杏梨ちゃんは癒されたい

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【R-18】汚されたら手当てされたい 4月27日

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気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い…

今日は本当に最悪だ

早く家について、きれいにしたい…

杏梨はふらつきながらも駅からの家路を急いでいた。


ドアを急いで開ける。
靴を脱ぎ捨て、洗面所にカバンを乱暴に置き、服を脱ぎ捨て、浴室に急いだ。

勢いよくシャワーを出す。お湯が肌の表面を伝って流れていく。

頭くらくらする。気持ち悪い。気持ち悪い。

杏梨の頬を水滴が伝う。震える手で杏梨は身体をごしごしと洗い始めた。



一応全部洗ったが、きれいになった気はしなかった。

「ひっくっひっく…」

びしょ濡れの身体で杏梨は泣いていた。


金田さん…。

おざなりにバスタオルを身体に巻き、スマホを手に取る。

金田に電話をかけようとしたが、そうたにつけられたキスマークが目に止まる。

彼氏いるのに、元彼に甘えた。私、金田さんに今から何て言うの…?

金田からしたらそうたも他の男も変わらない。

…助けて。
杏梨の手はそうたに電話をかけていた。





「もしもし?」
そうたの優しい声が聞こえる。

「っひっく…ひっく」

「杏梨?どしたっ?」
そうたの声が少し大きくなる。

「助けて…」

杏梨?杏梨?大丈夫か?杏梨!………!

そうたの声が聞こえたが、頭がくらくらして、ずきずき痛くて、杏梨は目を閉じた。




ピンポーンピンポーンピンポーン
ガチャ、たったったったっ


「杏梨っ!」

物音に目を薄く開けると、目の前に飛び込んで来たのは、そうたの心配そうな顔だった。

息が荒く、顔は真っ赤だ。

「……そうた?」

「大丈夫かっ?ドア空いてたけど、誰かに何かされたのか?!」
ものすごい剣幕で聞かれる。

「ううん…あっ閉め忘れたかも」
シャワー優先で鍵のことを忘れたかもしれない。

「っ!危ないだろ?ストーカーとかつけてて、押し入られたらどうすんだっ!助けてって言ったあと返事なくなるし、ドア開いてて…」

そうたは涙目だ。

心配かけちゃった…。

「ごめんなさい…」

自分勝手に助けを求めた自分が恥ずかしくなる。私は何てだめな人間なんだろう

「それで大丈夫?誰かに何かされたのか?怪我は?」

そうたの目が必死だ。

つまらないことで心配かけてしまった。

「怪我とかないから大丈夫。
ちょっと…電車で身体触られて、酔ってて逃げられなくて、
怖くてパニックになっちゃって…
馬鹿だよね、心配かけてごめんね」

そうたの目が急にどんより暗くなった。
「…そっか、っていうか寒いだろ、ごめんな。服とかタオル持ってくるよ、どこだっけ?」

杏梨は浴室を出たところで、身体にバスタオルを巻いただけの状態でへたりこんでいた。髪の毛は濡れていて、身体は冷えきっている。

急に身体がぶるっと寒くなった。

「タオルはそこの棚の中で、服は…下着もだから自分で取りに行くね」

そうたが新しいタオルを手渡してくれる。立ち上がろうとしたが、力が入らずすぐにへたりこんでしまった。

「あれっ、ごめん、えっと…」

手が震える。

そうたが手をかそうとしてくれたが、その指先は杏梨の身体までは届かずに止まった。

「…そうた?」

私のこと、気持ち悪いのかな…?
涙がにじんでくる。

「杏梨…えっと嫌じゃなかったら、だっこして運んでもいい?その格好じゃ風邪引いちゃうよな。
えっとそれかとりあえず着れそうなもの探してこようか?
ええっと、ああ…俺…どうしたらいい?」

