私に義弟が出来ました。

杏仁豆腐

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「私に弟が出来るの?」
「そうだ。優希。新しい弟が出来るんだ」

 ママが死んでから既に5年が経過していた。パパはそんな時にいきなり私にそう言って嬉しそうに笑っていた。私は内心パパの再婚に反対の立場だった。だって、ママが死んでからまだ5年しか経ってないのに、もう新しい恋人作ってしかもその恋人も子連れなんて。

「パパがいいなら私は嬉しい……」
「そうか。有難う、優希」

 パパはそう言って私の頬に優しくキスをしてくれた。でも私の心はパパの幸せを受け入れてはいなかった。


 それから間も無くしてからパパの恋人がこの家に越して来た。私は現在18歳。高校卒業して今は看護学校に通っている学生。将来看護師の仕事は必ず増える筈だ、一人で生きていく為には看護師免許を取得して安泰な生活を送りたいと密かに思っている。

 そんな歪んだ考えだけで通っている。勿論パパにはそんなことは言わず、昔からの夢、と言ってある。



「優希ちゃん。そろそろ学校の時間じゃない?」
「ああ、はい……行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」

 パパの恋人が私の新しいママになったのはここに越してきて直ぐのことだった。同棲生活を初めて一か月で結婚。勿論式は挙げていない。その代わりにママのお墓に4人で報告しに行った。

「ママ……天国でパパの事祝福してるのかな……」

 独り言を言いながら歩いていると後ろから何かが思いっきり当たり背中に激痛が走った。

「いたっ! なによ! 痛いじゃないっ」
「へっへーんだ。あんたが寂しそうな背中を丸出しして歩いてんのが悪いんだべさっ」
「こらぁ~! 陽葵ぁぁぁ!! ふざけんじゃないわよっ」
「わー、怒った、怒った」

 へらへら笑いながら私の前に居る男の子が私の新しい義弟。名前は陽葵ひなた。高校2年生だ。越してきてからずっと私の事を揶揄ってきて正直鬱陶しい。まともに相手にしてると腹が立ってくるので私は陽葵を無視して駅に向かった。

「優希ちゃんってばぁ~。お話しよーよぉ~」
「…………」

 くそ……陽葵も電車通学だった。しかも私の看護学校と同じ最寄り駅。更にムカつくことに地区一番の有名学校に通っている。ムカつくことに頭がすこぶるいいのだ。普段家では漫画やゲームばっかりやっててまともに勉強している姿を見たことがない。所謂天才ってやつなのだろうか。

「五月蝿いなぁ……あんたさ、私にこと好きなの?」
「はぁ~? 何言ってんの」
「だって、私に構って欲しんでしょ?」
「ばっかじゃね~の。もういいわ。シラケるわ……」

 馬鹿はあんたよ、陽葵。
 これが私の唯一の武器。陽葵にそういえば彼は私を揶揄うことを止めてしまう。それが分かったのはつい最近だったのだが、これは絶大なダメージを彼に与えるのだ。



 電車の中は満員で私と陽葵は別々の場所に乗っていた。通学、通勤ラッシュ。押し競饅頭状態で身動きが取れない。人が苦手な私は常にこの時間人酔いしてしまう。手摺にしっかりと捕まらないと前と後ろに立っている人にぶつかってしまうのだ。

「………!?」

 もうあと2駅で学校のある駅に着くときだった。
 私のお尻に違和感を感じた。後ろから誰かが触っている感覚。
 痴漢っ!
 
「……いや……」

 あまりにも衝撃的な出来事で声が思うように出ない。私がもぞもぞしているとお尻を触る手がどんどん股の方へと向かっていくのが分かる。もう嫌……気持ち悪い。誰か助けて……。

「おい……何してんだ。てめぇ……」
「はぁ? 何って。電車に乗ってるんだけど。君こそ何なんだ」
「おっさん、今痴漢してただろ。俺見てたから。次の駅で降りな。あ、逃げても無駄だぜ。証拠の写真あんだからさ」
「……クソガキめ……」
 
 何が起こったのか分からず黙って俯いていると私の頭を軽く叩く陽葵の姿が目に映った。どうやら彼が私を助けてくれたらしい。駅のホームに電車が止まると私と陽葵、それにスーツ姿の男性が下りて陽葵が駅員にそのスーツ姿の男性を突き出した。

「この人痴漢してました。これ証拠写真…」
「……こちらに来てください。事情聴取を取ります」

 駅員に引き渡した後私の所に来て警察の事情聴取を受けなければならないことを教えてくれた。私は黙ったまま頷くと陽葵は笑いながら私の手をそっと握りしめてくれた。

「大丈夫。姉ちゃんは俺が守るから……」
「陽葵……あんた今、姉ちゃんって……」
「恥ずかしいんだからそれ以上言うな。それより行くぜ……」

 人生初めての痴漢をされてそれを撃退したのが義弟の陽葵。私と離れていた時に違和感を感じた彼は携帯のカメラ機能を使って決定的瞬間を収めていたらしい。すぐさま止めなかったのはその為だとか。なんて頭の回転がいいんだろうか。でもそんなことする前に気付いたのなら止めて欲しかったよ、陽葵……。

