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第十七章
レベル259 大特価!モンスターカード!!
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「これが今回の納品分です」
「おおう、随分と多いな。おいちゃん、大助かりだよ」
とある店舗、その軒先には、
『大特価! 本日入荷! モンスターカード!!』
とデカデカと書かれた黒板が。
「はい、最近は随分と増えてきたようで……カードも盛りだくさん!」
クイーズ以外がモンスターカードでモンスターをゲットすれば、そのモンスターのレベル分カードが増える仕様。
冒険者の皆様にカードを配り、どんどんゲットしてもらえば、そりゃ大量にカードが増えるわけですよ。
なので売りに出すことにしてみた。ラピスが。
もちろんクイーズには内緒で。
「じゃんじゃん売って、じゃんじゃんゲットして、じゃんじゃん増やしましょう!」
「いいのかなあ……こんなの売って」
店の護衛をしている冒険者さんがポツリと呟く。
しかしその呟きは誰の耳にも入らない。
「最近はモンスターテイマーって職業が出来たようね。かくゆう私もそれになりました!」
「お前のはモンスターと言うより、スライムテイマーだけどな」
「もういい加減増やすの止めろよ。スライム王国でも作る気か?」
「そういえばラピスちゃん、ゲットしたモンスターなんだけど、やっぱコレじゃないって手放そうとする不貞な輩がいて困ってるんだけど」
いざモンスターカードでゲットしたものの、使い道がみあたらない。
別の強いモンスターをゲットした所為で今まで使っていたカードがいらなくなった。
などという理由で、道端にカードを捨てて行く無法者が出てきたらしい。
誰でもモンスターを呼び出せるカードは、抜き身の刀と同じぐらい危険。
さすがに捨てるなよ、と、捨てた奴には罰則が用意されたのだが、持っていても仕方ないから何とかして欲しい。
という要望が上がってきているそうな。
いくらカード型で場所はとらないといえども、量が増えれば管理も大変だ。
「そうですね……中古屋でも始めますか?」
無地のカードだけでなく、モンスターが入ってるカードも売りに出そうと。
いらなくなったカードを買い取り、それを別の人に売りに出す。
力が足りなくてモンスターをゲットできない人の救済措置にもなる。
レベルが足りなくてモンスターを従えないとしても、友好的なモンスターなら協力してもらう事も可能だ。
モンスターにとっても、使われなくてずっとカードに閉じ込められるよりはマシなのではないだろうか。
「愛着のあるモンスターをそう簡単に売りに出すかね?」
「売り場にランクを設けましょう。プレミアランクですと、会員のみに販売できるようにし、その後のモンスターの状況をやりとりできるようにするとか」
「なるほど、それなら売主が買主を選別できる仲介のような形態もいいかもしれねえな」
「いいですね! さらなるカードの増産とビッグマネーの匂いがしてきますね!」
ラピスとおやっさんはそう言ってほくそ笑む。
「大丈夫かこの二人、モンスターを商売道具としてみてると手痛いしっぺがえしがあるような気がするんだが」
「まあ、親父さんだけなら不安だが、ラピスちゃんがいれば大丈夫だろう」
「そう? クイーズ君はラピスの大丈夫ほど当てにならないものはないって言ってたけど……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「最近、随分オレのレベルとカードが増えてきたのだが、なんかあったのかな?」
「良かったじゃないですか。お坊ちゃまのレベルが上がれば安全性も向上しますよ」
「う~ん、なんか不気味なんだが。悪い事が起こる前触れじゃなければいいが……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「はい、本日の納品分です」
「うおっ、ちょっと多過ぎじゃね?」
「大丈夫ですよ。最近は中古ショップの売れ行きも良いようですし、この中には私が狩ってきたモンスターが入っているのもあります」
