異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた

ふぉ

文字の大きさ
3 / 52
本編 魔神の誕生と滅びの帝都

3 ニクジュウハチって肉がジュウとしてパチと焼けて旨そうだよね

しおりを挟む
 俺がこの世界に召喚された直後の話をしよう。

 俺は命と引き替えに召喚されたのだろう。
 周りを見渡す。
 人、人、人。
 賑やかなところだ。
 みんな色鮮やかな民族衣装に身を包んでいる。
 そして俺をチラチラ見ながら通り過ぎていく。

 目にとまったのは建物の重心をきちんと考えた設計美だ。
 なかなかの建築家がいそうな素晴らしい世界だ。

「おい、俺を召喚した奴はどこだ?」

 叫んでみた。
 通行人がぎょっとした顔で俺を見る。
 無関係な奴はどうでもいいんだ。
 おい、用があって呼び出したんじゃ無いのか?

 俺は地べたに座り込む。
 そして通行人を観察する。
 時々俺をチラ見するが、特に害意を持って接する奴はいない。

 通行人の会話に耳を立てる。
 聞き取れない。
 何を言っているのかさっぱり分からない。
 ニュアンス的にはドイツ語か。
 しかし知っている単語が一つも無い。

 とっかかりが無い。
 俺は通りの反対側で営業している露店を観察した。
 串肉を販売している。
 旨そうだ。
 店主と客の会話、指の動き、やりとりされる貨幣。
 客の数を30人数える頃には通貨の種類と単位、数に関する言葉を理解した。

 辺りの露天を改めて見渡す。
 所々に書かれている文字の中ある数字が俺の頭に記憶される。
 数を表す文字に関しても理解できた。
 この国の数字には規則性がある。
 理解するのは簡単だった。

 人間は会話をするのなら、言葉など必要ない。
 身振り手振りで十分だ。
 そして数さえ分かっていれば損はしない。

 周囲を観察して暇つぶしをしてみたけれど、俺を召喚した奴は現れない。
 暇だ。

 俺は地面の砂をつかみ取ると、道に蒔いた。
 定数を設定しテレキネシスでフラクタルを組みあげる。
 広がっていく幾何学模様。
 普通だったら人前でテレキネシスなど使わないのだが、既に超常現象の中にいる。
 気にするだけ無駄だ。

 俺はどんどん砂を追加してフラクタルを広げていく。
 規則性のある模様のなんと美しいこと。
 俺は夢中で暇つぶしに没頭した。

 ところが俺の芸術に珍入者が舞い降りる。
 百を表す貨幣だ。
 通行人が足を止めて、俺の作品を眺めている。
 そして一人、また一人とコインを投げ入れる。
 ここは賽銭箱じゃねえぞ。

 どうやら俺は芸人か何かと思われているようだ。
 この国の人間にとって俺は変な服装をしている見慣れぬ顔の外国人だ。
 珍妙な芸を披露していると思われても不思議は無い。

 俺はいったんコインを手に取ると、幾何学模様の上をテレキネシスで規則的に動かした。
 人だかりが増える。
 それに伴ってどんどんコインが集まる。
 儲かりまっせ。

 よく分からないうちに俺は、串肉を55個買えるほどの金額を手にすることが出来た。
 よし、状況は悪くない。
 食いっぱぐれることは無いぞ。

 いつまで経っても俺を召喚した奴は現れないが、些細なことは気にしない。
 召喚には応じたが、その後に何をするかは約束していない。
 自由にやらせてもらうことにしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...