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12 直接対決

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そして昼食の時間になり私たちは食堂へ向かった。
今日の授業も全然頭の中に入って来ない。
直ぐにでも王太子に話をしてマリア―ヌ様との婚約破棄を解消してほしい。
そう思っていた。
私には……。


「マリエット。少し話いいか?」


そう声を掛けてきたいのはダリウス王太子……ではなく、エリック・ミールだった。
ミール侯爵家の嫡男でこの学校のイケメン男子の一人だった。
エリックとは殆どこの学校へ入ってからは話をした事が無い。
お互い親同士の繋がりがあって子供の頃偶に出席したパーティ―に彼もいたことを思い出した。


「何かしら? ここでいいならここで話してほしいのだけれど」
「ああ。此処でいい。ダリウス王太子から訊いたよ。何故彼の話を訊いてあげないんだい? 王太子は痛く心を傷ついている。もう見ていられない。だから君に声を掛けた」
「そんな私の所為では……」
「君の所為だ。君がしっかり話を訊いてあげればこんなことにはならなかっただろう。このまま王太子がご病気になればそれは君の所為ということになるだろう。そうなる前に話を訊いてあげて欲しい」


そんな勝手な言い分ってないわ。
私はそう思った。
傍に居た二人も同じような事を言ってくれたがエリックは堂々として真っすぐに私の方を見つめながら話をしていた。
私は王太子と話をすることを彼に伝え彼は踵を返して私の目の前から立ち去った。


「ああ云う物言いはどうかと思うけどな」


そう言って私の傍に来たアドフルは渋い顔をしながら立ち去ったエリックの背中を見つめていた。
何となくかっこいい……と、そんなことを思っている場合じゃないわ。
どうにかして王太子にちゃんと話をしないと余計話が可笑しな方向へ行ってしまう。


「私ちょっとダリウス様の所へ行ってきます。後の授業は多分出れないと思うので宜しく」
「ちょ、ちょっと、マリエットっ! 待ちなさいって。そんな直ぐに行動することもないでしょう?」
「相違も言ってられないのよ。クリシア。私は行くわ」



クリシアの制止も振り切って私は王太子の元へ向かう為食堂を後にした。
王太子は今何処にいるのだろうか。
そこから探さないと見つけられない。
私が周りを見回っているとそこへまたエリックがやって来た。
どうやらダリウス王太子の居場所を知っているようだ。彼に案内されて私は王太子の場所へ向かった。


「此処は……」
「ダリウス王太子様。マリエットを連れて参りました」
「おお、有難うエリック。マリエット。ここだ」

小さな部屋の一室でソファだけが置いてある。
王太子はそこに座って私を前に座るよう言った。
此処に座ればいいのかしら。私は向かい側の席に腰かけた。


「ダリウス様。本当にあの話は無かったことにしてほしいのです。正直申し上げます。私には好きな人が居ます。ですからダリウス様との婚約は出来ません。本当に申し訳ありません」

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