これなんてオススメですよ。と言って一枚のカードを見せる。
「ほうロック鳥か、空飛ぶモンスターは大人気なんだよなあ。またオークション行きか。いい加減オークション会場も作った方がいいかもしれねえな」
その時だった、一人の店員が慌てて駆け込んでくる。
「店長、ちょっと来てくださいッス。変な客が来て困ってるッス」
「ふむ、なにだね?」
店員に引かれて隣の中古ショップに向かった所、
「ここにあるカードを全て売って頂きたい!」
などという騎士様がいらした。
「えっ、全部?」
「うむ」
「そんなに買って何に使うので?」
そう問いかけるおやっさんにしたり顔で、
「戦争に使うに決まっておろう」
などと言う。
「ちょっ、ちょっとラピスちゃん、これまずくね?」
「ううむ……意外と早かったですね」
「えっ?」
モンスターカード、そこに入っているモンスターは死なない。
致命傷を受けてもカードに戻るだけ。
さらに、どんなに巨大なモンスターであろうとも紙切れ一枚サイズで持ち歩ける。
そりゃ、戦争に使えばこれ以上の武器は存在しないであろう。
「これを全て、ともなりますとかなりの額ですが問題ないのですか?」
「うむ、問題ない」
「ちょっ、ちょっとラピスちゃん?」
カードが普及すれば避けては通れない道である。
人間の代わりにカードのモンスターが戦う。
一つの国がそれを行えば、他もそれに追随するであろう。
戦争に使われるとなれば、その普及速度は数百年早くなる。
「モンスターカードが主要武器になれば人の犠牲は減るかもしれませんよ?」
そして戦いに明け暮れるモンスターは一気にレベルが高くなる。
自分より高いレベルのモンスターは扱えない。となれば、また新たなモンスターをゲットせざるをおえない。
そして、モンスターの総レベルが自レベルとなるお坊ちゃまは、高レベルのモンスターを従えることが可能……などという腹黒な事を思っているかはここでは伏せておく。
「いやいやいや、たとえラピスちゃんの頼みでもそれは無理だべ。戦争に使うと聞いて売るわけにはいかねえ!」
「別にあなたが売らなくとも、冒険者達から買いあげるという手もあるが」
「あんまり冒険者をバカにしてもらっちゃあ困るな。戦争に使うと聞いて己の武器を明け渡す奴はいねえ」
「どうしても売る気はないと」
険しい顔をしておやっさんにつめよる騎士。
「ない!」
それを聞いてなぜか騎士の顔がフッと明るくなる。
「いやソレを聞けて安心した。戦争に使うと聞いてホイホイ売っているとなると我々も色々考えなければならなかったからな」
どうやらこの騎士様、おやっさんの事を試していた模様。
戦争に使うと聞いて嬉々として売るならば、このような商売は認められないと。
「すでに一定数普及してしまってる今では、売るなとも言いがたい。しかし、この事を心に留め置いていてほしい」
「うむ、売る量は減らしたほうがいいかもなあ」
「また邪魔が入りましたね……まあ次の手を考えるとしましょうか」
ラピスが小声で呟く。
「ん? ラピスちゃんなんか言った」
「いえ何も。そうですね、ビックフットや先ほどのロック鳥など、武器にならなさそうなものの取り扱いを増やしますか」
「いやいや、使い方次第では、それだって戦争になっちゃうよね?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
帰り際、ラピスに騎士が問いかけてくる。
「カードが戦争に使われれば、本当に人の犠牲は減ると思っているのですかな?」
「減りますよ」
「ほう……断言されますか。私にはより多く、より強いカードを持った国、そう、資金が豊富な国が蹂躙していく未来が予想されるのですが」
ラピスは一枚のカードを取り出す。
「コレ、別にタダで配っても構わないのですよ」
「………………」
「戦争に使用されれば、有れば便利なものから無くてはならないものになる。しかもこのカードは最初にモンスターをゲットしなくてはならない」
むしろ、資金が豊富な国より、強力なモンスターをゲットできる脳筋な国が強くなるかも。
あらゆる国が、モンスターをゲットするのに夢中になって、戦争どころじゃなくなるかもしれませんね。と、ニコリと笑う。
