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どうしていないの?
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スピッツはガリガリに痩せていた。
真っ白だった毛並みもドロドロに汚れて灰色や土の茶色で、もはや白い犬には見えなかった。
それでも、人懐っこいところは何も変わらず、私と母の姿を、家族の姿を見ると、物凄く喜んで所々が泥で固まってしまっている、ふさふさのしっぽをちぎれんばかりに振って、ジャンプしてくるくるとその場で回り全身で再会出来た歓喜の気持ちを表現してくれた。
母はすぐに近くのスーパーへ行くと、犬用のオヤツを大量に購入して来て、さっそくそのスピッツに与えて、ほとんど水しか出ないお風呂のシャワーを出し、洗ってやる準備をはじめた。
もちろん犬用のシャンプーなどないので、人間用のシャンプーだが、それでも灰色で土まみれよりは良いだろう。
「良かった、元気だったんだね、可愛いね、会いたかった」
私はスピッツを抱きしめた。
汚れていると言うことなんて、どうでも良かった。
ねえ、でも、おかしいよ。
だって、年老いた方のマメシバは?
私が幼い頃からずっと一緒に暮らして来た、あの、もうくだびれて、散歩の最中に突然失神してぶっ倒れたりしていた、病を持っていた方のマメシバは?
病院に通って、確かに白内障と既に治らない病におかされていると言うことは聞かされてはいたけれど、それでもまだ散歩の用意をする私を見れば、尻尾を振って喜んでくれたよ。
大好きなササミのお菓子をあげれば、私の手のひらまで一緒にカジカジと甘噛みをして次をおねだりして来たよ。
あのコは?
どうしていないの、ねえ、どうして?
真っ白だった毛並みもドロドロに汚れて灰色や土の茶色で、もはや白い犬には見えなかった。
それでも、人懐っこいところは何も変わらず、私と母の姿を、家族の姿を見ると、物凄く喜んで所々が泥で固まってしまっている、ふさふさのしっぽをちぎれんばかりに振って、ジャンプしてくるくるとその場で回り全身で再会出来た歓喜の気持ちを表現してくれた。
母はすぐに近くのスーパーへ行くと、犬用のオヤツを大量に購入して来て、さっそくそのスピッツに与えて、ほとんど水しか出ないお風呂のシャワーを出し、洗ってやる準備をはじめた。
もちろん犬用のシャンプーなどないので、人間用のシャンプーだが、それでも灰色で土まみれよりは良いだろう。
「良かった、元気だったんだね、可愛いね、会いたかった」
私はスピッツを抱きしめた。
汚れていると言うことなんて、どうでも良かった。
ねえ、でも、おかしいよ。
だって、年老いた方のマメシバは?
私が幼い頃からずっと一緒に暮らして来た、あの、もうくだびれて、散歩の最中に突然失神してぶっ倒れたりしていた、病を持っていた方のマメシバは?
病院に通って、確かに白内障と既に治らない病におかされていると言うことは聞かされてはいたけれど、それでもまだ散歩の用意をする私を見れば、尻尾を振って喜んでくれたよ。
大好きなササミのお菓子をあげれば、私の手のひらまで一緒にカジカジと甘噛みをして次をおねだりして来たよ。
あのコは?
どうしていないの、ねえ、どうして?
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