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あれから数か月が経ちました。
私に対して嫌がらせをする人はこの帝国にはいなくなりました。
王さまの命令で一月に一度元王国領に赴き貴族たちの様子を監視する仕事にも慣れつつあります。
そして私の前のお父様とお母様も元気を取り戻し領地の平和を望みながら日々仕事をこなしていました。
私のスキルは神通力と幸運度が高い、ということでこれにはすっかり頼りきっていました。
ステータスも徐々にではありますが上昇しています。
日々の暮らしも穏やかで本当に幸せを感じていました。
ある日のことでした。
私が寝室で横になっている時に携帯が鳴り出しまいた。
神様からの連絡です。
私は携帯を取り出して通話ボタンを押しました。
「もしもし、舞か?」
「はい。神様。今日はどのような?」
「おお。それでな。其方の転異が決定しそうなのじゃ。もうすぐその世界から元の世界に戻れそうなので連絡したというわけじゃ」
なるほど……。
私は少し考えました。
このままこの世界を去って元の世界に戻って果たして私の幸せは元の世界にあるのだろうか。
この世界には婚約者もいるし、今はかけがえのない両親が居てくれている。
それに王さまとの信頼も高い。
このままこの世界に残った方が私は幸せになれるのでないか。
そんなことを考えました。
私は口を開きました。
「神様。その件なのですが。もうこの世界にとどまろうかと思いまして」
「ほう?それで其方はいいのか?」
「はい。もう私を苛める人物はいないですし、婚約者もいますし……」
「それは結構なことなのだが、一度戻る機会を失うともう二度と元の世界には戻せんぞ?それでも良いのか?
」
「はい。覚悟はできています。元の世界の家族たちには申し訳ないのですが……」
「分かった。私は出来れば舞にはこの世界で活躍してもらいたいと思っている身。其方がそれでよいのなら議会の決議を否決してもらおう」
「はい。宜しくお願い致します」
「分かった。では私との通信もこれで最期になる。今持っている携帯は消去される。何か言い残したことはあるか?」
そうなのか……。
もう神様と連絡も取れなくなってしまうのか。
それはちょっと困るかもしれない。
「出来れば、神様との通信は続けたいのですが」
「それは無理じゃ。其方の意思決定で自動的にこの通信は消えてしまう。更に私との記憶も消去される。私という神の存在が其方の中から消えることになっているのだ。これは天界の決まりでな」
「決まり事……なのですね……では仕方ありません」
「すまんの。勝手ばかり此方が言っていて」
「いえ。この世界に連れて来てもらって私も色々変わることが出来ましたので」
「まぁ、それであればよいのだが」
「あの……一つ質問があるのですが……」
「なんじゃ?」
「あの、私のこの力は無くなったりはしませんよね?」
「ああ。それは心配ない。その力は其方の力。消えたりはしないだろう」
ああ、よかった……。
正直この力があったからこそこの世界で生きていけるから。
無くなってしまうとただの娘になってしまう。
それだけは避けたいと思っていました。
「では。そろそろ通信を終わりにしよう」
「はい。色々と有難う御座いました。神様」
「此方こそ。色々大変だったな。有難う。舞」
つーつーつー。
通信は切れました。
それと同時に手に持っていた携帯が光に包まれ消えてしまいました。
そして。
私の記憶から神様が消えてしまっていたのです。
私に対して嫌がらせをする人はこの帝国にはいなくなりました。
王さまの命令で一月に一度元王国領に赴き貴族たちの様子を監視する仕事にも慣れつつあります。
そして私の前のお父様とお母様も元気を取り戻し領地の平和を望みながら日々仕事をこなしていました。
私のスキルは神通力と幸運度が高い、ということでこれにはすっかり頼りきっていました。
ステータスも徐々にではありますが上昇しています。
日々の暮らしも穏やかで本当に幸せを感じていました。
ある日のことでした。
私が寝室で横になっている時に携帯が鳴り出しまいた。
神様からの連絡です。
私は携帯を取り出して通話ボタンを押しました。
「もしもし、舞か?」
「はい。神様。今日はどのような?」
「おお。それでな。其方の転異が決定しそうなのじゃ。もうすぐその世界から元の世界に戻れそうなので連絡したというわけじゃ」
なるほど……。
私は少し考えました。
このままこの世界を去って元の世界に戻って果たして私の幸せは元の世界にあるのだろうか。
この世界には婚約者もいるし、今はかけがえのない両親が居てくれている。
それに王さまとの信頼も高い。
このままこの世界に残った方が私は幸せになれるのでないか。
そんなことを考えました。
私は口を開きました。
「神様。その件なのですが。もうこの世界にとどまろうかと思いまして」
「ほう?それで其方はいいのか?」
「はい。もう私を苛める人物はいないですし、婚約者もいますし……」
「それは結構なことなのだが、一度戻る機会を失うともう二度と元の世界には戻せんぞ?それでも良いのか?
」
「はい。覚悟はできています。元の世界の家族たちには申し訳ないのですが……」
「分かった。私は出来れば舞にはこの世界で活躍してもらいたいと思っている身。其方がそれでよいのなら議会の決議を否決してもらおう」
「はい。宜しくお願い致します」
「分かった。では私との通信もこれで最期になる。今持っている携帯は消去される。何か言い残したことはあるか?」
そうなのか……。
もう神様と連絡も取れなくなってしまうのか。
それはちょっと困るかもしれない。
「出来れば、神様との通信は続けたいのですが」
「それは無理じゃ。其方の意思決定で自動的にこの通信は消えてしまう。更に私との記憶も消去される。私という神の存在が其方の中から消えることになっているのだ。これは天界の決まりでな」
「決まり事……なのですね……では仕方ありません」
「すまんの。勝手ばかり此方が言っていて」
「いえ。この世界に連れて来てもらって私も色々変わることが出来ましたので」
「まぁ、それであればよいのだが」
「あの……一つ質問があるのですが……」
「なんじゃ?」
「あの、私のこの力は無くなったりはしませんよね?」
「ああ。それは心配ない。その力は其方の力。消えたりはしないだろう」
ああ、よかった……。
正直この力があったからこそこの世界で生きていけるから。
無くなってしまうとただの娘になってしまう。
それだけは避けたいと思っていました。
「では。そろそろ通信を終わりにしよう」
「はい。色々と有難う御座いました。神様」
「此方こそ。色々大変だったな。有難う。舞」
つーつーつー。
通信は切れました。
それと同時に手に持っていた携帯が光に包まれ消えてしまいました。
そして。
私の記憶から神様が消えてしまっていたのです。
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