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二章 じゃんじゃんグルグル第二層
29 火炎では何も買えん
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決死の突撃で大蜘蛛へ近づく。途中、もしかして隠匿を使って接近すれば良かったんじゃ無いかという考えが頭をよぎるも、やってしまったものは仕方が無い。
大蜘蛛は僕を認識した瞬間、お約束の糸を発射する。
「燃えろぉぉ、うぉぉぉぉ!」
僕はノズルの先から炎を放つ。糸は燃えたのか溶けたのかすら分からないほど一瞬で消滅する。そのまま火炎放射を木の枝にぶら下がっている大蜘蛛に浴びせる。炎に包まれる大蜘蛛。一秒、二秒、大蜘蛛は動きを止めて火だるまと化す。大蜘蛛のいた木の表面が熱によって色を変える。そして耐えきれなくなった大蜘蛛は、そもまま地面に落下した。
「燃え上がれぇぇ、燃え上がれぇぇ、燃え上がれぇぇ、ガっ・・・と危ない。これ以上は禁句だ。」
しばらくの間、地面に落下した大蜘蛛に火炎放射を続けたけれど、そろそろ頃合いかと炎を止める。プスプスと真っ黒に炭化した大蜘蛛。もしかしたら過剰にやり過ぎたかもしれない。そしていつものごとく蒸気のような物を発して消えていく大蜘蛛の魔物。
僕はドロップを回収した。今回のドロップの中に「焼き蜘蛛」が混ざっている。どこの部位だか分からないけれど、食べてみようか?いや、今はマズい。街に戻ったときに考えよう。
とにかく今回の勝利で確信した。これならどんな敵でも勝てる。敵が敵では無い。これが無敵というものだろうか?もしかしたら、このまま第十層まで一気に踏破出来るんじゃないだろうか?いやいや、慢心は禁物。まずは二層のボスを軽く蹴散らそう。
そしてボス部屋があると思われる方向へ歩き出した。途中、水辺にさしかかる。僕は辺りを確認する。いた・・・虎の魔物だ。既に気づかれている。この状態で隠匿を使っても無駄だ。隠匿はいったん視界から外れないと効果が発揮されないのだ。
大丈夫、僕には火炎放射器がある。タンクの中の残量もまだ十分にある。僕はノズルを虎に向けた。すると虎はそれを警戒し、サイドステップを見せる。僕がノズルの先を向けると、そこから外れるように移動するのだ。賢いなぁ、虎。
このまま突撃しても、躱されつつ反撃を受けるだろう。かといってこの場にとどまり、ひたすら狙いを定めても、警戒している状況では避けられてしまう。ならば相手の動きを限定する方法を使うしか無い。
僕はチラッと後方の安全を確認すると、虎との距離を離すように素早く後退した。それに合わせて、虎が僕を追ってくる。この場合、虎の動きは制限を受ける。虎は前に進まなければならないため、僕からの角度の取り方に限界が出てくるのだ。どんなに上手く動いても、おおむね180度程度。
そして僕は仕掛けた。火炎放射器を虎の周囲を薙ぎ払うように放ったのだ。拡散させたせいで、虎に炎を浴びせたのは一瞬だけだった。しかし心理的効果は絶大だった。炎を受けた虎は、驚きのあまり身体を転がす。すぐに立ち上がったものの、あまりの混乱に僕の位置を一瞬見失う。
僕は全力で距離を詰め、火炎を放射した。このとき僕はたぶん「ファイヤー」とか叫んでいた気がする。虎は再び転がりながら、炎を回避しようとする。僕はさらに距離を詰め、炎を浴びせる。虎は毛が焼け落ち、肉が焼け爛れ始めた。しかし今度は転がらなかった。炎に包まれながらも、必死に転身し泉の中へと逃れようとする。僕は躙(にじり)り寄りながら火炎放射を続ける。虎の魔物が泉へ向けて、一歩ずつ歩いて行く。そしてもう一歩というところでついに倒れた。
やったか?僕はいったん炎を止めた。しかし構えは崩さない。まだ動ける可能性があるからだ。油断はしない。
しばらく沈黙が続く。虎の魔物は動かない。そして蒸気のような物が発生し、核に変わる。僕はドロップを回収した。勝ったのだ。
そしてさらに奥へと進む。今回は丘のような地形は見えていないので、巨像が出現することは無いだろう。さすがにアレを火炎放射で倒せるとは思えない。だいぶ進んだところで草むらが途切れる。そこには苔むした巨大な扉があった。間違いなくボス部屋の扉だろう。
僕は扉を押した。「ゴゴゴゴゴ」という音を立てて開く。このレベルの扉になると、油を差しても静かにはならないだろう。そして控え室に到着した僕は、入ってきた扉を閉める。再び「ゴゴゴゴゴ」という音がする。
控え室の中で火炎放射器の具合をチェックする。特に異常は無い。
「さあ、第二層のフロアボスと対決だ。丸焼きにしてやんよ。」
僕はボス部屋の扉を開けた。
「・・・。」
状況を確認しよう。ボス部屋は湿地帯のようになっている。沼のように足が沈み込んだりはしないけれど、全体的に浅い水が張られている。そして部屋の中心には・・・大樹だ。もしかして今回のボスは植物系?
