もう会えないの

うた子

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おかえりなさい!

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そうして、私たちは町から離れ、途中で避難を誘導している方に「ここに行って下さい」と告げられたとある田舎の山の中にある廃校へと避難することになったのだ。

そう、最初の父の思惑通りには行かず、私たちはすぐに家に帰ることは出来ない状態となった。

避難した廃校で、原発が爆発したことを知り、数日後には親戚を頼って、借りることが出来ると言う平屋へとうつる為、車で移動した。

その親せきのおばあさんが亡くなるまで住んでいたと言う、小さな平屋を、どこか行くところが見つかるまでは使っても良いと言って頂くことが出来て、そこでは今度は数か月の長い間を過ごすこととなる。

その間の出来事。
父は故郷である町に一旦仕事をする為に戻った。
仕事を、と言うか、原発で働いていた友人や、自分の仕事仲間と連絡を取り合っていて、原発をなんとかする為に、健康を害するかもしれない恐れのあるあの場所へ、爆発して放射能を巻き散らかしている原発へと向かったのだ。

私は、父を尊敬した。
暴走した原発をなんとかする為に、故郷を守る為に、父はあの場所へと向かったのだ。

残された祖母、母、私の三人は、親戚から借りることが出来たその平屋に滞在したままの状態で日々をなんとか暮らしていた。
父は、しばらく帰って来なかった。
しばらく、と言うか、結構長い間帰って来なかった。

数か月、父はほぼ音信不通だった。

私は父を心配し、犬たちの無事を祈っていた。
どうか父が、とても過酷な環境の中で働いているとしても、それでもせめて、家に寄って、犬たちに食べ物を届けてあげていますように、と願った。

そうして何日も何日も何日も経った頃、しばらくぶりに父が私たちの仮住まいであるその平屋に戻って来た。

家で飼っていた二匹のうちの、若い方の犬である、白いふわふわの毛が薄汚れて灰色へと変化してしまっていた、スピッツの方だけを連れて。

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