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九章 魔境の森だよ、第九層
175 あんなところにアンテナがあってな
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状況は悪い。サドンはブツブツ呟きながらフラフラしている。スコヴィルはさっきから惚けた顔で「うふふふふ」と笑っている。ブレアはさっきから僕の手を離そうとしない。
第八層のボスは結局、姿を見ること無く倒した・・・ようだ。いつも通り宝箱と階段が出現している。しかし今回の戦いでの被害は過去最大級だ。パーティーが壊滅寸前と言って良いほどにボコボコにされた。
「ええっと・・・これ以上の探索は無理みたい。とりあえず宝箱の中身を回収して、いったん創世の街に戻ろう。ギデアの容態も気になるし。」
「そうね。アイテムは私が回収してくるから休んでいて。」
ブレアがようやく僕の手を離した。ふと、自分の手が氷のように冷たくなっているのに気がついた。僕も相当に精神を削られているらしい。このまま第九層に突入するのは自殺行為だ。
「回収は終わった。戻りましょう。」
「えっと・・・僕はサドンを連れて行くから、ブレアはスコヴィルをお願い。」
精神崩壊を起こしている二人を連れてボス部屋の螺旋階段を降りていく。なんとか第九層の入り口付近まで移動した。ここまで来た理由は、僕の持っている階層移動アイテムが入り口付近でしか発動しないからだ。
僕は入り口からちょっとだけ第九層の様子を覗き込んだ。そこは薄暗く、怪しい植物がたくさん生えているフィールドだ。そして何か動くモノが大量に見えた。怖いのですぐに離れたけれど、たぶんアレはおびただしい数の魔物の群れだ。怖すぎる。
とにかく今は街に戻ろう。僕は転移アイテムを発動させる。そして第三層の入り口に転移した後、創世の街にマーキングした転移アイテムを乗り継いで久々に街に帰ってきた。
「はい、こっちだよ。」
僕は老人介護をしているような錯覚を感じた。しかし僕が手を引いているのは壊れたサドンだ。ブレアが連れているスコヴィルも相変わらず引き締まらない顔で笑っている。まさかこんな形で追い込まれるとは、想像など出来るはずが無い。
そして僕達は街の中に入った。
「うぇぇぇぇぇ?」
街の中で僕が最初に発したのは、言葉にすらならない声だった。時計塔を中心として、周囲に巨大な建造物がそびえ立っていた。一体何をするものなのか全く想像がつかない。見方によっては、巨大なパラボラアンテナに見えなくも無い。
僕はブレアの方を見た。彼女は建造物に対して興味を示していないようだ。
「また増えてる。」
そんな一言だけだった。
アレは後で確認するとしてとにかく治療院へ向かおう。ギデアのことも気になるし、サドンとスコヴィルを何とかしないといけない。僕達が治療院へ到着すると、そこには天魔ギルダインがいた。
「ギデアなら命は取り留めた。しかし意識は戻っていない。」
ブレアが聞こうとしたことを先に察して、早々に情報を教えてくれた。
「意識はちゃんと戻るの?」
「ああ、大丈夫。今は心臓を馴染ませるために、生命活動を最小限に抑えている状態だ。経過は順調だから必ず意識は戻る。それと、今は治療が行われているから面会は出来ない。」
「そう・・・良かった。」
ギルダインの言葉に、ホッとした表情を浮かべるブレア。もしかしてブレアの様子がおかしかったのは、サドンがキモいから以上に、ずっとギデアのことを気にしていたからだろうか?
「ところでそちらの二人はどうしたんだ?」
ギルダインが発狂中のサドンとスコヴィルを見て言った。
「後で説明します。とにかくいったん二人を診察してもらいます。」
僕はそう答えると、治療院の受付に二人を連れて行った。元に戻るかな、この二人?
第八層のボスは結局、姿を見ること無く倒した・・・ようだ。いつも通り宝箱と階段が出現している。しかし今回の戦いでの被害は過去最大級だ。パーティーが壊滅寸前と言って良いほどにボコボコにされた。
「ええっと・・・これ以上の探索は無理みたい。とりあえず宝箱の中身を回収して、いったん創世の街に戻ろう。ギデアの容態も気になるし。」
「そうね。アイテムは私が回収してくるから休んでいて。」
ブレアがようやく僕の手を離した。ふと、自分の手が氷のように冷たくなっているのに気がついた。僕も相当に精神を削られているらしい。このまま第九層に突入するのは自殺行為だ。
「回収は終わった。戻りましょう。」
「えっと・・・僕はサドンを連れて行くから、ブレアはスコヴィルをお願い。」
精神崩壊を起こしている二人を連れてボス部屋の螺旋階段を降りていく。なんとか第九層の入り口付近まで移動した。ここまで来た理由は、僕の持っている階層移動アイテムが入り口付近でしか発動しないからだ。
僕は入り口からちょっとだけ第九層の様子を覗き込んだ。そこは薄暗く、怪しい植物がたくさん生えているフィールドだ。そして何か動くモノが大量に見えた。怖いのですぐに離れたけれど、たぶんアレはおびただしい数の魔物の群れだ。怖すぎる。
とにかく今は街に戻ろう。僕は転移アイテムを発動させる。そして第三層の入り口に転移した後、創世の街にマーキングした転移アイテムを乗り継いで久々に街に帰ってきた。
「はい、こっちだよ。」
僕は老人介護をしているような錯覚を感じた。しかし僕が手を引いているのは壊れたサドンだ。ブレアが連れているスコヴィルも相変わらず引き締まらない顔で笑っている。まさかこんな形で追い込まれるとは、想像など出来るはずが無い。
そして僕達は街の中に入った。
「うぇぇぇぇぇ?」
街の中で僕が最初に発したのは、言葉にすらならない声だった。時計塔を中心として、周囲に巨大な建造物がそびえ立っていた。一体何をするものなのか全く想像がつかない。見方によっては、巨大なパラボラアンテナに見えなくも無い。
僕はブレアの方を見た。彼女は建造物に対して興味を示していないようだ。
「また増えてる。」
そんな一言だけだった。
アレは後で確認するとしてとにかく治療院へ向かおう。ギデアのことも気になるし、サドンとスコヴィルを何とかしないといけない。僕達が治療院へ到着すると、そこには天魔ギルダインがいた。
「ギデアなら命は取り留めた。しかし意識は戻っていない。」
ブレアが聞こうとしたことを先に察して、早々に情報を教えてくれた。
「意識はちゃんと戻るの?」
「ああ、大丈夫。今は心臓を馴染ませるために、生命活動を最小限に抑えている状態だ。経過は順調だから必ず意識は戻る。それと、今は治療が行われているから面会は出来ない。」
「そう・・・良かった。」
ギルダインの言葉に、ホッとした表情を浮かべるブレア。もしかしてブレアの様子がおかしかったのは、サドンがキモいから以上に、ずっとギデアのことを気にしていたからだろうか?
「ところでそちらの二人はどうしたんだ?」
ギルダインが発狂中のサドンとスコヴィルを見て言った。
「後で説明します。とにかくいったん二人を診察してもらいます。」
僕はそう答えると、治療院の受付に二人を連れて行った。元に戻るかな、この二人?
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