10 / 113
第1章
伝わらない思い 4月11日
しおりを挟む
こおりはスマホ用のゲーム開発会社に勤めている。新卒で入った企業から転職して入った会社だ。
まだ若く小さい会社だか将来性があると思い、転職した。しかし、こおりは会社で思うような成果をあげることができずにいた。
前の会社は比較的大きな会社で、マニュアルや新人指導のカリキュラムが整っていた。こおりは同期内でも順調に仕事を覚え、すぐに後輩の指導も行う立場になった。気難しい先輩とも上手くやっていた。
自分は仕事ができる人間だと思っていた。
しかし、転職して職場が変わるとそれは違うことに気がついた。
発展途上の小さな会社に明確なマニュアルはない。そもそも日々試行錯誤しながら、やり方を模索している途中なのだ。自分でその場で考えて対応していくことが求められた。また、今まで事務作業は事務方にお願いしていたことが、そうもいかなくなった。やることは全て自分で調べて、自分で考えて、自分でやらなくてはいけない。
こおりはこの環境に今までにないプレッシャーを感じていた。給料はそれなりにもらっているが、それに見合った働きができていないのは明確で、他の職員との差を感じていた。
仕事に行く度、今までに少しずつ積み上げてきた自信とプライドがぼろぼろと崩れ落ちていくようだった。
他の人と比べて、自分がものすごく出来の悪い出来損ないに思えてきた。
学生時代からそこまで努力しなくてもそれなりに成果を挙げてきたこおりにとってはそれは初めての挫折だった。
俺はもっとできるはず。あいつらとは違う。もっとできるはず。俺はできる側の人間だ。
崩れ落ちそうなプライドをありったけの見栄で支えていた。人を無理やり見下して、自分の価値を上げていた。
「こおりさん、おはようございます。
なんか難しい顔してるけど、企画案できました?明日の会議にだせそうですか?」
こおりより2ヶ月先に入社した東さんが、こおりの席の横に来た。年齢も入社時期はほとんど変わらないのにこの人は企画を何本も出して通している。できる側の人間だ。
「東さん、おはようごさいます。ははっ、ばっちりですよ。今度こそ企画通します。」
「そっか、なんか疲れてるように見えたから、心配だったんです。これ、週末出掛けたお土産良かったらどうぞ。いつも遅くまで残業してるけど、無理しないでくださいね。」
お互い頑張りましょ~と言いながら、机にカスタードのお饅頭をおいていってくれる。
東さんはいつも爽やかにそつなく何でもこなす。しかも、男のこおりからみても格好よく、誰からも好かれる存在だ。モデル並みに可愛い彼女がいるらしい
こおりは東に嫉妬していた。
企画案は実は全然進んでいない。でもやらなければ、やらなければいけない。
こおりは目を見開いて、パソコンのキーボードを叩き始めた。
何とか企画案を作り、帰宅できたのは23時過ぎであった。食事もとっていないが、空腹もどこかに行くくらい疲れていた。
明日の会議のために、ちゃんと寝て疲れをとらないとな。
ああ、そういえば、あいりからメッセージきてたっけ。
昼休みに既読してからまだ返事を返していない。
あいり:今日病院にいってくる
こおり:風邪でも引いた?鼻水すすってたし、花粉症?
すぐに既読がついて返事がきた。
あいり:ううん、違う。
こおり:大丈夫?
あいり:大丈夫じゃない。動けない…。会いにきて
いつもは我が儘言わないあいりには珍しい。でも今日は無理だ。
こおり: ごめん、無理だわ。
あいり:そっか、こおりくんて私と結婚とかしたい?
? 訳がわからない。いつもの生理前のうつっぽい感じか?
