのだろう。
 こんなに恐ろしい顔じゃなければ……

 クイーズは、この顔にも意味が有るとか言っていたけど……
 この顔を好きになってくれる運命の相手が居るとか言っていたけど……
 そんなのどこに居るのよ……

 クイーズだって、いつも怖いって言ってたじゃない。
 こないだなんて、夜中に鉢合わせて腰抜かしてたじゃないの!
 それでもクイーズは、私から離れて行こうとはしないけれど……

 私が店番に立つとお客が緊張するのが分かる。
 私が町を歩くと小さな子供が私を見て泣く。
 幼馴染達だって私と目を合わそうともしない。

 女の癖にかわいくない、ならまだマシだ。
 怖いって言われたらどうしたらいいの?

 笑顔の練習をしてみた。さらに怖くなるからやめてくれと懇願された。
 目元がきついって言うので、毎晩目元を押さえて眠っている。
 なのにお客さんからは、何人殺した? なんて聞かれる事も有る。

 怒りは形相を悪くすると言われているから、なるべく怒らないようにしている。
 よく、怒っていると誤解されるけれど、別に怒ってないの。
 そりゃ、クイーズがラピスに抱きつかれた時はちょっとは怒ったけど。

「どこに行こうとしているの?」

 あの日の晩、私はもっと、クイーズを引き止めるべきだった。

「うわっ! そんな暗いとこに立っているなよ、心臓が止まるかと思っただろ。あれ? なにか怒っている?」
「怒ってない」

 クイーズはいつもそうだった。
 私の顔を怖いコワイ、なんて言いながらも視線を逸らさない。
 ちゃんと私の顔を見て話をしてくれる。ちゃんと私の表情を見ようとしてくれている。

「いや、善は急げって言うしな。ちょっと出かけて来ようと思う」

 その時はどこに、と聞けない自分が居た。
 唯俯いて、少しでも怖い、と言われる自分の顔を見せないように。
 きっとクイーズは、貴族がちょっかいを掛けて来ないうちに家を出て行こうとしているのだ。

「待てクイーズ……これを持っていけ」

 そこに父が現れ、クイーズに一枚の書類を手渡す。

「これは、奴隷契約書……おやっさん、準備がいいな」
「ああ、その首のチョーカーを取ってやる事は出来ないが、これを持っていれば逃亡奴隷で捕まる事もないだろう」
「ありがてえ、じゃあちょっくらコイツを取って来るよ」

 首のチョーカーに手を掛けながらそう言う。
 それを聞いて思わず身を乗り出してしまう。

「えっ、なに? いつにもまして迫力があるんだけど」
「帰って、来るの?」
「えっ、帰ってきちゃダメなの?」

 そうか、奴隷じゃなければ……元々クイーズは貴族だって言ってたし、同じ貴族なら勝手に人の物を持っていく事は出来ない。
 奴隷の黒いチョーカーを取るには、それこそ一生分の働きのお金が必要になるかもしれない。
 だけど、だけどクイーズはスキル持ちだ。
 そのスキルを活用すれば、それぐらいのお金は意外にすぐ貯まるかも知れない。
 だったら、何年か先かは分からないけど、きっと、きっとクイーズは奴隷から解放されて戻って来る!

「待ってる! ずっと、ずっと待ってるから!」
「え、ああ、うん」

 ほんとは待ってるじゃなくて、行かないでって言いたかった。
 でもそれは、こんな子供の私じゃどうしようもなくて。
 付いて行くにしても、こんな父を一人残しては行けない。それに、クイーズだって絶対迷惑する。

 だけど私は後悔している。
 あの時行かないでと言えなかった事に。
 あの時私も連れてってと言えなかった事に。
 私が普通のかわいい女の子だったら言えたのだろうか?

 そして私は今も、クイーズが居たこの部屋で涙を流している。

「えっ、なんで泣いて居るんだ? おい、また誰かに顔が怖いって言われたのか!?」

 私は涙でぼやけた視界で、そう言ってきた人物をぼんやり見つめる。

「ばかだなあエクサリー。お前の顔がどんなに怖かろうと、オレはお前が優しい奴だって知っている」

 その人物は私の涙を指でぬぐっていく。

「確かにお前の顔は怖い、しかしだな、お前が笑ったときは……」
「……もん、」
「ん?」
「顔が怖くて泣いてないもん! 怖いコワイいうな!」

 思わず涙に濡れた枕をぶん投げて逃げ出してしまった。
 だってあれ以上あそこにたら……縋り付いて離れられなくなりそうだったから。
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