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第26話 ブラコン、ナメんなよっ
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今日も学校が無事終わり僕は教室から下駄箱へ向かっていた。廊下を下りて自分の靴が入っている下駄箱に手を掛けると、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。
「嶋君! 今帰り?」
振り向くとそこに立っていたのは最近僕に付き纏っている木浦先輩だった。まぁ、偶然じゃないでしょうね。多分張って……じゃなかった。待っていたんでしょうね。どうもご苦労様です。僕は以前告白された時の感情はもうすっかり無くなっていた。お姉ちゃんがまた泣いちゃうし。それはそれで面倒くさいし。
僕は靴を履きながらそんなことを考えていると、先輩が僕の背中をぽんと叩いてきた。
「嶋くん家にこれからお邪魔したいな」
「え……? そ、そんな、急に言われても……」
「あら、いいんじゃない。真ちゃん。」
え……? この声は、まさか、お姉ちゃんっ!? 校門前で門に寄りかかりながらお姉ちゃんが僕にそう声を掛けた。最近お姉ちゃんの僕に対する構い方がより一層激しくなっていた。朝からべったりしてご飯もまともに食べさせてくれない。それに「食べさせて」とかお願い事迄されるようになってしまっていた。
「どうしてここに居るの? お姉ちゃん……」
「この人が、嶋君のお姉さん……かぁ」
先輩がぼそっと呟いていたが僕には聞こえていなかった。お姉ちゃんは僕の目の前に来ると目を細くして僕に耳打ちをした。
「あの子? 真ちゃんを追い回しているって子は……」
僕は黙って頷く。すると今度は先輩の方に振り向いて話し出した。
「いらっしゃいな。私たちの家に招待してあげる」
「ええ~、いいんですかぁ? やったぁ~」
二人は下手な作り笑いをしながら笑っていたが、何故か凄く雰囲気が悪かった。僕には女心が分からない……と言うより、分かりたくない。
僕たちは三人で家に向かった。お姉ちゃんはいつも通り僕の腕をがっちり組んで離そうとしない。僕の横を歩く先輩は僕たちの事をチラチラ見ながら不満げな顔していた。僕はそんな痛い視線とお姉ちゃんの胸の押し付け攻撃に心が穢されていった。
家に着くと先輩は「おじゃましまぁす」と一言声を掛けてから靴を脱いで上がった。とりあえず僕は先輩を僕の部屋に、お姉ちゃんは着替えるよう言った。お姉ちゃんは頬を膨らませながら不満げな顔をしながらぶつぶつ呟いて自分の部屋に行った
「先輩、ちょっと飲み物取ってきます」
僕はそう言って部屋から出て冷蔵庫からお茶を取り出し、3つコップを出してそれぞれ注いで又自分の部屋に戻った。部屋に戻ると、既にお姉ちゃんが私服で僕のベッドで足を組んで座っていた。
いつもの部屋着……ピンクのTシャツを着て、下は何も履いていないんじゃないかと思わせる着こなし。実は下には短いデニムパンツを履いている。以前騙された経験があるからすぐにわかった。しかし、ふっくらした太ももをあらわして足を組んでいる姿は弟の僕でもドキッとする。
「お帰りぃ~真ちゃん。お邪魔してるよん」
笑顔で僕にそう言うお姉ちゃん。床にお尻をべったりくっ付けて座っている先輩も僕に微笑んでいた。何か部屋の空気がおかしい。僕は二人に持ってきたコップを渡して先輩の反対側に座った。
「それで……先輩は何しにここへ来たんですか?」
僕は右手に持っていたコップを口に運びながら先輩に訊ねた。
「ええっと……お姉さんにもお話があるんですけど……」
先輩はそう言ってお姉ちゃんの方をちらっと見た。お姉ちゃんは僕に愛想を振りまきながら先輩の事を全く見ようとしない。僕はため息をついてお姉ちゃんに先輩の話を聞いてあげて欲しいと話した。
「なぁにぃ~? 私に話って……」
お姉ちゃんは明らかにわかる作り笑いをしながら先輩の方を見た。
「あのぉ……私、嶋君が好きです。それでお姉さんに了解が欲しいです」
はっきり先輩はそう言ってまた笑顔で笑った。それを聞いたお姉ちゃんの顔がだんだん険しくなって僕の方を見て話した。
