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第2章
【R-18】 優しさ 5月17日午後
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あいり:
お金は返しません!
楽しく使います!
もう二度と店に来るな、ミジンコやろう!
水川があいりのスマホで送ったメッセージをこおりがみたのは、14時前だった。
仕事の目処が立たず、遅めの昼食を食べる際にスマホを確認した。あいりからのメッセージだと気づいたとき、こおりの手は一瞬止まり、一旦深呼吸してからメッセージを開いた。
その内容を読んで、最初にこおりの胸にわいた感情は安堵だった。
手紙で拒否され、お金もあらたに渡せず、こおりはあいりのことが心配だった。必要最低限以外は全く使わずに、無理して働いて全額返してくるのではないかと思っていた。
酷いことをした償いはもちろんだが、こおりはあいりのためなら何でもしたかった。お金を楽しく使って貰えるならそれに越したことはない。
良かった…。受け取って貰えるなら、また渡したいな。
そもそも、大学生なんて比較的自由に遊べる時期なのに、あいりは学校とバイトといつも忙しくしていた。好きな服を買って、美味しいものを食べて、お金のことは気にせず楽しく笑っていて欲しい。
コンビニ店員の男に追い返されたこともあり、メッセージを読む前から、もうお店には行くつもりはなかった。
安堵したのも事実だが、こおりにはメッセージをみた瞬間に感じた違和感があった。
この文章は恐らくあいりが書いたものではないだろう。
内容も文章から伝わる印象も、彼女ではない。他の誰かが彼女の変わりに打って送信したのかもしれない。
ミジンコやろう
この呼び方をする人物はこおりは彼の他に知らない。
リイトが指名した彼は、何らかの形でちゃんと動いてくれたようだ。
乱暴な口調だったが、彼が整った顔立ちをしていたのを思い出す。
彼があいりに関わることが、自分にとっては辛い結末を生むことになっても、それは仕方ないことだと思った。
休憩時間は終わりに近づいていた。
返信はあいりが読んで不快なものでないように、できれば次に繋がるように、言葉を選んでしたかった。
こおりはスマホをしまい、サンドイッチのゴミを捨てに行った。
◆
5/17 21:50
たちばなあいり:
お疲れ様です。今日は色々とありがとうございました。またたびは5個しか集まりませんでした。どうやって渡したらいいのかわからないので、また教えていただけると嬉しいです。では、みけにゃんを数えるので失礼します。
ベットに置いたスマホの画面が光ったので、水川はそちらに目を向けて、その律儀な文面のメッセージを読んだ。
「はっ、ほんとまじめ。ふふっ…」
つい手を止めて笑ってしまう。
22時には猫を数えて寝ろと言ったのをこれから実行するのだろう。その光景を想像すると面白かった。
「ちょっと…優一?」
不服そうな声に、こっちを見てと言わんばかりに相手の手を動かす音が早くなる。
「あーはいはい」
水川はおざなりに、自分の手と指の動きを早めた。
室内の声と粘液の音が大きくなる。
もーいいかなー?
ああ、みけにゃんの好きな缶詰買っとかないとなー。
「入れるよー?」
水川は相手の返事を聞かずに、ベットの隅に置いてあるコンドームの箱に手を伸ばして、ささっとつけた。
「…毎回、ちゃんとつけるよね…っん」
脚を開かせて、それを入れて動かし始める。
「当たり前。めんどいこと嫌い」
缶詰は何気に単価が高いから、ゲーム内の仕事も考えないといけない。
単調に腰を動かす。
時間がないので早く終わらせたい。
加速する腰の動きに加えて、手と指も動かし始める。
せつない声と皮膚のぶつかり合う音が部屋に響いた。
全部出たかなーと思ったところで、引き抜いて、ティッシュに包んで処理をする。
抱きついてキスをしようとする顔をすすっと避けて、スマホのゲームを立ち上げる。
「口べたべたするから、いや」
またもや不服そうな声に、水川は抗議した。
「不満なら彼氏つくれ。こうやって頼み事きいてる俺の優しさわかってる~?ほんとは寝たいよ」
ゲーム内のみけにゃんはご機嫌だ。
「優しいけど…優しくない! 」
隣で声が聞こえたが、水川には届いてはいなかった。
お金は返しません!