とにかくこうしていても仕方が無い。遮蔽物が無いので、とりあえず様子見の投石を行ってみる。ビュンと飛んでいく石。石はツルのような物がシュッと出て弾かれた。おぉぉぉ、植物系のお約束か。
まあいい、あんなツル、燃やしてしまえば良いのだ。僕は火炎放射器を構え、ゆっくりと近づいていく。ヒュっとツルが僕の方へ放たれる。火炎放射器で応戦。ツルはあっけなく燃え、攻撃力を失う。今回は余裕かもしれない。
そう思ったのもつかの間、巨大な植物から大量のツルが伸びる。凄まじい数だ。それが一気に僕の方へ向かってくる。それらをなんとか焼き払っていく。しかしいくら焼こうとも、次から次へと新しいツルが伸びてくる。キリが無い、これでは近づけない。恐らく本体部分を攻撃しないと無限にツルが涌いてくるのだろう。これでは倒せない。
これ以上無駄に戦ったら、灯油タンクが空になった時点で僕の負けが決定する。今回は仕方が無い。余裕のあるうちに撤退しよう。伸びてくるツルを焼き払いながら後退を開始する。僕はボス部屋控え室へ撤退した。
ええっと、アレは無理。倒しようが無い。頼みの綱の火炎放射器では近づけない。投石は弾かれる。ハバネロが効くとも思えない。動かないから撒菱も無意味。詰んだよ?
大蜘蛛は僕を認識した瞬間、お約束の糸を発射する。
「燃えろぉぉ、うぉぉぉぉ!」
僕はノズルの先から炎を放つ。糸は燃えたのか溶けたのかすら分からないほど一瞬で消滅する。そのまま火炎放射を木の枝にぶら下がっている大蜘蛛に浴びせる。炎に包まれる大蜘蛛。一秒、二秒、大蜘蛛は動きを止めて火だるまと化す。大蜘蛛のいた木の表面が熱によって色を変える。そして耐えきれなくなった大蜘蛛は、そもまま地面に落下した。
「燃え上がれぇぇ、燃え上がれぇぇ、燃え上がれぇぇ、ガっ・・・と危ない。これ以上は禁句だ。」
しばらくの間、地面に落下した大蜘蛛に火炎放射を続けたけれど、そろそろ頃合いかと炎を止める。プスプスと真っ黒に炭化した大蜘蛛。もしかしたら過剰にやり過ぎたかもしれない。そしていつものごとく蒸気のような物を発して消えていく大蜘蛛の魔物。
僕はドロップを回収した。今回のドロップの中に「焼き蜘蛛」が混ざっている。どこの部位だか分からないけれど、食べてみようか?いや、今はマズい。街に戻ったときに考えよう。
とにかく今回の勝利で確信した。これならどんな敵でも勝てる。敵が敵では無い。これが無敵というものだろうか?もしかしたら、このまま第十層まで一気に踏破出来るんじゃないだろうか?いやいや、慢心は禁物。まずは二層のボスを軽く蹴散らそう。
そしてボス部屋があると思われる方向へ歩き出した。途中、水辺にさしかかる。僕は辺りを確認する。いた・・・虎の魔物だ。既に気づかれている。この状態で隠匿を使っても無駄だ。隠匿はいったん視界から外れないと効果が発揮されないのだ。
大丈夫、僕には火炎放射器がある。タンクの中の残量もまだ十分にある。僕はノズルを虎に向けた。すると虎はそれを警戒し、サイドステップを見せる。僕がノズルの先を向けると、そこから外れるように移動するのだ。賢いなぁ、虎。
このまま突撃しても、躱されつつ反撃を受けるだろう。かといってこの場にとどまり、ひたすら狙いを定めても、警戒している状況では避けられてしまう。ならば相手の動きを限定する方法を使うしか無い。
僕はチラッと後方の安全を確認すると、虎との距離を離すように素早く後退した。それに合わせて、虎が僕を追ってくる。この場合、虎の動きは制限を受ける。虎は前に進まなければならないため、僕からの角度の取り方に限界が出てくるのだ。どんなに上手く動いても、おおむね180度程度。
