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終章 世界の終わりと創世の伝説
242 石のような意思
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僕は大主教の対面に座っている。
僕の隣にジェイエルが腰掛ける。
エリッタは座らず、僕の横に立っている。
そして初老のシスターがハーブティーを持ってきた。
「まさかレイネスの代表の方が、先代の勇者様や街を救った英雄殿と共にお越しくださるとは思いもしませんでした。
さあご遠慮なさらず、何なりとお尋ねください。」
エストファーン大主教が言う。
「単刀直入に伺います。
あなたは神の使徒ですか?」
僕は直球を投げた。
「いいえ。」
大主教は短く答えた。
ド直球で聞いたものの、これでハイという答えが返ってきたら逆に困惑してしまう。
馬鹿正直に答えるはずは無いだろう。
だから僕は大主教の挙動をつぶさに観察する。
今のところ、僕が窺い知れる範囲でこれと言った反応は無い。
「では、クルセイダーズを動かしている者の存在については?」
この聞き方には意味がある。
実は大主教に後ろ暗いところがあるのなら、答えるのが難しい質問なのだ。
「はい、存じております。」
大主教はこの質問にあっさりと答えた。
大主教はリーフと会っている。
知っていると答えが返っても、まだ具体的な判断が出来ない。
どういう意味で知っているかが問題なのだ。
そして迷わず知っているという回答を出してきた。
まったく動じた様子は無い。
「ケルガナーダ公国のクルセイダーズへ、補給物資を届けた件に関して関与していますか?」
メリクル神父が動いていると言うことは、大聖堂のだれかが関わっている可能性が高い。
そして命令できる立場というのを考えると、大主教が一番あやしい。
「はい。
私がメリクル神父に指示を出しました。」
あっさりと自白する大主教。
エリッタが身構える。
そして僕にも緊張が走る。
ジェイエルは黙ったまま動かない。
「それは帝国を裏切り、クルセイダーズを支援しているということですか?」
僕は大主教の真意を確かめる。
「私は帝国を裏切ったわけではありません。
帝国のことを考え、一番良いと思ったことを成したまでです。」
大主教の言葉から、硬い意思を感じる。
メリクル神父と同じだ。
ここで僕が何を言っても、説得することは無理だろう。
「正直に話していただけたことには感謝しますが、それがどういうことなのかお分かりですか?」
この話を僕が帝国に漏らせば、もちろん大主教は拘束されるだろう。
どのように裁かれるかは分からないが、タダでは済まないはずだ。
「もちろん分かっております。」
大主教が答える。
そこへ扉をノックする音が聞こえる。
そして一人の女が入ってくる。
エリッタが警戒を向ける。
ジェイエルは相変わらず黙ったまま反応を向けない。
「お話中失礼します。
大主教、準備が整いました。」
僕は女を凝視した。
知らない人だ。
知らない、しかし知っている。
昔、僕はこの人と一緒にいたことがある。
「セフリ・・・。」
僕は彼女の名前を呼んだ。
大主教は意思の硬さ無双だった。
僕の隣にジェイエルが腰掛ける。
エリッタは座らず、僕の横に立っている。
そして初老のシスターがハーブティーを持ってきた。
「まさかレイネスの代表の方が、先代の勇者様や街を救った英雄殿と共にお越しくださるとは思いもしませんでした。
さあご遠慮なさらず、何なりとお尋ねください。」
エストファーン大主教が言う。
「単刀直入に伺います。
あなたは神の使徒ですか?」
僕は直球を投げた。
「いいえ。」
大主教は短く答えた。
ド直球で聞いたものの、これでハイという答えが返ってきたら逆に困惑してしまう。
馬鹿正直に答えるはずは無いだろう。
だから僕は大主教の挙動をつぶさに観察する。
今のところ、僕が窺い知れる範囲でこれと言った反応は無い。
「では、クルセイダーズを動かしている者の存在については?」
この聞き方には意味がある。
実は大主教に後ろ暗いところがあるのなら、答えるのが難しい質問なのだ。
「はい、存じております。」
大主教はこの質問にあっさりと答えた。
大主教はリーフと会っている。
知っていると答えが返っても、まだ具体的な判断が出来ない。
どういう意味で知っているかが問題なのだ。
そして迷わず知っているという回答を出してきた。
まったく動じた様子は無い。
「ケルガナーダ公国のクルセイダーズへ、補給物資を届けた件に関して関与していますか?」
メリクル神父が動いていると言うことは、大聖堂のだれかが関わっている可能性が高い。
そして命令できる立場というのを考えると、大主教が一番あやしい。
「はい。
私がメリクル神父に指示を出しました。」
あっさりと自白する大主教。
エリッタが身構える。
そして僕にも緊張が走る。
ジェイエルは黙ったまま動かない。
「それは帝国を裏切り、クルセイダーズを支援しているということですか?」
僕は大主教の真意を確かめる。
「私は帝国を裏切ったわけではありません。
帝国のことを考え、一番良いと思ったことを成したまでです。」
大主教の言葉から、硬い意思を感じる。
メリクル神父と同じだ。
ここで僕が何を言っても、説得することは無理だろう。
「正直に話していただけたことには感謝しますが、それがどういうことなのかお分かりですか?」
この話を僕が帝国に漏らせば、もちろん大主教は拘束されるだろう。
どのように裁かれるかは分からないが、タダでは済まないはずだ。
「もちろん分かっております。」
大主教が答える。
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僕は女を凝視した。
知らない人だ。
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「セフリ・・・。」
僕は彼女の名前を呼んだ。
大主教は意思の硬さ無双だった。
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