楽しく使います!
もう二度と店に来るな、ミジンコやろう!
水川があいりのスマホで送ったメッセージをこおりがみたのは、14時前だった。
仕事の目処が立たず、遅めの昼食を食べる際にスマホを確認した。あいりからのメッセージだと気づいたとき、こおりの手は一瞬止まり、一旦深呼吸してからメッセージを開いた。
その内容を読んで、最初にこおりの胸にわいた感情は安堵だった。
手紙で拒否され、お金もあらたに渡せず、こおりはあいりのことが心配だった。必要最低限以外は全く使わずに、無理して働いて全額返してくるのではないかと思っていた。
酷いことをした償いはもちろんだが、こおりはあいりのためなら何でもしたかった。お金を楽しく使って貰えるならそれに越したことはない。
良かった…。受け取って貰えるなら、また渡したいな。
そもそも、大学生なんて比較的自由に遊べる時期なのに、あいりは学校とバイトといつも忙しくしていた。好きな服を買って、美味しいものを食べて、お金のことは気にせず楽しく笑っていて欲しい。
コンビニ店員の男に追い返されたこともあり、メッセージを読む前から、もうお店には行くつもりはなかった。
安堵したのも事実だが、こおりにはメッセージをみた瞬間に感じた違和感があった。
この文章は恐らくあいりが書いたものではないだろう。
内容も文章から伝わる印象も、彼女ではない。他の誰かが彼女の変わりに打って送信したのかもしれない。
ミジンコやろう
この呼び方をする人物はこおりは彼の他に知らない。
リイトが指名した彼は、何らかの形でちゃんと動いてくれたようだ。
乱暴な口調だったが、彼が整った顔立ちをしていたのを思い出す。
彼があいりに関わることが、自分にとっては辛い結末を生むことになっても、それは仕方ないことだと思った。
休憩時間は終わりに近づいていた。
返信はあいりが読んで不快なものでないように、できれば次に繋がるように、言葉を選んでしたかった。
こおりはスマホをしまい、サンドイッチのゴミを捨てに行った。
◆
5/17 21:50
たちばなあいり:
お疲れ様です。今日は色々とありがとうございました。またたびは5個しか集まりませんでした。どうやって渡したらいいのかわからないので、また教えていただけると嬉しいです。では、みけにゃんを数えるので失礼します。
ベットに置いたスマホの画面が光ったので、水川はそちらに目を向けて、その律儀な文面のメッセージを読んだ。
「はっ、ほんとまじめ。ふふっ…」
つい手を止めて笑ってしまう。
22時には猫を数えて寝ろと言ったのをこれから実行するのだろう。その光景を想像すると面白かった。
「ちょっと…優一?」
不服そうな声に、こっちを見てと言わんばかりに相手の手を動かす音が早くなる。
「あーはいはい」
水川はおざなりに、自分の手と指の動きを早めた。
室内の声と粘液の音が大きくなる。
もーいいかなー?
ああ、みけにゃんの好きな缶詰買っとかないとなー。
「入れるよー?」
水川は相手の返事を聞かずに、ベットの隅に置いてあるコンドームの箱に手を伸ばして、ささっとつけた。
「…毎回、ちゃんとつけるよね…っん」
脚を開かせて、それを入れて動かし始める。
「当たり前。めんどいこと嫌い」
缶詰は何気に単価が高いから、ゲーム内の仕事も考えないといけない。
単調に腰を動かす。
時間がないので早く終わらせたい。
加速する腰の動きに加えて、手と指も動かし始める。
せつない声と皮膚のぶつかり合う音が部屋に響いた。
全部出たかなーと思ったところで、引き抜いて、ティッシュに包んで処理をする。
抱きついてキスをしようとする顔をすすっと避けて、スマホのゲームを立ち上げる。
「口べたべたするから、いや」
またもや不服そうな声に、水川は抗議した。
「不満なら彼氏つくれ。こうやって頼み事きいてる俺の優しさわかってる~?ほんとは寝たいよ」
ゲーム内のみけにゃんはご機嫌だ。
「優しいけど…優しくない! 」
隣で声が聞こえたが、水川には届いてはいなかった。
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