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1章 怪盗デュークと至宝のアクアマリン
15.愛娘とお出かけします
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「ほら、さっさとアルトの情報を喋るんだ。どうせお前、会って足を開いたんだろ?・・・・・・・何を余裕そうに笑ってんだ!」
詐欺師アルトと出会ってから数日が経った。警部は返金を受けたものの、しかし騙されたことをすぐに水に流すことは心が追い付いていないようで、しつこく僕に話を聞いてくる。けれど僕はアルトさんについて喋ることはしたくないため、ただ沈黙だけで返事をしていた。
ミハエルも心配そうに僕の周りをうろちょろしては腰をさすってくる。本当に何もなかったと言ってるのに、全然信じてくれない。どれだけ僕は信用されていないんだ。
一方メルはカウンターから身を半分乗り出しじーっとこっちを見ている。
「どうしたんだい、メル」
「ママ最近遊んでくれない」
「あー・・・。本当にごめんね、ここのところ仕事が立て続いてて」
メルはぷいっと顔を背け、再びカウンターに隠れる。僕が出かけているときは町子さんが面倒を見てくれているが、しかし最近は予告なく出ずっぱのことが多かった。僕としては依頼をこなしていって少しでもメルに可愛いお洋服を買ってあげたいのだけれど、メルにとっては父親である僕と過ごす時間が大事なのだということを思い出す。
「メル、今日は仕事がないから一緒にお出かけしようか」
「先輩、そこは仕事の有無ではなくて『一緒に遊びに行きたい』と言ってあげたほうがメルちゃんも喜びますよ」
確かにミハエルの言うとおりだ。僕はメルと目線を合わせるためにしゃがんで目を合わせて言い直す。メルは頬を膨らませていたものの、しかし、こくんと頷いてはこちらに走って抱き着いてきた。かわいらしいツインテールの片方のしっぽが僕の顔にあたる。多分これは町子さんに結ってもらったのだろう。
「僕が代わりに店にいますから、先輩達は気兼ねなく遊んできてください。さすがに娘がいる前で先輩は不倫しないと思いますし」
「ミハエル、ありがとう」
メルは先ほどの不機嫌が嘘のように笑顔になり、僕の手を繋ぐ。僕もまたメルの愛らしい手を握り返し、店の扉を開いた。外は雲一つない快晴で、室内に籠るには勿体ないほどだ。
「メルはどこに行きたい?」
「お買い物!」
「よし、じゃあ大通りに行こうか」
メルは久々のお買い物が嬉しいのか、いつもより速足で僕の手を引く。最近は本当にこの子に時間を割いてあげられず、ただただ申し訳なかった。父親失格だ。僕たちは仲良く大通りに出て、鮮やかな店が並ぶ場所へと進んでいった。
「そうだメル、今日は天気がいいからお帽子を買おうか」
「うん!」
可愛いメルにはどんな帽子が似合うだろうか。リボンが付いたつばの広い麦わら帽子もいいかもしれない。メルの綺麗な金の髪を悪い大人から隠すためにも、面積が大きいもののほうがいいだろう。子供は長く同じものを着用できるわけではないが、しかし愛娘に金銭を惜しめないというのが親というものである。しかし店に入る前に一度手持ちを確認しよう。
・・・
・・・・・・・
そういえば財布・・・。あのバーに置いてきたんだった・・・。
メルは今にも店に入ろうとしているが、一度抱き上げて動きを止める。
「やら!ママ!やー!!」
「ちょっと、ちょっと待ってねメル。パパちょっと、お財布をお家に忘れちゃった」
「やー!!お家やー!!」
「お家」という単語を僕が発したせいでお出かけ中断だと思ったのだろう、メルは全力で僕の胸で抵抗をしているため、はた目から見ると誘拐犯に見える。ママと叫ぶせいで母親に助けを求めているいたいけな女の子にしか見えない。しかしここで口を手でふさぐと本当に誘拐犯みたいになる・・・!!けれど手持ち0の中で店に入るのはさすがに気が引けるためここでメルを離すわけにはいかない。どうすべきかと悩んでいると後ろから誰かが声をかけてきた。
「シアン君・・・?」
「その声・・・」
振り向くと、輝く長い金髪の男性がいた。エメラルドの瞳が僕の目に映る。アルトさんだ。先ほどまで抵抗していたメルは、知らない男性の登場に目を丸くして固まった。人見知りの子なので、知らない人の前ではとても静かなのだ。