「ねぇ、真ちゃん……これはどういう事、なのかな?」
「……僕にもさっぱり……」
「嶋君、お姉さんにちゃんと言って。嶋君は彼女が欲しいんでしょ?」
二人に板挟みにされた僕はおどおどしながら二人の視線を浴びた。僕はどうしたらいいのかさっぱり分からない。正直『彼女』は欲しいと思っている。しかしお姉ちゃんはそれを絶対に許そうとしない
僕があたふたしていると、お姉ちゃんが僕の傍に来て隣にちょこんと座ると、僕の腕をぎゅっと掴んだ。僕の気を引こうとしているのだろう、Tシャツからお姉ちゃんの大きな胸が僕の腕にぎゅっと当たるのが分かる。それを見ていた先輩が口を開いた。
「お姉さんが弟離れしないとダメじゃないですかね。嶋君が可哀そう……」
「あら、何言ってるの? 真ちゃんは私の事が好きなの。他の子は好きじゃないの。ただそれだけじゃん。何が悪いの?」
目が据わっている……お姉ちゃんが先輩を睨みつけながら僕の腕をさらに強く掴む。ちょっと腕が痛いが、それを言えない僕は情けない。先輩は呆れた様子で僕の方を見ながら話し出した。
「嶋君も、お姉さんといつまでもこういう事したくないでしょ。姉弟なんだから。こういうの可笑しいと思うよ。私だったら別におかしくないじゃん。だから―――」
先輩が続きを言い出そうとした時、お姉ちゃんの怒りゲージがマックスになってしまった。笑顔が完全に消えたお姉ちゃんは大きな声を出して先輩に言った。
「あなたに何が分かるの!? 真ちゃんと私はこういう仲なの。邪魔しないでっ!! いきなりぽっと出てきて何言ってるのよっ!! ブラコン舐めんな!!」
あ~……言っちゃった。お姉ちゃんがついにキレた瞬間だった。僕は先輩の方を見て話をした。
「お姉ちゃんはこういう人です。僕は弟としてお姉ちゃんが好きです。僕ら姉弟はずっとこういう関係です。確かに彼女は欲しいと思っています。でもお姉ちゃんが悲しむなら、彼女は要りません」
僕も馬鹿だなぁ……目の前に可愛い先輩がブラコン姉の毒牙から解放してくれようとしていたのに、僕はお姉ちゃんの気持ちに応えたいと思ってしまうなんて。こうなれば行くとこまで行くしかない。僕はそう思った。
「嶋君がそういうなら……でも、私は嶋君を諦めないから。それにお姉さんにも負けません。今日は帰ります。お邪魔しました」
先輩はそう言って立ち上がり一人で帰りますと言い残し部屋から出て行ってしまった。完全にキレたお姉ちゃんは鼻息を荒くして顔も真っ赤になり興奮していた。僕はぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。
こうすればお姉ちゃんの怒りが収まる。これも昔から僕がやっていたことだった。暫くお姉ちゃんの怒りが収まるまでそうしていると、お姉ちゃんが僕の方を見た。
「真ちゃん……私っておかしい? 大好きな弟を抱き着いたり、キスしたり、お風呂入ったり、こういうのっておかしいのかな……私分かんなくなってきちゃった……」
珍しくお姉ちゃんが気落ちしている。これは拗ねる可能性が出てきた。僕はお姉ちゃんの肩をきゅっと寄せて話をした。
「お姉ちゃんは……変じゃない。変じゃないよ。弟が好きな姉なんて珍しいだけだよ。それに周りがどう思っていても、お姉ちゃんは僕の事が好きなことに変わりはないんでしょ?」
「……うん、そだよ……」
「だったら、それでいいんじゃないかな。僕はただお姉ちゃんが悲しむことはしたくない。だからってべったりされるのもちょっと恥ずかしいけど。お姉ちゃんがそうしたいなら、僕はいいと思ってるから。だから、元気出して、ね?」
………なんて口から出まかせなんだろう。本心じゃないのに。でも、これが僕の本心なのだろうか。だとすれば、僕は……僕は……僕は……。
「……真ちゃん……ちゅうして……」
お姉ちゃんの駄々っ子タイム突入。僕は黙ったままお姉ちゃんの両肩に手を当ててお姉ちゃんを僕の方に向けた。お姉ちゃんの目には涙が零れ落ちていた。目が真っ赤で頬が涙で濡れている。僕は目元に自分の指をあてて拭ってから、お姉ちゃんの濡れた頬に自分の唇にそっと当てた。