「……くれぐれも、そのカードを戦争に用いぬよう上司に伝えるとします」
そう言って去っていく騎士様であった。
「おおう、随分と多いな。おいちゃん、大助かりだよ」
とある店舗、その軒先には、
『大特価! 本日入荷! モンスターカード!!』
とデカデカと書かれた黒板が。
「はい、最近は随分と増えてきたようで……カードも盛りだくさん!」
クイーズ以外がモンスターカードでモンスターをゲットすれば、そのモンスターのレベル分カードが増える仕様。
冒険者の皆様にカードを配り、どんどんゲットしてもらえば、そりゃ大量にカードが増えるわけですよ。
なので売りに出すことにしてみた。ラピスが。
もちろんクイーズには内緒で。
「じゃんじゃん売って、じゃんじゃんゲットして、じゃんじゃん増やしましょう!」
「いいのかなあ……こんなの売って」
店の護衛をしている冒険者さんがポツリと呟く。
しかしその呟きは誰の耳にも入らない。
「最近はモンスターテイマーって職業が出来たようね。かくゆう私もそれになりました!」
「お前のはモンスターと言うより、スライムテイマーだけどな」
「もういい加減増やすの止めろよ。スライム王国でも作る気か?」
「そういえばラピスちゃん、ゲットしたモンスターなんだけど、やっぱコレじゃないって手放そうとする不貞な輩がいて困ってるんだけど」
いざモンスターカードでゲットしたものの、使い道がみあたらない。
別の強いモンスターをゲットした所為で今まで使っていたカードがいらなくなった。
などという理由で、道端にカードを捨てて行く無法者が出てきたらしい。
誰でもモンスターを呼び出せるカードは、抜き身の刀と同じぐらい危険。
さすがに捨てるなよ、と、捨てた奴には罰則が用意されたのだが、持っていても仕方ないから何とかして欲しい。
という要望が上がってきているそうな。
いくらカード型で場所はとらないといえども、量が増えれば管理も大変だ。
「そうですね……中古屋でも始めますか?」
無地のカードだけでなく、モンスターが入ってるカードも売りに出そうと。
いらなくなったカードを買い取り、それを別の人に売りに出す。
力が足りなくてモンスターをゲットできない人の救済措置にもなる。
レベルが足りなくてモンスターを従えないとしても、友好的なモンスターなら協力してもらう事も可能だ。
モンスターにとっても、使われなくてずっとカードに閉じ込められるよりはマシなのではないだろうか。
「愛着のあるモンスターをそう簡単に売りに出すかね?」
「売り場にランクを設けましょう。プレミアランクですと、会員のみに販売できるようにし、その後のモンスターの状況をやりとりできるようにするとか」
「なるほど、それなら売主が買主を選別できる仲介のような形態もいいかもしれねえな」
「いいですね! さらなるカードの増産とビッグマネーの匂いがしてきますね!」
ラピスとおやっさんはそう言ってほくそ笑む。
「大丈夫かこの二人、モンスターを商売道具としてみてると手痛いしっぺがえしがあるような気がするんだが」
「まあ、親父さんだけなら不安だが、ラピスちゃんがいれば大丈夫だろう」
「そう? クイーズ君はラピスの大丈夫ほど当てにならないものはないって言ってたけど……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「最近、随分オレのレベルとカードが増えてきたのだが、なんかあったのかな?」
「良かったじゃないですか。お坊ちゃまのレベルが上がれば安全性も向上しますよ」
「う~ん、なんか不気味なんだが。悪い事が起こる前触れじゃなければいいが……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「はい、本日の納品分です」
「うおっ、ちょっと多過ぎじゃね?」
「大丈夫ですよ。最近は中古ショップの売れ行きも良いようですし、この中には私が狩ってきたモンスターが入っているのもあります」
これなんてオススメですよ。と言って一枚のカードを見せる。