「ふぅ~……なげぇ取り調べだったなぁ…」
「そうね……ってもうこんな時間っ!! 授業始まってるじゃんっ」
「もう遅いし、ばっくれねぇ?」
「はぁ? んな事出来るわけないでしょ。今から走れば3時間目に間にあるかもっ」

 私はそう言って走ろうとすると私の手首をぎゅっと陽葵が掴む。私は彼の顔を見ながら離すよう言うが聞き入れてもらえなかった。

「ちょっと……あんただって学校あるでしょーに……休んで良いの?」
「しゃーないっしょ。どっか行こうぜ」
「あんたって子は……」
 
 苦笑いしながら陽葵を見つめる私。彼は満面の笑みを私に向けていた。不覚にもその笑顔に見惚れてしまっていた。

「おい、何じぃ~っと俺の顔見つめてんの?」
「あ……いや、べ、別に~。それよりどこ行くのよ」
「そうだなぁ~、ホテルでも行くか?」
「バカ……」

 冗談だと言いながら陽葵は駅前にあるゲーセンに向かい歩き出した。私は彼の後ろについて歩いた。彼と会うまでこんな風に出掛けることなんて一度もないことだ。それに私は彼の事が嫌いだった。何かと私の事をバカにする彼を好きになるわけがない。

 でも、今日の彼はとても格好いいなと思ってしまう。別に彼が私の事を守るとか言ったからそう思っているわけではない。元々顔はカッコいい方なのだ。これで彼女が出来ないとか意味不明だ。私なんかずっと彼氏いない。普通の顔に普通のスタイルでは男は寄り付かないらしい。いいんだ。もう彼氏とか諦めてるし。

「な、面白い?」
「何が」
「何って。ゲーセン」
「別に……」
「なんだよ。機嫌悪いなぁ」
「別に……」

 ゲーセンに入ってからずっとこんな会話をしてる私たち。何となく仲良くすることが悔しくてわざと冷たい言葉を彼に投げつけている。そんな私に彼は苛立ちながらも決して私の事を責めたりはしない。そういう男らしい所見せたら余計好きになっちゃうじゃん。ばか……。

「そろそろ出るか」
「そうね」
「ったく。機嫌直せよ」
「機嫌悪く見える?」
「めちゃくちゃそう見える」
「悪かったわね。私はこういう女なのよ」
「何さっきからツンツンしてんの?」
「これが私なの」
「ああ、もういい……とにかく出るぞ」
「………」

 イライラする彼の言葉に反応することなくゲーセンを出た。
 私の態度に異変を感じたのか彼が急に私の手を掴んでどこかに向かって歩き出した。私は急な事で抵抗する暇もなくそのまま引きずられるように歩いた。

「どこ行くの?」
「………」
「ちょっと、陽葵っ」
「黙ってついてこい」
「何よ……もう……」

 歩くこと20分。すっかり駅前から遠ざかってしまい気が付くとホテル街を歩いていた。まさか、そんなことあるわけないわ。そんなことを頭の中で考えていると彼が急に立ち止まった。

「ここ、入るぞ」
「はぁ? 何馬鹿なこと言ってんの」
「……いいから」
「ヤダ……止めてよ」
「五月蝿い」

 彼は強引に私の腕を掴んでホテルの入り口に入っていく。私は抵抗していたが不思議とホテルに入ってしまうとその抵抗感がぱったりとなくなってしまった。目の前に有る部屋の写真を見ながら彼が適当な部屋番号のボタンを押すとガチャンと部屋のキーが出てきた。

 人生初めてラブホに居る私。しかも相手が義理とは言え弟だ。なんてことなの。私、義弟とラブホの部屋に入ってしかも大きなベッドの上で座ってんだけど。

「風呂入るか?」
「………」
「おーい」
「あのさ……」
「なに?」
「何のつもり? これ……」
「何のって……休憩したかったから」
「はぁ? あんた此処に入る理由くらい知ってるわよね?」
「まぁな」
「そのつもりなの?」
「……何が言いたいんだよ」
「だから。私とセックスしたいのかってこと」
「したいよ」
「はぁぁぁ!! あんた何言ってんの? 馬鹿なの? 血迷ったの? 私たち姉弟なんだけど」
「……姉弟って言っても義理だろ。それに俺はあんたの事姉だとは思ってないから……」


