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第十七章
レベル257 セレブレ・ヘルクヘンセンの夜会
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「うむ、これは千年咲き続けると言う伝説の花、咲狂花という奴じゃっ!」
真っ白な大輪の花で飾られたローゼマリアが自慢そうに胸を張っている。
「あら、それはとても珍しい花ですの?」
「素晴らしいですわ! わたくしにも一輪頂けませんでしょうか」
「ハッハッハ、それはオススメはせんぞっ。コイツは血の通った存在が触れると、花弁を真っ赤に染めるまで延々と血を吸い続けるからのっ!」
あのバカ、またあんな危険なものを持ち込んで。と、エクサリーの指輪の中にいるホウオウが呟く。
「私も何か、マリアちゃんに頼んで着飾ってた方が良かったのかな?」
『いやいや、止めときなさいよ。我等が神の二の舞よ?』
「だって……」
ローゼマリアの周りには多くの人が集っている。
それに対して自分には……
ふと目が合う、サッと目を逸らされる。そんな繰り返しである。
ヘルクヘンセン王家主催の祝賀会、エクサリーだけでは不安があろうと、自称、経験豊富であると言うローゼマリアについて来てもらったのだった。
千年ぶりの宴じゃっ、と言っていたので少々不安があったのだが、意外な社交性を発揮し、ローゼマリアの周りには大勢の人が集っている。
エクサリーも頑張って話しかけようとはするのだが、皆、エクサリーが動くと青い顔をして逃げるように離れていく。
遠目には興味深そうにエクサリーを見てくるのだが、近寄ろうとすると、まるで猛獣が近づきてきたかのように距離を離そうとする。
人垣がエクサリーの周りだけ存在しない、それはまるで見えないバリアーでもあるかのようだ。
「あ、あの、奥方様、その、緊張しているのは分かるのですが……もっと、その、お顔をほぐしたほうが……」
「なんじゃ、今日はまたさらに凶悪なツラをしておるのっ。うぉっ、コワっ。じょ、冗談じゃっ、そんなに怒るでないゾッ」
「別に怒ってなんていない」
『あんたはもっと言葉を選びなさいよ。ほらエクサリーも、もうちょっと力を抜いて』
なにせエクサリーさん、緊張が顔に出ているのか、まるで全てを石化させる、怪物メデューサのように見た人を恐れさせる存在と化している。
「ねえレン君、私、やっぱり怖いかな?」
「え……、いえいえ奥方様は美しくあらせられます! 怖いか怖くないかで言われれば怖いんですけど」
「そう……」
レンカイアは正直者であった。バカ正直ともいう。
ちょっと落ち込んだ表情で壁にもたれかかるエクサリー。
今日はもう帰ろうかな、といつになく弱気になったそのとき、一人の女性がエクサリーの前に進み出てきた。
「ちょっ、ちょっと止めようよフォスナ」
「そ、そうよ、呪われるわよっ!」
その女性を慌てて止めようとする幾つかの女性達。
『なんでエクサリーに近寄ると呪われるのよ? むしろそっちのゾンビ女のほうが呪いの専門家じゃない』
「だれがゾンビ女じゃっ!」
だがその女性は、周りの制止を振り切ってエクサリーに問いかけてくる。
「ねえあんた、あの噂のモンスターカードって奴を持ってるんでしょ、それちょっと差し出しなさいよ」
「ちょっ、ちょっとフォスナ!」
「あんた達も何を恐れているのよ、たかが18やそこらの小娘でしょ。こんな奴を恐れるなど、ヘルクヘンセンの貴族として恥ずかしくないのかしらね」
今、ヘルクヘンセンの貴族は激減している。
ダンディの手管により、ピクサスレーンから多くの貴族が入ってきて、それまで居たヘルクヘンセンの貴族達は辺境へ追いやられている。
ただでさえ隅に追いやられがちな自分達が、これ以上ピクサスレーンの人間を恐れてはならない。
そう思っての行動であった。
「えっと……かつあげかな?」