そうたが悲しそうな困った顔をしている。


「…そうたが嫌じゃなければ運んでほしい」

洗面所の床は冷たいからここからは移動したいし、そうたに下着を用意してもらうのは申し訳ない。

杏梨の言葉を聞いて、そうたはおずおずと手を伸ばした。

抱き起こしてくれるが、足に力が入らず崩れ落ちそうになってしまう。

「ごめん…、お酒のまされてて…力入んない」

「んーっと、触ってごめんっ!すぐだから」

そう言うと、そうたは杏梨をバスタオルごとお姫様だっこして、服のある引き出しの前まで運んだ。

杏梨に服を選んで持ってもらい、リビングのソファーの上に杏梨をおろした。

「ごめんなっ、嫌だったろ?」

そうたは申し訳無さそうにしている。

「なんで?そんなことないよ。そうたに触られるのはこわくない」

「着替えるだろ?部屋の外でてるから、終わったら教えて。水とかのめる?」


そうたは杏梨の言葉が聞こえなかったかのように、要件だけ言ってでていった。

なんか、そうた…変




ふらつく身体になんとか、下着を着せる。かぶって着るだけなので、パジャマはもこもこ素材のピンクの膝丈ワンピースだ。同じ素材の靴下をはくと少し身体が温まってきた。


「そうた、もう大丈夫だよ。」
声をかけると、そっとドアがあいて、水の入ったコップを持ってきてくれた。

「冷蔵庫勝手に開けてごめん。入ってたミネラルウォーター開けちゃった。のめる?」

こくんと頷くと、コップを手渡してくれた。

ゆっくりと飲むと、すーっと冷たい水が喉を通って気持ち良かった。

「髪の毛も乾かさないとな、そのままじゃ風邪引く」

そうたがドライヤーを持ってきて、スイッチを音にした。

1メートル位遠くから、私の髪の毛に温風を当てる。

?遠くない?ただえさえロングだから乾かないよ


そうたに手招きすると、よってきてくれる。が以前なんか遠いままだ。

ドライヤーで声が聞こえない。

杏梨はそうたに手を伸ばし、ほっぺたを軽くつねった。

ドライヤー音が消える。


「にゃに?あちゅかっま?」
つねられたままそうたがしゃべる。

「ちゃんと触って乾かして?遠いよ」

「…いいの?」

ソファーの下のカーペットに座り、手招きでそうたをソファーに座れと指示をする。

ソファーに座っているそうたの脚の間に、杏梨が入る。

これで、私も楽だし、そうたも楽なはず。

ごー ドライヤーが静かに再開された。


そうたの手が杏梨の髪の毛に触る。その手はとても優しい。時々頭を撫でられる。

熱くないー?痛くないー?時々声がとんでくる。

温かくて気持ちよかった。


「乾いたかな?」
そうたがスイッチを切った。

「うん、大丈夫そう。ありがとね」

杏梨がそうこたえると、そうたはすすすと座っている位置をずらして杏梨から遠ざかった。

「なんで、遠くにいくの?」
今日のそうたは極力私に触れたがらない。杏梨は悲しかった。

「だって、男嫌だろ?水のんで、ゆっくり寝なよ。俺、帰るわ」

そうたは杏梨と目を合わせずにそういった。




そうたに嫌われた……


そうたの言葉に、杏梨はぐちゃぐちゃの思いを押さえ込めなかった。一気に話す。

「男嫌って、そりゃ電車で触ってきた人とか、飲み会でやたら近くに来て、セクハラ言ってお酒のませてきたおじさんとか気持ち悪かったけど、そうたのことは嫌じゃないよ!」

「そうたが私を嫌になっただけじゃないの?」

「私が彼氏いてもそうたに甘えちゃう淫乱女だから、嫌になったんじゃないの?」

「今日…飲み会で一体男何人いるの?とか、聞かれて咄嗟に受け流せなかった。いつもはそんな冗談気にしないで流すのに。

明らかに強そうな日本酒断り切れなくて、何とか飲んで、何とか切り上げて…

混んでる電車で壁際に寄りかかってたら、後ろからおしり触られて、
酔ってて力入んなくて何もできずにいたら、胸も揉まれて…。
流石に動いて抵抗したけど、相手の力強くてびくともしなくて…。こわくて
駅に着いて、やっと逃れられたから、頑張って家に帰って、

気持ち悪くて仕方なくて身体洗ったけど、触られた感触が消えないのっ!」

いつの間にか杏梨の目からは涙がこぼれていた。

「金田さんに連絡しようとしたけど、彼氏いるのにそうたにしてもらったことは変わらない。

いいって言われたけど、するって決めたのは私だもん。こわくて連絡できなくて…」

「気持ち悪くて仕方なくて、助けてほしくて、気づいたらそうたに電話してたの…」


「全部私が悪いのに、ごめんね」

「そうたは私を抱かないで慰めてくれた。
欲望を自分勝手にぶつけるしかできない人とは違うよ。」

そうたの顔をみると、そうたはどん底のような目をしていた。

「いや、俺もそいつらと同じだよ。むしろそいつら以下だ…」

そうたの手が震えている。


なんで?そうたは私の嫌がることなんてしないじゃない。自分勝手に力でねじ伏せたりしないじゃない。


杏梨はそうたの手をとって、その手にキスをした。

「違うよ。そうたは違う。そうたの手は優しい。
私はそうたに救われたの。金田さんと付き合ってから、ずっと苦しいことばっかり。
こんなの初めて。私こんなに泣き虫だったことないのに…。」


「そうたに甘えたいって思ったのは私。
それは私の責任、そうたは私の言うこときいてくれただけじゃない?」

「ありがとう、そうた」

感謝の意味を込めて、そうたの頬に杏梨はキスをした。そのままぎゅっと抱き締める。

そうたは抱き締め返してくれない。

杏梨はナイトブラを外し、そうたの手を握り、胸に当てさせた。

「そうた、痴漢に触られたとこ、まだ気持ち悪いの。
そうたの手で手当てしてほしい。」

ワンピースの裾を上げて、そうたに身体を見せる。

杏梨のおっぱいは洗いすぎて赤くなっていた。

「洗ったけど、触られた感触が抜けないの。お願い…」

そうたの手は動かない。

杏梨の心がしゅーんとしぼんでいく。

「…やっぱ、こんな女身体、汚れてて嫌だよね…」

そう呟いて、そうたの手を解放した。

しかし、そうたの手は杏梨の胸を離さなかった。

そうたは杏梨の目を見つめていた。その目は悲しそうだったが、優しい目だった。

「杏梨は汚れてなんかいない。彼氏が許可出したから俺に頼んだだけで、汚れてない。杏梨は悪くない。」

「彼氏に頼めなくて、悲しいなら俺がいくらでも手当てする。
だから、そんなに自分を嫌いになるな」

そうたは優しく優しく赤くなった杏梨の胸を撫でる。

「泣かないで。ごめんな。俺が引き受けたからかえって苦しませて。」

「彼氏になんか言われたら、全部俺のせいにしていいから…」

「だから…頼むから、汚いなんていって、自分を貶めないでくれ」

そうたの手がゆっくり杏梨のおしりを撫でる。

「そうた、ありがとう、そうたは優しいね…」

そうたは違うというように、弱く首をふって、何も言わなかった。


そして、杏梨が落ち着くまでゆっくり手当てした。




杏梨のスマホに金田からの連絡が入ったのはその翌日だった。











    
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