あいりは生理前位に身体がだるそうにしていたり、突然泣き出したりすることがある。
今は付き合ってらんないよ。眠い。
こおり:あいりがモデル並みに可愛くなったら考えるよ。おやすみ。
すぐ、既読がついたが、その後あいりから返信は来なかった。
そもそも俺は返事が来ないことを気にも止めていなかった。
その後、あいりからの連絡は途絶えた。
まだ若く小さい会社だか将来性があると思い、転職した。しかし、こおりは会社で思うような成果をあげることができずにいた。
前の会社は比較的大きな会社で、マニュアルや新人指導のカリキュラムが整っていた。こおりは同期内でも順調に仕事を覚え、すぐに後輩の指導も行う立場になった。気難しい先輩とも上手くやっていた。
自分は仕事ができる人間だと思っていた。
しかし、転職して職場が変わるとそれは違うことに気がついた。
発展途上の小さな会社に明確なマニュアルはない。そもそも日々試行錯誤しながら、やり方を模索している途中なのだ。自分でその場で考えて対応していくことが求められた。また、今まで事務作業は事務方にお願いしていたことが、そうもいかなくなった。やることは全て自分で調べて、自分で考えて、自分でやらなくてはいけない。
こおりはこの環境に今までにないプレッシャーを感じていた。給料はそれなりにもらっているが、それに見合った働きができていないのは明確で、他の職員との差を感じていた。
仕事に行く度、今までに少しずつ積み上げてきた自信とプライドがぼろぼろと崩れ落ちていくようだった。
他の人と比べて、自分がものすごく出来の悪い出来損ないに思えてきた。
学生時代からそこまで努力しなくてもそれなりに成果を挙げてきたこおりにとってはそれは初めての挫折だった。
俺はもっとできるはず。あいつらとは違う。もっとできるはず。俺はできる側の人間だ。
崩れ落ちそうなプライドをありったけの見栄で支えていた。人を無理やり見下して、自分の価値を上げていた。
「こおりさん、おはようございます。
なんか難しい顔してるけど、企画案できました?明日の会議にだせそうですか?」
こおりより2ヶ月先に入社した東さんが、こおりの席の横に来た。年齢も入社時期はほとんど変わらないのにこの人は企画を何本も出して通している。できる側の人間だ。
「東さん、おはようごさいます。ははっ、ばっちりですよ。今度こそ企画通します。」
「そっか、なんか疲れてるように見えたから、心配だったんです。これ、週末出掛けたお土産良かったらどうぞ。いつも遅くまで残業してるけど、無理しないでくださいね。」
お互い頑張りましょ~と言いながら、机にカスタードのお饅頭をおいていってくれる。
東さんはいつも爽やかにそつなく何でもこなす。しかも、男のこおりからみても格好よく、誰からも好かれる存在だ。モデル並みに可愛い彼女がいるらしい
こおりは東に嫉妬していた。
企画案は実は全然進んでいない。でもやらなければ、やらなければいけない。
こおりは目を見開いて、パソコンのキーボードを叩き始めた。
何とか企画案を作り、帰宅できたのは23時過ぎであった。食事もとっていないが、空腹もどこかに行くくらい疲れていた。
明日の会議のために、ちゃんと寝て疲れをとらないとな。
ああ、そういえば、あいりからメッセージきてたっけ。
昼休みに既読してからまだ返事を返していない。
あいり:今日病院にいってくる
こおり:風邪でも引いた?鼻水すすってたし、花粉症?
すぐに既読がついて返事がきた。
あいり:ううん、違う。
こおり:大丈夫?
あいり:大丈夫じゃない。動けない…。会いにきて
いつもは我が儘言わないあいりには珍しい。でも今日は無理だ。
こおり: ごめん、無理だわ。
あいり:そっか、こおりくんて私と結婚とかしたい?
? 訳がわからない。いつもの生理前のうつっぽい感じか?
あいりは生理前位に身体がだるそうにしていたり、突然泣き出したりすることがある。
今は付き合ってらんないよ。眠い。
こおり:あいりがモデル並みに可愛くなったら考えるよ。おやすみ。
すぐ、既読がついたが、その後あいりから返信は来なかった。
そもそも俺は返事が来ないことを気にも止めていなかった。
その後、あいりからの連絡は途絶えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる