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第2章
ミジンコさん 5月15日
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こおりが目を覚ますと、翌日の早朝だった。
5月15日の日曜日の朝である。
リイトは、杏梨のバイト先の定員と言っていた。あの声をかけてきた男だろう。
昨日も働いていたようだが、今日はいるだろうか?
とりあえず、話してみないと。
こおりはシャワーを浴び、身支度を始めた。
あいりの家の方向へ向かう足は重かった。
道端であいりに会ってしまったらどうしよう。
こおりは周りをきょろきょろ見渡し、あいりの姿がないのを確認しながら進んだ。
コンビニの近くに着いたのは8時半過ぎだった。
遠目に中の様子を伺っていたが、彼の姿は見えなかった。
流石に昨日、日勤してたからいないのか…。
そう思いながらも、そのまま見ていると、ごみを回収しに彼が出てきた。気だるげにごみをまとめて持っていく。前にみたときよりだるそうな印象を受けた。
いた。仕事が終わって出てきたところで話しかけるか。
こおりはそのまま彼の仕事が終わるのを待ったが、この姿をあいりに見られないかどきどきして、何回も周りを見渡してしまった。
彼が出てきたのは9時5分だった。
とことこ歩き、コンビニの脇に置いてあった自転車に乗ろうとしている。
やばい、行ってしまう。
何て言うか考えることもなく、こおりは声をかけた。
「あのっすみません」
相手は驚いて振り返った。
前回会ったときは何も思わなかったが、彼は少しくまのできた色白の顔に、くっきり二重と大きな瞳が印象的なイケメンだった。
明らかに不振そうな顔をされる。
「…何ですか?」
「あっ俺、前にたちばなさんの知り合いじゃないかって話しかけられた者ですけど…」
そういうと、彼は思い出したようだった。
「ああ…はい。人違いだったんですよね。」
「いえ、違うんです。嘘ついてすみません。
あれ、俺なんです。」
こおりは軽く頭を下げた。
「ああ、別にいいですよ。たちばなさん辞めたんで、俺はもう知らないです」
そのまま、自転車に乗って立ち去ろうとする。
こおりは、彼の自転車に手をかけて引き留めた。
「なんか、言ってませんでしたか?彼女のこと好きだったんじゃないですか?」
その言葉を聞いて、彼は明らかに不機嫌になった。
「はい?だから知りませんよ!
俺がたちばなさんのこと好きとか何ですか?あり得ない」
自転車を無理やり引いて去ろうと彼は力を入れた。
「何でもいいんです!何か彼女のこと知りませんか?仲良い友達とか、何でもいいんです!
俺が彼女を傷つけてしまって…。
何とか力になりたいけど、俺はもう近づけなくて…」
追いすがるこおりに、彼は振り返って睨んだ。
「やっぱり、あんたがバイト辞めた原因か。
あの人がバイト辞めて、俺のシフト倍増でかなり迷惑!今日も夜勤からの早朝してて眠いんだよ。
俺は何も知らない!」
疲れた感じだったのは、シフトが増えて疲れているかららしい。イラついた様子だったのもそのせいか。
この様子だと何も聞けそうにない。
こおりはこれ以上追いすがるのを諦めかけた。
こおりがうなだれるのをみて、いらついた彼は畳掛けた。
「あぁ、そういえば…
なんか彼氏が元カノの話ばっかして比べられるってうじうじ言ってたんで、いらいらして、そんな器の小さいミジンコハート野郎はさっさと別れたら?って言った気がするわ。
俺が言ったら、なんかたちばなさん大爆笑してて…
あんたがミジンコさん?
ミジンコハートで、彼女に愛想つかされて、別れ話されて、追いすがって、拒否られて、ストーカーして、たちばなさんはバイト辞めざる得なかった感じですか?
仕方ない。めんどいけど、通報してあげますか?俺までストーカーしないでくださいよ。
鬱陶しい。
さっきも言ったけど、俺はたちばなさんと仲良かった訳でも何でもない。
当たり前でしょ?
すぐに謝るし、
バイト入れすぎて疲れてるし、
そのくせサークルは大学入ったらやらないといけないと思っているみたいで自分追い詰めてるし、
ゴキブリ見つけると毎回大声で叫ぶし。
ほんと迷惑。
勘弁してください。
俺、眠いんで。」
そう言い捨てると彼は自転車に乗って去っていった。
5月15日の日曜日の朝である。
リイトは、杏梨のバイト先の定員と言っていた。あの声をかけてきた男だろう。
昨日も働いていたようだが、今日はいるだろうか?
とりあえず、話してみないと。
こおりはシャワーを浴び、身支度を始めた。
あいりの家の方向へ向かう足は重かった。
道端であいりに会ってしまったらどうしよう。
こおりは周りをきょろきょろ見渡し、あいりの姿がないのを確認しながら進んだ。
コンビニの近くに着いたのは8時半過ぎだった。
遠目に中の様子を伺っていたが、彼の姿は見えなかった。
流石に昨日、日勤してたからいないのか…。
そう思いながらも、そのまま見ていると、ごみを回収しに彼が出てきた。気だるげにごみをまとめて持っていく。前にみたときよりだるそうな印象を受けた。
いた。仕事が終わって出てきたところで話しかけるか。
こおりはそのまま彼の仕事が終わるのを待ったが、この姿をあいりに見られないかどきどきして、何回も周りを見渡してしまった。
彼が出てきたのは9時5分だった。
とことこ歩き、コンビニの脇に置いてあった自転車に乗ろうとしている。
やばい、行ってしまう。
何て言うか考えることもなく、こおりは声をかけた。
「あのっすみません」
相手は驚いて振り返った。
前回会ったときは何も思わなかったが、彼は少しくまのできた色白の顔に、くっきり二重と大きな瞳が印象的なイケメンだった。
明らかに不振そうな顔をされる。
「…何ですか?」
「あっ俺、前にたちばなさんの知り合いじゃないかって話しかけられた者ですけど…」
そういうと、彼は思い出したようだった。
「ああ…はい。人違いだったんですよね。」
「いえ、違うんです。嘘ついてすみません。
あれ、俺なんです。」
こおりは軽く頭を下げた。
「ああ、別にいいですよ。たちばなさん辞めたんで、俺はもう知らないです」
そのまま、自転車に乗って立ち去ろうとする。
こおりは、彼の自転車に手をかけて引き留めた。
「なんか、言ってませんでしたか?彼女のこと好きだったんじゃないですか?」
その言葉を聞いて、彼は明らかに不機嫌になった。
「はい?だから知りませんよ!
俺がたちばなさんのこと好きとか何ですか?あり得ない」
自転車を無理やり引いて去ろうと彼は力を入れた。
「何でもいいんです!何か彼女のこと知りませんか?仲良い友達とか、何でもいいんです!
俺が彼女を傷つけてしまって…。
何とか力になりたいけど、俺はもう近づけなくて…」
追いすがるこおりに、彼は振り返って睨んだ。
「やっぱり、あんたがバイト辞めた原因か。
あの人がバイト辞めて、俺のシフト倍増でかなり迷惑!今日も夜勤からの早朝してて眠いんだよ。
俺は何も知らない!」
疲れた感じだったのは、シフトが増えて疲れているかららしい。イラついた様子だったのもそのせいか。
この様子だと何も聞けそうにない。
こおりはこれ以上追いすがるのを諦めかけた。
こおりがうなだれるのをみて、いらついた彼は畳掛けた。
「あぁ、そういえば…
なんか彼氏が元カノの話ばっかして比べられるってうじうじ言ってたんで、いらいらして、そんな器の小さいミジンコハート野郎はさっさと別れたら?って言った気がするわ。
俺が言ったら、なんかたちばなさん大爆笑してて…
あんたがミジンコさん?
ミジンコハートで、彼女に愛想つかされて、別れ話されて、追いすがって、拒否られて、ストーカーして、たちばなさんはバイト辞めざる得なかった感じですか?
仕方ない。めんどいけど、通報してあげますか?俺までストーカーしないでくださいよ。
鬱陶しい。
さっきも言ったけど、俺はたちばなさんと仲良かった訳でも何でもない。
当たり前でしょ?
すぐに謝るし、
バイト入れすぎて疲れてるし、
そのくせサークルは大学入ったらやらないといけないと思っているみたいで自分追い詰めてるし、
ゴキブリ見つけると毎回大声で叫ぶし。
ほんと迷惑。
勘弁してください。
俺、眠いんで。」
そう言い捨てると彼は自転車に乗って去っていった。
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