 何を今更言っているの、こいつ。真面目な顔で答える彼に私は恥ずかしくなり視線を反らした。すると彼が私の隣に座り私の手の上に自分の手を重ねた。

「あのさ……俺、出会った時から好きだったんだ。でもそんなこと言えないし、隠し通そうと思ってたんだけど。今日あんなことされてるの見て我慢できなくなった」
「………」
「だから思った。俺が守るって。誰にも触れさせない。俺の女に手を出させないって」
「いつからあんたの女になったのよ……」
「ダメ……か?」
「言い訳ないでしょ……姉弟だって言ってんじゃん」
「でも血がつながってないんだぜ。結婚もできるし子供だって産める。俺じゃダメなのか?」

 はぁ……、私は深くため息をついて彼の顔を見つめた。真剣に私の答えを待つ彼の表情を見ているとなんだか可愛く思えてきた。なんだか餌を目の前にして待たされる犬のような可愛さに似ている。

「あんたさ、これがパパやお義母さんにバレたらどうするつもり?」
「ちゃんと言うつもり。分かってくれるって」
「はぁ……馬鹿ねぇ……そういう問題じゃない。それに私なんか可愛くないし、スタイル良くないし、何もないのよ?」
「そんなことない! 可愛いよ。優希は可愛い……大好きだ」

 初めて名前で呼ばれた。なんだかこしょばゆいな。そう思ったらくすくすと笑ってしまった。口元に手を当てて身体を震わせながら笑う私を見て彼が不満気な顔をして私の顔を覗き込んだ。

「そんなに面白い?」
「ああ、ごめん。そうじゃないの。分かった。私も陽葵が好き」
「ホント??」
「うん……てかそう思ったのはついさっきの事だったけどね」
「そうなの……?」
「うん。それまで気が付かなかった」
「喜んでいいのか……?」
「喜べばいいんじゃない。一応両想いになったんだし」
「優希……」
「陽葵……」

 彼の唇が私の唇に重なり、その勢いのままディープキスをした。彼の舌が私の歯や舌を刺激しながら時には舌を唇で吸ったり、舌と舌を絡ませたり、熱いキスを繰り返した。陽葵との初めてのキス。彼は誰かとキスするの初めてなのかな。そんなことを考えていると段々彼に訊ねてみたくなってしまった。

「陽葵……キスするの初めて?」
「うん……なんで?」
「上手だなって思ったから……」
「まぁ、予行練習はしてたからなぁ……」
「予行練習……?」
「そ、AV見ながら妄想してた」

 ぷっ……私はそれを聞いた瞬間笑ってしまった。あの陽葵が。ルックスもいいし、モテそうな陽葵がAV見ながら予行練習って! 笑えない要素が見つからない。私は面白くてずっと笑っていると隣に居た陽葵が急に私をベッドに押し倒した。

「そんなに笑うことないじゃん」
「ごめん、ごめん……陽葵が可愛いくてつい……」
「子ども扱いしやがって……」

 そう言ってむすっとした顔で私にキスをした。さっきよりも熱いキスだった。そのまま彼が私の足に触れて来て唇から頬へキスを落としながら首筋に数回音のなるキスをした。くすぐったいのと恥ずかしいのと気持ちが良いのとでよく分からない状態になって行った。

「ねぇ、していい?」
「だからここに来たんでしょ?」
「そう、だけどさ……いざとなると……」
「ヘタレねぇ……」

 ふふふ、私は陽葵のそういう正直なところが可愛いと思ってしまった。こうなったら私がお姉さんなんだから陽葵をリードしてあげなくっちゃね。可愛い彼氏の為に人肌脱ぎますか!! 私経験者だし、一応……。

 私と陽葵はラブホでセックスをした。最初はぎこちない前戯だった彼だったけど2回、3回と繰り返しながら段々とセックスのコツが分かって来てどんどん気持ちよくなっていった。部屋に置いてあったコンドームが足りなくなると部屋に置いてあった自販機で買い足し何回もセックスを繰り返した。

 大画面のテレビでは人気AV女優のビデオを垂れながらしながらセックスの休憩の時はそのビデオを二人で見ながら同じことを実際にしながら気持ちよさ等を確認しながら時間いっぱいまで二人はずっとセックスを繰り返した。

「俺、ずっと優希と一緒に居るから」
「有難う。私も陽葵とずっと一緒に居たい」
「将来は結婚な。俺勉強して国家公務員になるから」
「ふふふ、私は看護師よ。お互い忙しそうね」
「大丈夫。優希は俺が養ってやるって」
「あら、それは女として聞き捨てならないわね。女も働く時代なの。だから私は働くわよ」
「分かったよ。強引な姉さんだなぁ~」
「そういう時だけ姉さんって……クスクス」

 私と陽葵はホテルを出た後時間を潰して一緒に家に帰った。何事もなかったかのようにふるまいながら家では過ごした。でも親が外に居る時は……恋人な時間を過ごすんだもん!!

 陽葵、だ~い好きっ(はーと)
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