魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

文字の大きさ
26 / 262
1章 幼き魂と賢者の杖

26 手当の手当が欲しい

しおりを挟む
 漆黒が暴発、否、収縮していく。
 そして消えた。

「え?」

 ここにいた誰もがあっけにとられた。

 後に残ったのは、魔術師が二つ。
 胴体と首が別々になっていたのだ。

 魔術師は突然倒され、魔法の暴走は回避された。
 そしてその先に見知った顔を見かけた。

「エリザさん!?」

 希望の家、洋裁担当のエリザさんは僕の方を見た。
 いつも通りの気難しい顔だ。

「師匠、お久しぶりです!」

 カイデウスさんが、喜びを含んだ声で言った。

「オキス、手当てしておやり。」

 エリザさんが賢者の杖を拾い上げ、僕に渡す。
 色々バレているんだろうな、杖を受け取りながらそう思った。

『やったぁ。
 勝ったぁ』

 杖を受け取った瞬間、『僕の中』から女の子の声が聞こえる。

『みんなの治療をしてあげようよ。』

 杖からルディンの声が聞こえる。
 ルディンは分かるけど、もう一人は誰?

 僕は杖を受け取る。
 回復魔法を出血の一番ひどいレイリスさんから順番に、一人一人かけて回る。

「お、おい。
 どういうことだ。」

 冒険者四人は驚きの声を上げて僕を見る。

「賢者の杖のおかげですよ。
 僕でも魔法が使えるようになるみたいです。」

 賢者の杖のおかげと言うことにした。
 まあ嘘では無い。
 杖が無ければ、まともに傷を回復させるような魔法は使えない。

 カイデウスさんが僕から杖をひったくると、かざしたり、回したり、振ったりした。

「・・・使えないぞ。」

 賢者の杖は魔術回路を編むのを補助するアイテムだ。
 だから魔法が使えない人間が手にしても意味が無いようだ。
 賢者の杖を僕に返す。
 僕がそれを受け取ろうとした瞬間、再び引ったくられた。

「どうも、みなさんこんにちは。
 俊影とオキス君以外は初めましてだね。」

 ローブの男が賢者の杖を持って立っていた。

「いやあ、面白いものを見せてもらったよ。
 俊影がいるから出てくるか迷ったんだけどね。
 こんなに面白いものを見せられたから、ちょっと顔を出したくなったんだ。」

 次の瞬間、ローブの魔族の腕が吹き飛ぶ。
 エリザさんが魔族に近づく、否、順序が逆だ、気配が追えない。
 賢者の杖を持った腕が宙を舞い、もう片方の手で魔族はなんとか杖をつかむ。

「うぎゃぁぁ、ちょっとタンマ、タンマ。
 この杖、魂が人間だから、人間しか使えないんだよ。」

 え、僕、使えたけど?
 使えないというのは魔族のハッタリなのか、使えたのはルディンのおかげなのか、
 魔族は素早く後退すると杖を腰に挿し、空いた手で床に転がっていた未完成の賢者の石をつかむ。

「俊影のラブコールはうれしいけど、僕はシャイでね。
 最近ずっと熱烈に追いかけ回してくれたしさ。
 挨拶も済んだことだしおいとまするよ。
 じゃあね。」

 魔族が手に持つ賢者の石が光り出す。
 激しい光の後、そこには返り血を浴びたエリザさんが立っていた。
 動きの順序が逆になるが、エリザさんが距離を詰めていたのだ。
 魔族はいない。
 先ほど吹き飛ばした腕だけが残されていた。
 おそらく深傷を負わせつつも、逃げられてしまったのだろう。
 
 エリザさんの武器が分からない。
 いつも着ている普通の服で、見た目は素手だ。
 攻撃方法も全く見えなかった。
 魔力も感じない・・・どころか気配も感じない。
 冒険者四人も強かったが、さらに次元が違う。
 とんでもない怪物と一緒に住んでいたらしい。

「杖は持って行かれたね。
 さあ帰るよ。」

 元冒険者、俊影のエリザは気難しそうな顔でそう言った。




 勘弁して欲しいけど、婆さん無双だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...