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第十章

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 そうして始まった腕自慢大会。
 ラピス、カシュア、ロゥリ以外に、ハーモアやサウ、その上スラミィを連れたアスカさんまで参加する事になった。
 そりゃもう上位独占な訳ですよ。

 一等前後賞に、各種部門を総なめ、3億近い資金をゲット出来た! ウハウハだぜ!
 もう二度と来ないでくれって言われた。
 招待したのそっちなのに。

「うっは~、臨時収入すごいわ~。私、今後これで稼ごうかしら」

 アスカさんが金銀財宝を見て目がくらんでいる。

「おいちょっと俺達にも分けてくれよ」
「え~」
「え~言うなよ、同じパーティだろ?」

 スラミィちゃん売ろうとしたくせに。って呟いている。
 じょ、冗談に決まってるじゃないか。とパーティメンバーの男性が拝み倒している。

「まあ、スラミィちゃんが、こんなにも強くなったのは皆のおかげだしね。ちゃんとパーティ資金にするわよ」
「「おおっ! さすが神様、アスカ様!」」

 メンバー全員でアスカさんを拝んでいる。
 よきにはからえ、ハハーッて、なにやら小芝居まで始めだした。

「スラミィ、強かったですねえ」
「ロゥリはあれだな、スラミィとは相性が悪過ぎた」
「ボクなんて一度も剣を振らせてもらえなかったよ!」

 さすがにラピスはスラミィに勝ったが。
 なお、こいつらの戦いは実戦形式の模擬戦。
 その方が実力が良く分かる。
 どんなに危険だろうとも、カードに戻ればダメージは消えるしな。

「あの~、それで、つかぬ事をお聞きしますが……なんでも、鑑定・極のスキルをお持ちだとか」

 なにやら、手揉みしながらフロワースさんが近寄って来る。

「もしかして、もしかしてなんですけど、私のスキルもバレていたり……」
「未来操作ですか?」
「ぐっ、」

 このフロワースさんのスキルは予知でも予見でもない、未来操作と言って、どのように行動すれば希望する未来に近づくかが分かるそうだ。
 一見凄いスキルに思えるが、予知でも予見でも無いため、ゴールの方角と道筋は見えても、その過程において突発的事象が起これば道筋は簡単に乱れる。
 また、分かる道筋も当たり前の事が多い。
 いい大学に入りたければ寝る間を惜しんで勉強しろ。みたいな感じ。

 目指したい未来に向かって、何をすればいいのか分からない人も居れば、間違った行動を起こす人も居る。
 それが無いだけでも、実用的なものではあるかもしれないが。

 くっそあのボケェ、そんなスキルあると分かった時点で連れてくるなや。なんて心の声が漏れていたりする。

「私だって、私だって……予知でも予見でもそんなスキルが良かったわよ!」

 なにやら涙目になっておられる。

「そんなスキルがあれば、本物の聖女にだってなれたのに! 未来操作なんて! 名前だって悪いわっ!」

 私は別に誰も未来も操作していない!
 なのに周りの人間は皆、私の傍に居ると操作されているのだと勘違いする。
 両親だって、兄弟だって!
 分かる!? つい昨日まで可愛がってくれた兄がっ! 急に豹変して殴りつけてきたのよ! 全部お前の所為だったのかって!

 とうとうボタボタと両目から涙を溢れさせてオレに訴えてくる。
 いや、オレに言われても……
 なにやら周りの視線がとても痛い。
 どうやらオレが泣かしていると勘違いされている模様。

「フロワース……!?」

 そこへ、例の優男が登場。オレとフロワースの間に入って剣をつきつけてくる。

「女性を泣かすとは! 君は男の風上にも置けないな!」

 え~……もしかしてオレ、フロワースに嵌められた?
 だがそのフロワース、その優男をつき飛ばす。
 あぶなっ! 剣がこっち向いているだろ!? やっぱ嵌められていた?

「貴方だって! 私の事、恐れているのでしょ!? 私なんかと一緒に居たくないって思っているのでしょ!」

 ええ……って、顔をしてオレの方を向いてくる優男、モブディ。
 えっ、何があったかだって? オレが聞きたいよ。
 どうやら地雷を踏み抜いてしまった模様。

「フロワース、僕は君を嫌ってはいないよ」
「じゃあどうして! 最近目を合わせてもくれないのっ!」

 おめえ、避けてたのか?
 いやだって、君があんな事言うから。なんて言ってくる。
 オレの所為か?

「まあまあ、別に操作したっていいだろ? 誰だって誰かの未来を操作しているんだ」
「えっ?」

 オレが一つ行動を起こすとしよう。
 その行動を見て、それをマネようとする人も居るかも知れない。
 そんな事があった場合、オレがその人の未来を操作した事に繋がる。

「誰もが誰かの影響を受けて未来は存在する。いいじゃないか他人の未来を操作しても。だけど操作する以上は、その人が幸福になれる方向へ向かわなければ成らない」

 君のお兄さんが、君の所為だって責め立てたのは、現状が不幸だったからだろう。
 もし、現状が幸福だったならば、きっと君のお兄さんは、君に感謝していたのじゃないだろうか。

「そういえば二人はコンビなんだったよな? 一人は英雄を導く者、もう一人は未来を切り開くもの。いいコンビじゃないか」

 英雄の中には人々を不幸にする存在だっている。
 英雄が常に正しい事を行うとは限らない。

「二人で、人々を幸福にする英雄を導いていけばいい」

 フロワースと優男は互いに視線を交わす。

「貴方は私の傍に居て不快じゃないの? 私と共にこの先も進んで大丈夫なの?」
「フロワース、僕は一度たりとも、君と居て不快だなんて思った事は無い。それが例え君に操作された結果としても。なぜなら僕は、君に正しい道を教わっているからだ」
「モブディ……」

 モブディがフロワースの手を取って答える。

「僕のパートナーはフロワース、君だけだ」

 そう言って、ジッとフロワースの顔を見つめるのだった。
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