「……そこじゃない……」
「え……? どこにするの?」
僕がお姉ちゃんに訊ねると、お姉ちゃんは自分の唇に指を当てた。僕はちょっと戸惑ったがこのままお姉ちゃんの機嫌が直らないと後で親たちに責められる。仕方なく今度はお姉ちゃんの唇に自分の唇を重ねた。一回……二回……。
僕は二回キスをした。僕のキスで元気になったのかお姉ちゃんは笑顔で僕を見つめ、僕の胸に飛び込んできた。その勢いで僕は後ろに倒れお姉ちゃんは僕の上に。嬉しそうに抱き着くお姉ちゃんを見て僕はほっとした。
ただ、お姉ちゃんがあまりにも抱きつくのでお姉ちゃんの胸の谷間が僕の胸に当たってちょっと視線を外すとお姉ちゃんの谷間がこんにちわしてくる。何処に視線をやっても最終的には谷間へ……。ここでお姉ちゃんに発情するわけにはいかない。僕はそう思いお姉ちゃんを抱きかかえながら上半身を起こした。
「お姉ちゃん……もう元気になった? 顔、これで拭いて」
ポケットからハンカチを取り出してお姉ちゃんに渡し、お姉ちゃんは涙を拭った。目がまだ赤い。でもとても笑顔で僕に微笑んでいた。僕はとりあえずお姉ちゃんの機嫌を取りなおしたことに安堵を覚えた。
その夜、お姉ちゃんは僕の部屋に忍び込み僕のベッドに入り込んできた。先輩が自分から弟を取られるのではないかという不安になり一人で寝れないと、とても意味不明な理由で僕に抱き着きながら目を瞑っていた。
「お姉ちゃん……まさか、下着は?」
「え……付けてない、履いてなーいっ!」
えへっと舌を出しながら僕に裸同然で抱き着くお姉ちゃん。一応Tシャツは着ている様子。僕はまた生殺しの刑にあう羽目になってしまった。これは僕に対するお姉ちゃんの最大攻撃。今日の事は僕にも原因があるんではないかと考えて色気で骨抜きにしようと言う作戦なのだろう。
お姉ちゃんが僕に構い過ぎて、ついにブラコン魂に火が付きましたっ!! このままだとお姉ちゃんに僕はは、は、発〇しちゃいそうで怖いです!! それに先輩も、どういうつもりなんだぁぁぁ!!
真夜中のトイレで僕は一人便器に腰を下ろしながらため息をついた。カランカランとトイレットペーパーを巻き取る音が虚しさを強調していた。この行動も既におなじみになっている気がする僕は心と体を穢されてしまったと思ったのであった。
「嶋君! 今帰り?」
振り向くとそこに立っていたのは最近僕に付き纏っている木浦先輩だった。まぁ、偶然じゃないでしょうね。多分張って……じゃなかった。待っていたんでしょうね。どうもご苦労様です。僕は以前告白された時の感情はもうすっかり無くなっていた。お姉ちゃんがまた泣いちゃうし。それはそれで面倒くさいし。
僕は靴を履きながらそんなことを考えていると、先輩が僕の背中をぽんと叩いてきた。
「嶋くん家にこれからお邪魔したいな」
「え……? そ、そんな、急に言われても……」
「あら、いいんじゃない。真ちゃん。」
え……? この声は、まさか、お姉ちゃんっ!? 校門前で門に寄りかかりながらお姉ちゃんが僕にそう声を掛けた。最近お姉ちゃんの僕に対する構い方がより一層激しくなっていた。朝からべったりしてご飯もまともに食べさせてくれない。それに「食べさせて」とかお願い事迄されるようになってしまっていた。
「どうしてここに居るの? お姉ちゃん……」
「この人が、嶋君のお姉さん……かぁ」
先輩がぼそっと呟いていたが僕には聞こえていなかった。お姉ちゃんは僕の目の前に来ると目を細くして僕に耳打ちをした。
「あの子? 真ちゃんを追い回しているって子は……」
僕は黙って頷く。すると今度は先輩の方に振り向いて話し出した。
「いらっしゃいな。私たちの家に招待してあげる」
「ええ~、いいんですかぁ? やったぁ~」
二人は下手な作り笑いをしながら笑っていたが、何故か凄く雰囲気が悪かった。僕には女心が分からない……と言うより、分かりたくない。
僕たちは三人で家に向かった。お姉ちゃんはいつも通り僕の腕をがっちり組んで離そうとしない。僕の横を歩く先輩は僕たちの事をチラチラ見ながら不満げな顔していた。僕はそんな痛い視線とお姉ちゃんの胸の押し付け攻撃に心が穢されていった。
