能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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七章 遺跡と迷宮、第七層

139 刀が無くても勝ったな

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 私の名前はリコッテ。ボリハ村出身の魔術師。ご先祖様は大賢者リコリースという高名な人物のようだ。私にとってそれはどうでもいい。ただ、光と闇の魔法能力を受け継いだのは正直ありがたいことではある。

 私の目的はアフタと話をすること。もうダンジョン踏破とか、そんなことは関係ない。

 そのために邪魔な物を退(の)けなければならない。第三層のボス、スカルドラゴン。強力な対魔法防御を誇り、物理体勢も高い。さらに空中から攻撃を仕掛けてくるため、遠距離攻撃が必須だ。

 パーティーメンバーはカンゾウとサルミアキ。ただし二人は基本的に戦闘には参加しない。第三層程度で助けを借りていたら、この先を進むことなど不可能だからだ。そして私は遠距離攻撃に縛りを入れている。遠距離攻撃を必須とする相手を近距離攻撃のみで倒さなければならない。

 既に私の身体は光の魔法による速度向上が行われている。一瞬で間合いを詰めることは容易い。ただしこの魔法は良いことばかりでは無い。停止する場所を間違えれば、敵や障害物に衝突して多大なダメージを負ったり、逆に無防備な状態を晒して攻撃を受ける可能性があるのだ。

 翼を広げ飛び上がり、私に狙いを定めるスカルドラゴン。私は光の魔法の補助で空中を駆け抜けて、スカルドラゴンの翼の前に移動した。翼といっても骨しか無い。これでどうやって浮いているのかはよく分からない。その骨に向けて闇魔法の力を込めたアダマンタイトの杖をたたき込む。闇の力が骨に乗り移っていく。

 空中で一瞬だけ停止状態になった私は、そのまま床に向けて落ちていく。前転ローリングで衝撃を分散し、受け身をとる。先ほどの攻撃でスカルドラゴンの片翼は、三分の一が劣化によって崩壊しつつある。たまらず地上に降りてくるスカルドラゴン。初撃で機動力の大半を奪った形だ。

 すぐさま「く」の字を描きつつ、スカルドラゴンの後ろを取る。光魔法のエンチャントがかかった状態で行うこの動きは、身体がバラバラになりそうな衝撃を受ける。だから多用はできない。

 私の動きに付いてこられず目標を見失ったスカルドラゴン。その間に杖に光魔法をチャージしていく。そしてゼロ距離から放つ光の飽和。尾っぽの付け根から背骨にかけてが光に飲み込まれ、そしてそれ自体も新たな光に変わる。スカルドラゴンの骨ばかりの中身が消滅する。

 動きを止めるスカルドラゴン。しばらくの静寂の後、ボロボロと身体が崩れ去り始める。

「ハァァァ、テイ!」

 カンゾウがトドメとばかりにスカルドラゴンの頭部へ斬撃を放つ。頭部の骨はぱっくりと割れ、そして何かがカンゾウの持つ刀へと吸い込まれていく。そしてスカルドラゴンは消滅した。残ったのは核(コア)のみだ。ドロップは無い。

 カンゾウの顔を見る。目の下にクマができているような気がする。あの胡散臭い男からもらった刀を使い出してから彼の顔色が悪い。

「終わりましたな。」
「そうね。ところで顔色が悪いけど、大丈夫なの?」
「全くもって問題ありません。力が有り余って仕方が無いほどです。腕の方もすっかり元通り。」

 カンゾウが刀を振るう。その瞬間、床がバックリと裂ける。

「ならいいんだけど・・・。」
 私はサルミアキの方を見た。このとき彼女は無表情だった。特に何も言わないけれど、カンゾウのあの状態をどう思っているんだろう?

 そしてボス部屋の宝箱が出現し、第四層へ向かうための階段が出現する。私は二人に宝箱の中身の回収を指示した。

「このまま第四層に下りたいのだけど問題は無いわよね。」
「はい。ですが、第四層のボスと戦う前にいったん始発の町に戻る必要があります。」
「例の鏡ね。」

 第四層のボスはマキシアム。強力な光線を放つ魔物らしい。そしてその光線を跳ね返す為に、魔法の鏡が必要なのだ。材料は第四層のジャンクと呼ばれる魔物達から手に入れることができる。

 面倒ではあるけれど、ボス部屋の場所が第四層に入ってすぐ裏手にあるということを考えると、どっこいどっこいというところだろうか。

 ちなみにアフタは既に第五層以降にいると思われる。理由は彼が使役していたのが、第五層系の魔物だったからだ。剣も魔法もまともに使えるとは思えないアフタが、第五層までたどり着いていることに驚きを禁じ得ない。さっきのスカルドラゴンも、カッチェに話によればたった一人で討伐しているのだ。しかしカッチェの話を聞いても、アフタがどうやってスカルドラゴンを倒したのか、私にはさっぱり理解できなかった。

 剣と魔法が使えなくても、彼の知識はとんでもない物だというのは理解できる。村にいた頃、私は彼をちょっとした発明家だとしか思っていなかった。しかしそれは思い違いだ。もしかしたら、あのサドンでさえも超える力を・・・アフタは持っている。
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