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コメント欄とチャット②

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今夜も、推しの配信がもうすぐ始まる時間だ。真美の生活は推しの配信時間に合わせて動いていると言っても過言では無い。配信の時に気になることがあると集中して見られないので、用事はその前までに終わらせるようにしているのだ。

配信が始まったと同時にチャット欄にコメントがたくさん走り出す。スパチャも花を添える。

「カナち:200円スパチャ~!ルゼーフの歌うたいながら見てる~!今夜もふぁいとぉ」

あっ、カナちさんだ。
カナちさんは天真爛漫って感じがするな。マミ~の動画のコメントも明るくて元気な感じだった。人を嫌にさせない明るいコメントは見てて良い気持ちになる。見習おう。

そんなことを考えながら配信に参加していたら、カナちさんがチャットで言ったルゼーフの歌というワードに質問をした人がいた。天真爛漫カナちさんは私の歌動画のことを明るく答えて教えていた。クセになって歌っちゃうの~とチャットで言ってくれたカナちさんに感謝の気持ちと恐怖の気持ちが生まれた。カナちさんに悪気などないだろう。

チャット欄が少しザワついた。
真美はマミ~としてコメントするべきか悩んだ。何か言った方がいいのだろうか。ゆうじさんと直哉さんの喧嘩の二の舞にならないように先手をうつべきなのだろうか。悩んで素早い反応ができないでいる間に、ルゼーフのスーパープレーが生まれ、会話はそのまま違う話題に流れていった。

真美はひとり胸を撫で下ろした。
カナちさんが何も考えずに発した一言から大変なことになってしまわないかと恐怖すらおぼえたが、取り越し苦労だったようだ。少なくとも今の時点では。

もしかしたら、カナちさんのコメントがきっかけでまたマミ~の動画を見てくれる人がいるかもしれない。みんながカナちさんのように好意的な気持ちでルゼーフのオリジナルソングを見てくれたらいいが、そうとは限らない。そのことはもう学んであるつもりだ。批判はあるかもしれないが、ルゼーフのファンとして推しを応援する気持ちで歌いました、と伝わればいいな。

マミ~の動画に歌ってみた本人として、コメントを残しておこう。チャットでは先手をうてなかったし、こっちはもう先手ではないがやっておこう。

「(固定コメント)マミ~:私はルゼーフのファンです。応援の気持ちを込めて歌ってみました。」

これでよし。改めてルゼーフのファンだと公言すると、こそばゆい気持ちと身が引き締まる気持ちがした。
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