家に着くと先輩は「おじゃましまぁす」と一言声を掛けてから靴を脱いで上がった。とりあえず僕は先輩を僕の部屋に、お姉ちゃんは着替えるよう言った。お姉ちゃんは頬を膨らませながら不満げな顔をしながらぶつぶつ呟いて自分の部屋に行った
「先輩、ちょっと飲み物取ってきます」
僕はそう言って部屋から出て冷蔵庫からお茶を取り出し、3つコップを出してそれぞれ注いで又自分の部屋に戻った。部屋に戻ると、既にお姉ちゃんが私服で僕のベッドで足を組んで座っていた。
いつもの部屋着……ピンクのTシャツを着て、下は何も履いていないんじゃないかと思わせる着こなし。実は下には短いデニムパンツを履いている。以前騙された経験があるからすぐにわかった。しかし、ふっくらした太ももをあらわして足を組んでいる姿は弟の僕でもドキッとする。
「お帰りぃ~真ちゃん。お邪魔してるよん」
笑顔で僕にそう言うお姉ちゃん。床にお尻をべったりくっ付けて座っている先輩も僕に微笑んでいた。何か部屋の空気がおかしい。僕は二人に持ってきたコップを渡して先輩の反対側に座った。
「それで……先輩は何しにここへ来たんですか?」
僕は右手に持っていたコップを口に運びながら先輩に訊ねた。
「ええっと……お姉さんにもお話があるんですけど……」
先輩はそう言ってお姉ちゃんの方をちらっと見た。お姉ちゃんは僕に愛想を振りまきながら先輩の事を全く見ようとしない。僕はため息をついてお姉ちゃんに先輩の話を聞いてあげて欲しいと話した。
「なぁにぃ~? 私に話って……」
お姉ちゃんは明らかにわかる作り笑いをしながら先輩の方を見た。
「あのぉ……私、嶋君が好きです。それでお姉さんに了解が欲しいです」
はっきり先輩はそう言ってまた笑顔で笑った。それを聞いたお姉ちゃんの顔がだんだん険しくなって僕の方を見て話した。
「ねぇ、真ちゃん……これはどういう事、なのかな?」
「……僕にもさっぱり……」
「嶋君、お姉さんにちゃんと言って。嶋君は彼女が欲しいんでしょ?」
二人に板挟みにされた僕はおどおどしながら二人の視線を浴びた。僕はどうしたらいいのかさっぱり分からない。正直『彼女』は欲しいと思っている。しかしお姉ちゃんはそれを絶対に許そうとしない
僕があたふたしていると、お姉ちゃんが僕の傍に来て隣にちょこんと座ると、僕の腕をぎゅっと掴んだ。僕の気を引こうとしているのだろう、Tシャツからお姉ちゃんの大きな胸が僕の腕にぎゅっと当たるのが分かる。それを見ていた先輩が口を開いた。
「お姉さんが弟離れしないとダメじゃないですかね。嶋君が可哀そう……」
「あら、何言ってるの? 真ちゃんは私の事が好きなの。他の子は好きじゃないの。ただそれだけじゃん。何が悪いの?」
目が据わっている……お姉ちゃんが先輩を睨みつけながら僕の腕をさらに強く掴む。ちょっと腕が痛いが、それを言えない僕は情けない。先輩は呆れた様子で僕の方を見ながら話し出した。
「嶋君も、お姉さんといつまでもこういう事したくないでしょ。姉弟なんだから。こういうの可笑しいと思うよ。私だったら別におかしくないじゃん。だから―――」
先輩が続きを言い出そうとした時、お姉ちゃんの怒りゲージがマックスになってしまった。笑顔が完全に消えたお姉ちゃんは大きな声を出して先輩に言った。
「あなたに何が分かるの!? 真ちゃんと私はこういう仲なの。邪魔しないでっ!! いきなりぽっと出てきて何言ってるのよっ!! ブラコン舐めんな!!」
あ~……言っちゃった。お姉ちゃんがついにキレた瞬間だった。僕は先輩の方を見て話をした。
「お姉ちゃんはこういう人です。僕は弟としてお姉ちゃんが好きです。僕ら姉弟はずっとこういう関係です。確かに彼女は欲しいと思っています。でもお姉ちゃんが悲しむなら、彼女は要りません」
僕も馬鹿だなぁ……目の前に可愛い先輩がブラコン姉の毒牙から解放してくれようとしていたのに、僕はお姉ちゃんの気持ちに応えたいと思ってしまうなんて。こうなれば行くとこまで行くしかない。僕はそう思った。
「嶋君がそういうなら……でも、私は嶋君を諦めないから。それにお姉さんにも負けません。今日は帰ります。お邪魔しました」
