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またすぐに会えるから
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2011年3月11日、東日本大震災により、福島第一原子力発電所は事故を起こした。
私は、その原発事故のあった町に住んでいた。
事故により、放射能を巻き散らかすこととなった原発から逃れる為、着の身着のまま避難を余儀なくされた。
私の故郷にあった実家では、東日本大震災により原発事故が起こるまでに、当時二匹の犬を飼っていた。
私たちは、震災が起こった3月11日の夜に、町の中学校の側にある大きな体育館に一度避難した。
その時には、犬を二匹とも車に乗せて来ていたのだ。
一匹は人懐っこいスピッツ。
もう一匹はもう結構な老犬になっていたマメシバだ。
夜遅くに、人一人に対して一枚だけ食パンが配られ、私はそれを半分ずつ犬たちに裂くと、分け与えていた。
そして、真夜中に道路が空いている間に一旦家へと戻り、犬たちをそれぞれの小屋の鎖と首輪に繋ぎ直すと、自分たちは車の中で寝ることにした。
ベッドには色々な物や割れたガラスなどが散乱しており、すぐに片付けられるような状況ではなかったのと、窓がズレてしまっており部屋には隙間風が入ってくるような状況だった為だ。
そして3月12日の朝、とても良い天気だったのを覚えている。
車の窓をコンコンと叩かれる音で目が覚めた。
そこに居たのは消防団の羽織を着た男性で、「避難してください」と私に言った。
私は「津波がここまで来るんですか?」と聞いたと思う。
そうしたらその人は困った顔をして、「原発だよ」とそう一言答えて他の家の人へも避難を知らせる為にすぐに行ってしまった。
詳しいことは何も教えられていなかったが、私たち家族はこの町から離れなければならないらしかった。
父は「きっとすぐに戻って来れるから」と言って、犬たちを車には乗せなかった。
この時はまだ、すぐに、そう、犬たちがお腹を空かせて苦しむ前には、戻って来れるだろうと思っていたのだろう。
二、三日分の食料を、それぞれの飼い犬の犬小屋近くにある餌用の器に入れると、私たちは、両親と、私、と別々に分かれ、車二台で家を出た。
別れの時、私は最後に、一匹ずつ順番に犬を抱き締めた。
「待っていてね」
どうか待っていてね、と。
また会えるから。
私は、その原発事故のあった町に住んでいた。
事故により、放射能を巻き散らかすこととなった原発から逃れる為、着の身着のまま避難を余儀なくされた。
私の故郷にあった実家では、東日本大震災により原発事故が起こるまでに、当時二匹の犬を飼っていた。
私たちは、震災が起こった3月11日の夜に、町の中学校の側にある大きな体育館に一度避難した。
その時には、犬を二匹とも車に乗せて来ていたのだ。
一匹は人懐っこいスピッツ。
もう一匹はもう結構な老犬になっていたマメシバだ。
夜遅くに、人一人に対して一枚だけ食パンが配られ、私はそれを半分ずつ犬たちに裂くと、分け与えていた。
そして、真夜中に道路が空いている間に一旦家へと戻り、犬たちをそれぞれの小屋の鎖と首輪に繋ぎ直すと、自分たちは車の中で寝ることにした。
ベッドには色々な物や割れたガラスなどが散乱しており、すぐに片付けられるような状況ではなかったのと、窓がズレてしまっており部屋には隙間風が入ってくるような状況だった為だ。
そして3月12日の朝、とても良い天気だったのを覚えている。
車の窓をコンコンと叩かれる音で目が覚めた。
そこに居たのは消防団の羽織を着た男性で、「避難してください」と私に言った。
私は「津波がここまで来るんですか?」と聞いたと思う。
そうしたらその人は困った顔をして、「原発だよ」とそう一言答えて他の家の人へも避難を知らせる為にすぐに行ってしまった。
詳しいことは何も教えられていなかったが、私たち家族はこの町から離れなければならないらしかった。
父は「きっとすぐに戻って来れるから」と言って、犬たちを車には乗せなかった。
この時はまだ、すぐに、そう、犬たちがお腹を空かせて苦しむ前には、戻って来れるだろうと思っていたのだろう。
二、三日分の食料を、それぞれの飼い犬の犬小屋近くにある餌用の器に入れると、私たちは、両親と、私、と別々に分かれ、車二台で家を出た。
別れの時、私は最後に、一匹ずつ順番に犬を抱き締めた。
「待っていてね」
どうか待っていてね、と。
また会えるから。
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