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24 それぞれの思い

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私が頭を下げると驚いた表情で私の事を見つめた。
本当は……。
だけれど仕方のない事なの。
私だって本心じゃまだ納得していないこともあるんだもの。


「そうか……マリエットがそこまで考えているのなら仕方がない」
「アドルフ、それでいいのかい? 僕は納得できないよ。こんなこと……」

カミーユがアドルフにそう言うとアドルフは苦笑いした。
その表情を見て私の心はズキッとした。
まだ昼食のお弁当の中身は半分以上入っていたが食べる気が起きなかった。
アドルフ達が私の元を去ってから私は残りのおかずを口にした。
折角アリアが作ってくれたお弁当を残すのは忍びない気がしたからだった。


昼食も終わり、午後の授業が始まった。
何事もなかったかのように私は講堂にある自分が座っていた椅子に腰かけ授業を訊いている。
隣にいたリエットとその隣に座っていたアリシアも何も言わず黙ったままだった。
授業は貴族としての嗜みについてだった。
振る舞い、決まり事等事細かな事を学んだ。
そして午後の授業も終わった時、アリシアが私に声を掛けてきた。


「今日、久々にお茶でもどうかしら? 二人とも」
「いいですわね。行きますわ」
「私も大丈夫です」


私とリエットはアリシアの誘いに乗った。
婚約発表から数日が経ってからのお茶会のお誘いだった。
アリシアは是非自分の屋敷でお茶をご馳走したいと言い出し、私は待っていた馬車を運転する者にそのことを告げると屋敷に戻って行った。
私とリエットはアリシアの馬車に乗り込みそのままアリシアの屋敷に向かった。
久々のアリシアの屋敷に行くことになった。
馬車の中では何気ない会話を三人でしていた。
特に私の事に対する話題は避けているような、そんな気持ちがした。
馬車がアリシアの屋敷に着くと私達をメイド服を着た人たちが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ。お嬢様」
「ただいま。今日は客人を招いたの。お茶の準備をお願い出来るかしら」
「畏まりました」


メイド達はそう言って頭を下げると屋敷の奥に消えていった。
アリシアは私達を客間に通すと豪華なソファに腰かけるように声を掛けた。


「ゆっくりしていってね」
「有難う」
「素敵なお部屋ですわね。アリシア様」
「そんなことは無いのよ、リエット。マリエットもゆっくりして言って頂戴ね」
「ええ」


暫く二人と学園の事だったり授業の事だったり色々な話をしていると、メイドが部屋にやって来てお茶の準備をしてくれていた。
私は窓の外に眼をやると大きくて立派な庭園が広がっているのが見えた。
昔此処でアリシアと遊んでいたことが思い出されたのだ。


「立派な庭園ね。昔の事を思い出すわ」
「マリエットとアソコのお庭で遊んでいたのを私も思い出していたわ。ところでマリエット、婚約の事なんだけれど……」



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