魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

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1章 幼き魂と賢者の杖

3 デスマウンテンです

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 崖の上から山を見渡す。
 空は雲一つない快晴・・・と言いたいところだが、瘴気が立ち上り光を少々遮っている。
 ここは魔物が支配する魔領だけあって、辺りから濃い魔力の流れと不浄な気配が瘴気を作り出している。
 人間に生まれていたら体に変調をきたしていたのかもしれないが、魔族の血脈だけあって何の問題もない。
 前世の記憶がなければ、瘴気を気にすることすらなかっただろう。

 下を見回すと、木々の陰から黒い犬が5匹見えた。
 それっぽいので勝手にヘルハウンドと命名している。
 獰猛で危険な奴なのだが襲われたことはない。
 なぜなら常に僕の近くにボディーガードがいるからだ。

「セフリ、そろそろ帰ろうか。」

 僕は狼の姿をしたボディーカードに声をかける。
 赤子の時代に僕を救出したのがセフリなのだ。
 見た目は狼なのだが、明らかに変なオーラを出している。
 凶悪な魔物がこの辺りには少なからず生息しているのだが、セフリに近づいてくる奴はいない。

 ここは山だ。
 しかし只の山ではない。
 魔領の奥地にあるデスマウンテンだ。
 勝手にそう呼んでるだけで本当は名前は別なんだけど。
 僕はレベル1でラストダンジョン付近にいるような状況なのだ。

 もし僕が一人で魔物と出会ったらどうなるか?
 たぶん死ぬ。
 テンプレート的な無双は無理、死ぬ。
 
 一応は魔法の手ほどきを受けている。
 ただしまともな戦いにはならないだろう。
 ステータス的なものを表示すると以下のようになる。

 ・体力     4歳+α
 ・知力     一般の大人並
 ・魔力     そこそこ
 ・魔導     そこそこ
 ・魔術回路
  火とか氷とか 少しだけ
  精神系    そこそこ

 なにせ四歳だ。
 火の玉をぶっ放したり、氷の刃を撃ち込むようなことは出来ない。
 時間をかけて集中すればライターレベルの火なら出せるし、飲み物に入れて美味しい氷程度なら作ることができる。
 これだけでも爺が言うには相当に凄いことらしい。
 声を大にして言いたい、こんなレベルでも使えると便利だよ。

 魔法の中で魔王種の得意属性は、精神に影響を及ぼす魔法だ。
 僕が使えるのは怒っている魔物をさらに怒らせたり、警戒する魔物に恐怖を与えたり、無警戒な魔物に眠りを与えるような魔法だ。
 役に立つのかは微妙だ。
 そして精神系の魔法は、他の魔法よりも習得難易度が高い。
 魔王種は逆にそちらの方が得意なのだ。
 魔術回路を編むためのシェーダに魔王種専用関数があるおかげなんだけどね。

 ちなみにうちの母が精神系魔法を振るうと、相対した人間の軍隊はたちどころに恐怖に包まれ、発狂し、泡を吹き出して倒れたり自殺や同士討ちという惨状を迎えたとのことだ。
 運悪く生き残った者は精神に呪いを受け、苦しんだあげくに衰弱して死んでいく。
 母は魔力回復スキルに下支えされた魔力のごり押しで、相手の魔法防御も貫通するとのこと。
 そこまで行き着くとたしかに恐ろしい。
 絶対に敵にしたくない、まさに恐怖の象徴だ。

 しかしその恐ろしい魔王にも天敵はいる。
 勇者だ。
 強力な精神力を持つ勇者は、精神系魔法に対する抵抗力がすこぶる高い。
 戦うならそれ以外の選択肢をとることになる。
 魔王種のアドバンテージが勇者には通用しないのだ。
 ちなみに魔王種も精神系魔法に対する高い抵抗力を持っているが、勇者が精神系魔法を使ってくることはまずあり得ないので、あまり意味はない。




 今は大したことができないけれど、いつか母みたいに無双できる日が来るといいな。
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