魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

文字の大きさ
90 / 262
4章 神の雷光と裏切りの花

91 離れ行く花

しおりを挟む
 試しの剣からカチッと言う音が聞こえる。
 途中でつっかえた・・・。
 僕は力一杯引き抜こうとしたけれど、そこまでだった。

「どうやら僕はここまでみたいです。」

 いったん試しの剣を大主教エストファーンに返却する。
 僕が勇者で無いことは確定した。
 ちょっと恥ずかしい。
 まあ大方の予想通りだったけれどね。
 ただ、ジキルまで失敗するような大番狂わせだけは勘弁してもらいたい。

「ではジキル殿。」

 大主教がジキルに試しの剣を渡す。
 そしてジキルは剣を抜いた。
 あっさりと。
 そして試しの剣から真っ白い光が放たれる。

「おお神よ、ご照覧あれ。
 地上に再び勇者が舞い降りましたぞ。」

 大主教が白い光に向けて手を掲げる。
 とても眩しく、暖かく、そして安心できる光だった。
 照覧しているかもしれない神は碌でなしなんだけどね。

 その光を無表情に見つめるリプリア。
 対して驚きと喜びの混ざったような表情をして見つめるパメラ。

 ついに勇者が誰なのか明らかになった。
 希望の家にいたときには考えもしなかった人物、勇者ジキルが誕生した。

 大主教は試しの剣を元の場所にしまい、僕達は部屋から外に出た。
 部屋の外ではリーフが待っていた。

「あの・・結果はどうでしたか?」

 リーフが聞いてくる。

「僕が勇者だったみたいだよ。」

 ジキルがそう答える。
 それを聞いたリーフが一瞬だけ嬉しそうな表情をし、すぐに深刻な表情になる。

「何かあったの?」

 様子がおかしいリーフにパメラが尋ねる。

「それが・・・エリッタさんが賢者の杖を持って出て行ってしまったんです。」

 リーフは落ち込んだ声でそう説明した。

「何だって?」

 僕は驚いた声を上げてしまった。
 まずい。
 所々でエリッタの様子がおかしかったのは気がついていた。
 しかしそういう行動に出てくるとは思わなかった。
 全くの想定外だ。

「これを・・・。」

 リーフは青い花を僕に差し出した。

「?」

 僕は突然差し出された花について一瞬理解できなかった。
 しかし思い出す。
 僕が以前エリッタのお見舞いに渡した花に似ていたのだ。

「エリッタさんがこれをオキス君にって。」

 僕は花を受け取った。
 リプリアと目が合う。
 指示を待っている目だ。
 僕はみんなに状況を伝える。

「エリッタは恐らくクルデウス師匠の指示で僕に同行していたんだ。
 多分そうだろうとは思っていたんだけど。
 僕が王国側と対立する可能性を考えて賢者の杖を持ち出したんだろう。」

 そして僕はリプリアに指示を出す。

「エリッタを見つけて賢者の杖の回収を。
 極力エリッタは傷つけないように。」

「承知しました。
 それでは失礼します。」

 リプリアはすぐに行動に移った。

「ルディン・・・。」

 ジキルが心配そうな表情で呟く。

「行動速度の速いエリッタに追いつくには、リプリア単独の方が都合がいい。
 恐らくエリッタは来た時と同じように、フェイベル王国経由でブリデイン王国に戻る事になるはず。
 僕も準備を整えて後から追いかけることにする。」

 そうジキル達に告げた。

「僕達も行くよ。
 もともと旅の目的はルディンを見つけることだったんだから。」

 ジキルはそう申し出た。

「ありがとう、助かるよ。」

 僕はその申し出を快諾した。
 そして魔王の息子と勇者のパーティーがここに誕生することになった。

 僕は残された花を見つめる。
 エリッタが僕を裏切ったのか、僕がエリッタを裏切ったのか。
 ふとそんなことを考えた。







 裏切り無双だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...