「いや、ちがっ……違う事もない? そ、そうよ! だから何だって言うの! 私はあんたなんて恐れてないんだからねっ!」
とか言いながら足元はガクブルである。
だがエクサリーさん、かつあげされているというのになぜか嬉しそうな表情をする。
「な、なによあんた、怖くない顔もできるんじゃない。やっぱり威嚇してたの?」
「え、威嚇なんてしてな……していませんよ」
ようやく誰かに話しかけられて、少し肩の力が抜けるエクサリー。
人生初の、かつあげに合うと言う貴重な体験もできた。
向こうは悪意をもって近寄って来たと言うのに、自分を恐れないそんな相手に好意さえ抱いていたりもする。
「その、これでよければどうぞ」
そう言ってクイーズから貰ったモンスターカードをいくつかその女性に差し出す。
「えっ、いいの? これもらってもホントにいいの?」
「ええ、私が持っていても使い道はありません。ぜひ、使ってやってください」
「なんか調子が狂うわね……いいわ、この私、フォスナ・ラ・スラスが、貴女からの贈り物をありがたく頂戴いたしますわ」
あ、よければそちらの皆さんも、と言って女性を引きとめようとしていた人達にも配っていく。
「これがモンスターカード、えっと、モンスターを弱らせて取り込めばいいのよね?」
「はい、それ以外にも仲良くなってゲットする方法もあります」
「へえ、もっと詳しく聞きたいわね」
フォスナが仲良さげに話をしているのを見て、残りのヘルクヘンセンの貴族達も集ってくる。
「僕にもそのカードを貰えたりしないかな?」
「良く見たら怖いなんて事もなかったな、むしろ……」
「へえ、わたくし、家にお猿さんのモンスターを飼っていますの。さっそく帰ったら使ってみますわ」
私の周りにも人が集って来ている。
これはクイーズのおかげ。
クイーズがくれたこのモンスターカードのおかげ。
うん、でもこれは、きっかけにしかすぎない、ここからは私の腕のみせどころ!
と思っているエクサリーの隣から「また顔が怖くなってきているので、あまり気合をいれない方がいいッスよ」と、忠告するレンカイアであった。
「モノで釣るのは良くないと思うのじゃがなっ」
『あんたが言えた義理じゃないでしょ』
真っ白な大輪の花で飾られたローゼマリアが自慢そうに胸を張っている。
「あら、それはとても珍しい花ですの?」
「素晴らしいですわ! わたくしにも一輪頂けませんでしょうか」
「ハッハッハ、それはオススメはせんぞっ。コイツは血の通った存在が触れると、花弁を真っ赤に染めるまで延々と血を吸い続けるからのっ!」
あのバカ、またあんな危険なものを持ち込んで。と、エクサリーの指輪の中にいるホウオウが呟く。
「私も何か、マリアちゃんに頼んで着飾ってた方が良かったのかな?」
『いやいや、止めときなさいよ。我等が神の二の舞よ?』
「だって……」
ローゼマリアの周りには多くの人が集っている。
それに対して自分には……
ふと目が合う、サッと目を逸らされる。そんな繰り返しである。
ヘルクヘンセン王家主催の祝賀会、エクサリーだけでは不安があろうと、自称、経験豊富であると言うローゼマリアについて来てもらったのだった。
千年ぶりの宴じゃっ、と言っていたので少々不安があったのだが、意外な社交性を発揮し、ローゼマリアの周りには大勢の人が集っている。
エクサリーも頑張って話しかけようとはするのだが、皆、エクサリーが動くと青い顔をして逃げるように離れていく。
遠目には興味深そうにエクサリーを見てくるのだが、近寄ろうとすると、まるで猛獣が近づきてきたかのように距離を離そうとする。
人垣がエクサリーの周りだけ存在しない、それはまるで見えないバリアーでもあるかのようだ。
「あ、あの、奥方様、その、緊張しているのは分かるのですが……もっと、その、お顔をほぐしたほうが……」
「なんじゃ、今日はまたさらに凶悪なツラをしておるのっ。うぉっ、コワっ。じょ、冗談じゃっ、そんなに怒るでないゾッ」
「別に怒ってなんていない」
『あんたはもっと言葉を選びなさいよ。ほらエクサリーも、もうちょっと力を抜いて』
