異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた

ふぉ

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本編 魔神の誕生と滅びの帝都

43 魔物達から守るもの

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「そろそろ頃合いか。」

 俺は言った。
 エスフェリアとアグレスは、かなり体調が悪そうだ。
 魔王の精神魔法の影響をかなり受けてしまっている。
 俺は全くといっていいほど影響が出ていないので、どれほどヤバいのか感じ取ることが出来ない。

「帝都の東の門を抜け、クミシュ砦に向かいます。」

 エスフェリアが言った。
 俺たちは東の門へ向けて建物を出る。
 この建物は街を練り回っていたときに気になっていた建物だ。
 宮殿からの脱出通路の出口として、隠し部屋が設けられていたのだ。

 街の中は地獄と化していた。
 泡を吹いて倒れている避難しなかった町民、叫び声を上げながら何も無いところで剣を振る兵士。
 地面を這いずりながら助けてと繰り返し呟く人もいた。
 残念ながらそれらの人を助けることは出来ない。
 現時点において、俺たちは無力だ。
 エスフェリアが悔しそうな顔をする。

「今度こそ必ず帝都トレンテを取り戻します。
 そのために・・・必ず戻ってきます。
 過去では無く未来に。」

 エスフェリアは自分に誓っているようだ。
 俺はいつまで彼女の手伝いをするのだろう?
 安全な場所へ連れて行けば、俺の仕事は終わりでは無いのか?
 ここを取り戻す手伝いまではする義理は無いだろう。

 ・・・。
 結論は出ない。
 とにかく脱出だ。

 もはや東の門は防衛施設としての機能を失っていた。
 警備する兵士達がまともに活動できない状態となっているからだ。
 中にはまだ正気を失っていない者もいるが、仲間の介抱で俺たちを気に留めている状況では無い。

 俺たちはそのまま街の外へ出る。
 魔領は西側にある。
 そのため、戦いも西側が主戦場のはずだ。
 俺はそう思っていたが、世の中そんなに甘くは無かった。
 異様な気配を漂わせる魔物の群れが、出口を包囲するように展開している。 

「あれはなんだ?」

「ゴブリンやオークの群れです。
 おそらく元々帝国に潜んでいた者達でしょう。
 ただ、今までの周回では、ここに到達するのはもっと後のはずでした。」

 エスフェリアが言った。

「あれを突破しないとデッドエンドなんだよな。
 だったらやるしか無い。」

 敵は俺の視覚で確認できる範囲で220。
 俺は疑似魔術回路を構成する。
 そして俺たちは魔物達に近づいていく。
 当然、魔物達は俺たちに気がついていたが、特に何もしてくる気配が無い。
 一歩、また一歩、近づいていく。
 
 魔物達の心理としてはこうだろう。
 弱そうな人間が三人、歩いて自分たちに近づいてくる。
 武装もしていない。
 いちいち陣形を崩して対処するまでも無い。
 手の届く範囲に来たら殺せばいいだろうと。

 そして一番近い魔物との距離は10メートルに達した。
 さすがにこれだけ近づくと、魔物達も対処しようという動きを見せる。
 オークが一匹、斧を携えて俺たちに接近してきた。

 エスフェリアとアグレスは俺の後ろに回ってもらっている。
 そして俺は光魔法を発動させる。
 多重強化した光魔法はレーザーと化し、俺を中心として水平120度を右から左になぎ払った。

 俺たちに最も接近していたオークの体が真っ二つに割れる。
 もちろん10メートル先にいた魔物達も、先頭にいた奴らは同じ末路を辿った。
 しかし、さすがにダメージを与えるのは二列目程度が限界だった。

 いきなりの攻撃にまだ反応できない魔物達。
 俺はさらに光魔法を発動させ、今度は左から右になぎ払った。
 さらに魔物の体が裂けていく。
 今ので80は戦闘不能に出来たはずだ。

 俺の2回目の攻撃が終わったところで、何か叫び声のようなものが聞こえた。
 するとオーク達が直列の陣形を組んで突っ込んできた。
 なぎ払い対策で攻撃を受ける部分を減らそうというのだろう。
 誰が命令したのか分からないが、論理的に考えて魔物を指揮する奴がいるということなのだろう。
 そしてマズいことに後方でゴブリンが弓を番えている。

 おれはエスフェリアの顔を見る。
 この状況にあって、まったく恐怖を感じていないようだ。
 たぶん今までの経験則から、俺がなんとかすると確信しているのだろう。
 仕方ない、期待に応えておこう。

 俺は再び光魔法の疑似魔術回路を構成する。
 今度は薙ぎ払わない。
 全力で真っ正面に投入だ。

 俺はありったけの強化魔法を魔術回路に組み込む。
 魔力を感知できない俺でも分かるほど、風を巻き起こしながら辺りの魔素を吸収していく。
 オーク達は目前だ。
 血を吸って使い込まれた斧の模様がよく見える。
 このままいくと一秒後には俺の頭はスイカ割りの残骸のようになっているだろう。

 俺は魔法を放つ。

「目をつむれ。」

 俺は後ろの二人に叫んだ。
 前回の失敗から、俺も目を瞑った。
 この期に及んでこれ以上できることは無い。

 光の魔法を使ったはずなのに、吹き飛ばされそうな空気の圧力を感じる。
 倒れないように必死に堪える。
 俺の頭はまだ割られたスイカにはなっていないようだ。
 そして俺は目を開いた。
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