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1章 幼き魂と賢者の杖

27 答えに応える

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 魔術師には勝利した、最後はエリザさん瞬殺していたけれど。
 魔族が現れた、エリザさんが圧倒するものの逃げられた。
 そして賢者の杖・・・ルディンを奪われた。

 もう声は聞こえない。
 ルディンの声も、謎の女の子の声も。
 謎の女の子の声、昔から知っているような不思議な感覚だった。

 どちらにせよ目的が一つ出来た。
 賢者の杖を取り返す。

 森の館から町へ戻る帰り道、エリザさんは途中でどこかに行ってしまった。
 僕は冒険者四人に送られて町へ戻ってきた。
 四人は町長へ報告に向かいという。
 僕は助けに来てもらったお礼を言い分かれた。

 そして向かうのは・・・雑貨屋、グラマンさんの所だ。

 僕は雑貨屋に入った。
 グラマンさんは奥の部屋にいた。
 荷物の整理をしているようだった。

「オキス君、無事だったんだね。」

 作業をやめ、僕に目を向けた。

「答え合わせに協力していただけますか?」

 僕がそう言うと、グラマンさんは笑う。

「答え合わせかい?どんな問題だったね。」

 [*14話参照]
「以前に僕達にさかづきを探すよう頼みましたよね。
 あれは誰に売ったんですか?」

「ああ、あれならどうやら盗まれてしまったようでね。」

「あの杯は森の館にいた魔術師が持っていましたよ。」

「ほう、そんなところに。」

 グラマンさんはとぼけた顔をしている。

 [*15話参照]
「次に僕達を町外れの倉庫に行くように指示しましたね。」

「ああ、あの後まさか誘拐されてしまうとは。
 申し訳ないと思っている。」

「誘拐犯は待ち伏せをしていたんですよ。」

「それは偶然ではないのかね。」

 グラマンさんは首をかしげて答えた。

 [*19話参照]
「誘拐犯が捕まった後、詰め所に行っていますよね。
 その時、彼らに何か渡しましたよね?」

「うちの商品が盗まれた件で確かに詰め所に入ったが、誘拐犯に何を渡すと言うんだい?」

 グラマンさんは笑みを崩さず答える。
 ここまでこう答えてくるのは完全に想定内だ。

「いえ、グラマンさんが彼らに毒を渡していないと辻褄が合わないんですよ。
 詰め所で騒ぎがあった後すぐにここに来たのに、グラマンさんは言いましたよね。
 『誘拐犯は死んだんだよね』と。
 早耳にもほどがありますよ。」

「オキス君が話したんじゃ無かったかね。」

「話していません。
 あなたが自分で毒を渡したから、死んだのだと簡単に察することが出来たんです。」

「ほぉ、面白い推理だね。」

「最後にルディンを連れ去ったのもあなたですね。
 ルディンの行方が分からなくなった後、魔法の痕跡はありませんでした。
 魔法を使わず、見つからずに連れ去る方法。
 詰め所からルディンがここへ来た時どこかへいったん隠してから、配達を装って馬車でルディンを運んだんです。」

「いや、逆だよ。君が来た後にルディン君がやってきたんだ。」

 グラマンさんが満面の笑顔を浮かべている。

「聡いとは思っていたがなかなか。
 さすがはオキス君、君の推理はだいたい合っているよ。
 ちなみに毒を飲んだ二人には、薬を渡すときこう言ったんだ。
 仮死状態になる薬だ、治療院に運び込んだ後逃げられるように準備するから明日飲めとね。」

「何故、魔術師に協力したんですか?」

「脅されたりとかはしておらんよ。
 単純な話だよ、カネだ。
 町を出て大きく商売をしようと思っていてね。
 その資金にしようと、色々とやっていた商売の一つだよ。
 今回の件で、必要な資金はまかなえた。
 もう会うこともないだろう、寂しくなるね。」

 そういうとグラマンさんは、カウンターからナイフを取り出す。

「ルディン君は実験材料にされてしまったんだろう、かわいそうに。
 寂しくないように君も連れて行ってあげよう。」

 僕は魔術回路の構成に入る。
 手元に賢者の杖は無い、しかしあの杖を手にしたことにより、新たな知識を得ることが出来た。
 杖のサポート無しでも、自分の能力の範囲内でだが、使える魔法が強化されている。
 グラマンさんは大人しく出頭する気が無いようだ。
 なら、やるしかない。

「精神系魔法強欲」

 僕はグラマンさんに魔法を発動した。
 グラマンさんの嘘くさい笑みがみるみる無くなっていく。

「金、金だ。
 こんな辛気くさい町に骨を埋めるなど考えられん。
 もっと大きな町で派手に儲けるんだ。
 魔族の伝手つてで禁制品も手に入る。
 これからデカクモウケラレル。
 カネカネカネカネ。
 オマエハジャマダ、ワタシノカネハヤラン、キエロキエロキエロ。」

 グラマンさんは魔術師でも冒険者でも何でも無い。
 だから精神防御など出来ない。
 素人相手限定ながら強化された僕の魔法で、賢者の杖のサポートが無くても短時間で効力を発揮されるようになった。

 グラマンさんが僕にナイフを振り下ろす。
 理性を失っている素人の攻撃なら躱すのは難しくない。
 僕は身を躱す。
 グラマンさんは勢いそのまま転倒する。
 机に体が当たり、机の上の袋が落ちる。
 中から金貨がこぼれた。

「カネカネカネ、モットモットアツメルンダ。
 モットモットモットモット。」

 グラマンさんはこぼれた金貨を袋に詰め込んでいる。
 その隙に僕は椅子を掴み上げ、グラマンさんの後頭部を何度も力の限り殴打する。
 グラマンさんは意識を失った。

「今回は珍しく助っ人が来なかったな。」

 僕はどうでもいいことを思った。




 素人相手無双。
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