そして僕は仕掛けた。火炎放射器を虎の周囲を薙ぎ払うように放ったのだ。拡散させたせいで、虎に炎を浴びせたのは一瞬だけだった。しかし心理的効果は絶大だった。炎を受けた虎は、驚きのあまり身体を転がす。すぐに立ち上がったものの、あまりの混乱に僕の位置を一瞬見失う。
僕は全力で距離を詰め、火炎を放射した。このとき僕はたぶん「ファイヤー」とか叫んでいた気がする。虎は再び転がりながら、炎を回避しようとする。僕はさらに距離を詰め、炎を浴びせる。虎は毛が焼け落ち、肉が焼け爛れ始めた。しかし今度は転がらなかった。炎に包まれながらも、必死に転身し泉の中へと逃れようとする。僕は躙(にじり)り寄りながら火炎放射を続ける。虎の魔物が泉へ向けて、一歩ずつ歩いて行く。そしてもう一歩というところでついに倒れた。
やったか?僕はいったん炎を止めた。しかし構えは崩さない。まだ動ける可能性があるからだ。油断はしない。
しばらく沈黙が続く。虎の魔物は動かない。そして蒸気のような物が発生し、核に変わる。僕はドロップを回収した。勝ったのだ。
そしてさらに奥へと進む。今回は丘のような地形は見えていないので、巨像が出現することは無いだろう。さすがにアレを火炎放射で倒せるとは思えない。だいぶ進んだところで草むらが途切れる。そこには苔むした巨大な扉があった。間違いなくボス部屋の扉だろう。
僕は扉を押した。「ゴゴゴゴゴ」という音を立てて開く。このレベルの扉になると、油を差しても静かにはならないだろう。そして控え室に到着した僕は、入ってきた扉を閉める。再び「ゴゴゴゴゴ」という音がする。
控え室の中で火炎放射器の具合をチェックする。特に異常は無い。
「さあ、第二層のフロアボスと対決だ。丸焼きにしてやんよ。」
僕はボス部屋の扉を開けた。
「・・・。」
状況を確認しよう。ボス部屋は湿地帯のようになっている。沼のように足が沈み込んだりはしないけれど、全体的に浅い水が張られている。そして部屋の中心には・・・大樹だ。もしかして今回のボスは植物系?
とにかくこうしていても仕方が無い。遮蔽物が無いので、とりあえず様子見の投石を行ってみる。ビュンと飛んでいく石。石はツルのような物がシュッと出て弾かれた。おぉぉぉ、植物系のお約束か。
まあいい、あんなツル、燃やしてしまえば良いのだ。僕は火炎放射器を構え、ゆっくりと近づいていく。ヒュっとツルが僕の方へ放たれる。火炎放射器で応戦。ツルはあっけなく燃え、攻撃力を失う。今回は余裕かもしれない。
そう思ったのもつかの間、巨大な植物から大量のツルが伸びる。凄まじい数だ。それが一気に僕の方へ向かってくる。それらをなんとか焼き払っていく。しかしいくら焼こうとも、次から次へと新しいツルが伸びてくる。キリが無い、これでは近づけない。恐らく本体部分を攻撃しないと無限にツルが涌いてくるのだろう。これでは倒せない。
これ以上無駄に戦ったら、灯油タンクが空になった時点で僕の負けが決定する。今回は仕方が無い。余裕のあるうちに撤退しよう。伸びてくるツルを焼き払いながら後退を開始する。僕はボス部屋控え室へ撤退した。
ええっと、アレは無理。倒しようが無い。頼みの綱の火炎放射器では近づけない。投石は弾かれる。ハバネロが効くとも思えない。動かないから撒菱も無意味。詰んだよ?
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