先輩はそう言って立ち上がり一人で帰りますと言い残し部屋から出て行ってしまった。完全にキレたお姉ちゃんは鼻息を荒くして顔も真っ赤になり興奮していた。僕はぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。
こうすればお姉ちゃんの怒りが収まる。これも昔から僕がやっていたことだった。暫くお姉ちゃんの怒りが収まるまでそうしていると、お姉ちゃんが僕の方を見た。
「真ちゃん……私っておかしい? 大好きな弟を抱き着いたり、キスしたり、お風呂入ったり、こういうのっておかしいのかな……私分かんなくなってきちゃった……」
珍しくお姉ちゃんが気落ちしている。これは拗ねる可能性が出てきた。僕はお姉ちゃんの肩をきゅっと寄せて話をした。
「お姉ちゃんは……変じゃない。変じゃないよ。弟が好きな姉なんて珍しいだけだよ。それに周りがどう思っていても、お姉ちゃんは僕の事が好きなことに変わりはないんでしょ?」
「……うん、そだよ……」
「だったら、それでいいんじゃないかな。僕はただお姉ちゃんが悲しむことはしたくない。だからってべったりされるのもちょっと恥ずかしいけど。お姉ちゃんがそうしたいなら、僕はいいと思ってるから。だから、元気出して、ね?」
………なんて口から出まかせなんだろう。本心じゃないのに。でも、これが僕の本心なのだろうか。だとすれば、僕は……僕は……僕は……。
「……真ちゃん……ちゅうして……」
お姉ちゃんの駄々っ子タイム突入。僕は黙ったままお姉ちゃんの両肩に手を当ててお姉ちゃんを僕の方に向けた。お姉ちゃんの目には涙が零れ落ちていた。目が真っ赤で頬が涙で濡れている。僕は目元に自分の指をあてて拭ってから、お姉ちゃんの濡れた頬に自分の唇にそっと当てた。
「……そこじゃない……」
「え……? どこにするの?」
僕がお姉ちゃんに訊ねると、お姉ちゃんは自分の唇に指を当てた。僕はちょっと戸惑ったがこのままお姉ちゃんの機嫌が直らないと後で親たちに責められる。仕方なく今度はお姉ちゃんの唇に自分の唇を重ねた。一回……二回……。
僕は二回キスをした。僕のキスで元気になったのかお姉ちゃんは笑顔で僕を見つめ、僕の胸に飛び込んできた。その勢いで僕は後ろに倒れお姉ちゃんは僕の上に。嬉しそうに抱き着くお姉ちゃんを見て僕はほっとした。
ただ、お姉ちゃんがあまりにも抱きつくのでお姉ちゃんの胸の谷間が僕の胸に当たってちょっと視線を外すとお姉ちゃんの谷間がこんにちわしてくる。何処に視線をやっても最終的には谷間へ……。ここでお姉ちゃんに発情するわけにはいかない。僕はそう思いお姉ちゃんを抱きかかえながら上半身を起こした。
「お姉ちゃん……もう元気になった? 顔、これで拭いて」
ポケットからハンカチを取り出してお姉ちゃんに渡し、お姉ちゃんは涙を拭った。目がまだ赤い。でもとても笑顔で僕に微笑んでいた。僕はとりあえずお姉ちゃんの機嫌を取りなおしたことに安堵を覚えた。
その夜、お姉ちゃんは僕の部屋に忍び込み僕のベッドに入り込んできた。先輩が自分から弟を取られるのではないかという不安になり一人で寝れないと、とても意味不明な理由で僕に抱き着きながら目を瞑っていた。
「お姉ちゃん……まさか、下着は?」
「え……付けてない、履いてなーいっ!」
えへっと舌を出しながら僕に裸同然で抱き着くお姉ちゃん。一応Tシャツは着ている様子。僕はまた生殺しの刑にあう羽目になってしまった。これは僕に対するお姉ちゃんの最大攻撃。今日の事は僕にも原因があるんではないかと考えて色気で骨抜きにしようと言う作戦なのだろう。
お姉ちゃんが僕に構い過ぎて、ついにブラコン魂に火が付きましたっ!! このままだとお姉ちゃんに僕はは、は、発〇しちゃいそうで怖いです!! それに先輩も、どういうつもりなんだぁぁぁ!!
真夜中のトイレで僕は一人便器に腰を下ろしながらため息をついた。カランカランとトイレットペーパーを巻き取る音が虚しさを強調していた。この行動も既におなじみになっている気がする僕は心と体を穢されてしまったと思ったのであった。
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