「ほうロック鳥か、空飛ぶモンスターは大人気なんだよなあ。またオークション行きか。いい加減オークション会場も作った方がいいかもしれねえな」
その時だった、一人の店員が慌てて駆け込んでくる。
「店長、ちょっと来てくださいッス。変な客が来て困ってるッス」
「ふむ、なにだね?」
店員に引かれて隣の中古ショップに向かった所、
「ここにあるカードを全て売って頂きたい!」
などという騎士様がいらした。
「えっ、全部?」
「うむ」
「そんなに買って何に使うので?」
そう問いかけるおやっさんにしたり顔で、
「戦争に使うに決まっておろう」
などと言う。
「ちょっ、ちょっとラピスちゃん、これまずくね?」
「ううむ……意外と早かったですね」
「えっ?」
モンスターカード、そこに入っているモンスターは死なない。
致命傷を受けてもカードに戻るだけ。
さらに、どんなに巨大なモンスターであろうとも紙切れ一枚サイズで持ち歩ける。
そりゃ、戦争に使えばこれ以上の武器は存在しないであろう。
「これを全て、ともなりますとかなりの額ですが問題ないのですか?」
「うむ、問題ない」
「ちょっ、ちょっとラピスちゃん?」
カードが普及すれば避けては通れない道である。
人間の代わりにカードのモンスターが戦う。
一つの国がそれを行えば、他もそれに追随するであろう。
戦争に使われるとなれば、その普及速度は数百年早くなる。
「モンスターカードが主要武器になれば人の犠牲は減るかもしれませんよ?」
そして戦いに明け暮れるモンスターは一気にレベルが高くなる。
自分より高いレベルのモンスターは扱えない。となれば、また新たなモンスターをゲットせざるをおえない。
そして、モンスターの総レベルが自レベルとなるお坊ちゃまは、高レベルのモンスターを従えることが可能……などという腹黒な事を思っているかはここでは伏せておく。
「いやいやいや、たとえラピスちゃんの頼みでもそれは無理だべ。戦争に使うと聞いて売るわけにはいかねえ!」
「別にあなたが売らなくとも、冒険者達から買いあげるという手もあるが」
「あんまり冒険者をバカにしてもらっちゃあ困るな。戦争に使うと聞いて己の武器を明け渡す奴はいねえ」
「どうしても売る気はないと」
険しい顔をしておやっさんにつめよる騎士。
「ない!」
それを聞いてなぜか騎士の顔がフッと明るくなる。
「いやソレを聞けて安心した。戦争に使うと聞いてホイホイ売っているとなると我々も色々考えなければならなかったからな」
どうやらこの騎士様、おやっさんの事を試していた模様。
戦争に使うと聞いて嬉々として売るならば、このような商売は認められないと。
「すでに一定数普及してしまってる今では、売るなとも言いがたい。しかし、この事を心に留め置いていてほしい」
「うむ、売る量は減らしたほうがいいかもなあ」
「また邪魔が入りましたね……まあ次の手を考えるとしましょうか」
ラピスが小声で呟く。
「ん? ラピスちゃんなんか言った」
「いえ何も。そうですね、ビックフットや先ほどのロック鳥など、武器にならなさそうなものの取り扱いを増やしますか」
「いやいや、使い方次第では、それだって戦争になっちゃうよね?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
帰り際、ラピスに騎士が問いかけてくる。
「カードが戦争に使われれば、本当に人の犠牲は減ると思っているのですかな?」
「減りますよ」
「ほう……断言されますか。私にはより多く、より強いカードを持った国、そう、資金が豊富な国が蹂躙していく未来が予想されるのですが」
ラピスは一枚のカードを取り出す。
「コレ、別にタダで配っても構わないのですよ」
「………………」
「戦争に使用されれば、有れば便利なものから無くてはならないものになる。しかもこのカードは最初にモンスターをゲットしなくてはならない」
むしろ、資金が豊富な国より、強力なモンスターをゲットできる脳筋な国が強くなるかも。
あらゆる国が、モンスターをゲットするのに夢中になって、戦争どころじゃなくなるかもしれませんね。と、ニコリと笑う。
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