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14 権力

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ええ、私はそう言って笑顔でアドルフを見つめた。
暫くそのお店で普段通りの話をしながら過ごした後馬車のある所へ戻って屋敷に変えることにした。お互い挨拶を交わした後別れた。


アドルフといい雰囲気になって帰ってきた私は部屋でソファに座りながらニタニタしていると侍女が入って来てお父様とお母様が私を呼んでいると言ってきた。
私は居間に向かうと二人とも席に座って深刻そうな顔をして私が来ると顔を上げた。


「マリエット。すまないが大切な話がある」
「良く訊いて頂戴。マリエット。貴女の所為ではないのよ、これは」
「いったい何があったのですか?」
「マリエット。其方を王族のダリウス王太子との婚約を正式に認められた」


ええ~っ!! 
だってあの話は今日終わったばかりじゃない。
一体何でそうなったの。


「これは貴族である我リーデン家と王家との婚約となる。其方には悪いが認めてもらうことになる」
「貴女にはこれから王家としての嗜みを磨いてもらうことになるわ。母も寂しいけれど仕方ない事なの。しっかり頑張るのよ」


え、え、えええええっ!! 
そんなこと私に言われたって……と思ったが、私は侯爵家の令嬢。
政略結婚と言われれば仕方がないと腹を括るしかない。
王太子が強行姿勢をとってきたことが理解出来た。
恐らくお父様の大臣としての立場を篩にかけたのだと……。


「分かりました。私が王太子様と婚約すれば良いのですね?」
「ああ……それでいい」
「仕方がない事なの。これでいいのよ、クラーラ」
「はい。お父様、お母様」


私はそう言って部屋を後にして自分の部屋に戻った。
結局権力には勝てないことが分かった。
これも又勉強なのだろう。
それにしてもしつこすぎる。
愛することは絶対に出来ない。
だけどこれを覆すことも出来ないと思った。


「アドフル……御免なさい」

私はそう口にして涙した。
権力に負けた瞬間だった。



次の日。
私はそのまま学園に向かうことなくお城に呼ばれた。
ダリウス王太子に呼ばれたのだ。
馬車に揺れながらお父様と一緒に向かう車の中私は目を瞑ったまま言葉を交わすことはなかった。
お父様も又私に言葉を発することはなかった。

馬車が到着するとお父様が、着いたぞ、と私に告げ、私は馬車を降りてお城の中にお父様と一緒に入った。

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