なにせエクサリーさん、緊張が顔に出ているのか、まるで全てを石化させる、怪物メデューサのように見た人を恐れさせる存在と化している。
「ねえレン君、私、やっぱり怖いかな?」
「え……、いえいえ奥方様は美しくあらせられます! 怖いか怖くないかで言われれば怖いんですけど」
「そう……」
レンカイアは正直者であった。バカ正直ともいう。
ちょっと落ち込んだ表情で壁にもたれかかるエクサリー。
今日はもう帰ろうかな、といつになく弱気になったそのとき、一人の女性がエクサリーの前に進み出てきた。
「ちょっ、ちょっと止めようよフォスナ」
「そ、そうよ、呪われるわよっ!」
その女性を慌てて止めようとする幾つかの女性達。
『なんでエクサリーに近寄ると呪われるのよ? むしろそっちのゾンビ女のほうが呪いの専門家じゃない』
「だれがゾンビ女じゃっ!」
だがその女性は、周りの制止を振り切ってエクサリーに問いかけてくる。
「ねえあんた、あの噂のモンスターカードって奴を持ってるんでしょ、それちょっと差し出しなさいよ」
「ちょっ、ちょっとフォスナ!」
「あんた達も何を恐れているのよ、たかが18やそこらの小娘でしょ。こんな奴を恐れるなど、ヘルクヘンセンの貴族として恥ずかしくないのかしらね」
今、ヘルクヘンセンの貴族は激減している。
ダンディの手管により、ピクサスレーンから多くの貴族が入ってきて、それまで居たヘルクヘンセンの貴族達は辺境へ追いやられている。
ただでさえ隅に追いやられがちな自分達が、これ以上ピクサスレーンの人間を恐れてはならない。
そう思っての行動であった。
「えっと……かつあげかな?」
「いや、ちがっ……違う事もない? そ、そうよ! だから何だって言うの! 私はあんたなんて恐れてないんだからねっ!」
とか言いながら足元はガクブルである。
だがエクサリーさん、かつあげされているというのになぜか嬉しそうな表情をする。
「な、なによあんた、怖くない顔もできるんじゃない。やっぱり威嚇してたの?」
「え、威嚇なんてしてな……していませんよ」
ようやく誰かに話しかけられて、少し肩の力が抜けるエクサリー。
人生初の、かつあげに合うと言う貴重な体験もできた。
向こうは悪意をもって近寄って来たと言うのに、自分を恐れないそんな相手に好意さえ抱いていたりもする。
「その、これでよければどうぞ」
そう言ってクイーズから貰ったモンスターカードをいくつかその女性に差し出す。
「えっ、いいの? これもらってもホントにいいの?」
「ええ、私が持っていても使い道はありません。ぜひ、使ってやってください」
「なんか調子が狂うわね……いいわ、この私、フォスナ・ラ・スラスが、貴女からの贈り物をありがたく頂戴いたしますわ」
あ、よければそちらの皆さんも、と言って女性を引きとめようとしていた人達にも配っていく。
「これがモンスターカード、えっと、モンスターを弱らせて取り込めばいいのよね?」
「はい、それ以外にも仲良くなってゲットする方法もあります」
「へえ、もっと詳しく聞きたいわね」
フォスナが仲良さげに話をしているのを見て、残りのヘルクヘンセンの貴族達も集ってくる。
「僕にもそのカードを貰えたりしないかな?」
「良く見たら怖いなんて事もなかったな、むしろ……」
「へえ、わたくし、家にお猿さんのモンスターを飼っていますの。さっそく帰ったら使ってみますわ」
私の周りにも人が集って来ている。
これはクイーズのおかげ。
クイーズがくれたこのモンスターカードのおかげ。
うん、でもこれは、きっかけにしかすぎない、ここからは私の腕のみせどころ!
と思っているエクサリーの隣から「また顔が怖くなってきているので、あまり気合をいれない方がいいッスよ」と、忠告するレンカイアであった。
「モノで釣るのは良くないと思うのじゃがなっ」
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