「シアン君、またお会いしましたね。こんなところでまた貴方を見れるなんて、今日の僕はなんて幸運なのでしょう」
「アルトさん・・・。あ、違うんです。この子は僕の娘で決して誘拐とかでは」
妙な瞬間に再会をしてしまった。アルトさんはメルを興味ありげに見てから、懐から何かを取り出してメルに渡す。飴だ。メルはピンクに輝く棒付きの飴を受け取り、輝く目で眺める。
「こら、メル。お礼は?」
「ありやと!」
ふう・・・。これでメルは一旦落ち着いてくれた。僕はアルトさんにお礼を言おうとしたが、しかしアルトさんは何事もなかったように笑顔で首を縦に振った。さて、彼のおかげで無銭で店に入るという気まずい行為は避けられそうだ。今のうちに家まで戻ってお金を取りに行こうか。
「では僕たちはこれで。アルトさん本当にありがとうございました」
「え?そちらのお店に入ろうとしていたのではないのですか?」
「あー・・・。まあ、そうなんですが、あはは」
そういえば財布をアルトさんとマスターに渡したため、ここで財布がないという発言は出来ないことに気が付いた。それを言うと遠まわしに「返してほしい」と言ってるのと同じになるからだ。さて、どう言ってこの場を後にすべきだろうか。
「ひょっとしてお財布がないとか・・・」
「いえ、いえ!?忘れ物を思い出したので僕たちは一度戻る予定だったんです!では!」
「やー!飴ちゃんもっとほしい!」
去ろうとする僕の胸の中で、メルはアルトさんに手を伸ばし白いスーツを掴んだ。うそだろ、さっき貰ったばかりなのにもう食べたのか。ひょっとして飲み込んだわけじゃないよなと思いメルに口を開けてもらい確認するが口の中には砕けた破片があった。飴の食べ方が分からなくて噛んだのか。
「こら、せっかく貰ったのに何度もおねだりをするのは失礼だろ?後で買ってあげるから我慢しなさい」
「いえいえ、沢山持ってますから良いんですよ。ほらメルちゃん」
「ひゃー!」
アルトさんは次は棒付きの黄色い飴を取り出してメルに渡す。なんでそんなに飴を持っているんだろう。いや、まさかと思うが僕とメルに会うために喫茶店の捜索をしていたとかそんなことはないだろうな。そしてメルに会って懐柔しようとしていたとかじゃないだろうな。
「いえ、実は喫茶店をめぐっていればいずれは貴方に会えると思って巡っていたのです。そして会えたら娘さんと仲良くなりたいと思いまして」
向こうから先にすべてカミングアウトしてくれた。疑わしい情報を先に開示してくれたのは非常に心証がいい。一瞬ストーキングを疑ってしまい申し訳なくなってくる。
「貴方が置いていった財布をお返ししたかったのです。私は貴方から一銭たりとも金銭を受け取りたくはないんです」
「アルトさん・・・」
おそらくここで財布を拒否しても彼は延々と僕の居所を探し出して返そうとしてくるだろう。ここは素直に受け取っておこう。そうして右手にメルを抱え左手で受け取ろうと手を伸ばした僕に財布を返す。なんか、前に持っていたより二倍以上分厚くなっている気がするけれど気のせいだろうか。そしてアルトさんは僕の手首を優しく手で包んだ。
「これでお別れは絶対に嫌です。お買い物に私も付き添ってはいけませんか・・・?」
僕より背が高いのに、顎を引いて上目遣いになった。メルはアルトさんのことは飴をくれる以上に興味はないのか、今度は飴をぺろぺろ舐めながら彼をじーっとみていた。拒否反応はなさそうだからまあいいだろう。
「分かりました。ですが面白いものではありませんよ?」
「いえ、娘さんの帽子を見るのですよね?私の娘にもなるのですから喜んで御伴いたします。けれど、よければおすすめのお店がございます」
アルトさんは僕の肩に手を載せ、普段は行かない通りへと僕をエスコートする。メルは直感でこれから楽しいことを控えていると気が付いたのか、僕の体に手の甲を押し付けて遊んでいる。そこにはパパの乳首があるからあまり触らないでほしい。
段々と通りを歩く人間の格好も変わっていき、店もガラス張りのショーウィンドウが増えてきた。なんというか、ここはセレブ街というやつではないだろうか。段々歩みを遅めていく僕に気にせずアルトさんは意気揚々と僕を案内する。
「ちょっと、あの、明らかに僕みたいなのが歩いてはいけない空気がこの通りから漂っているんですが」
「言われてみれば確かに、貴方のような美しい人にこの場所はみすぼらしいですね。これは配慮が足らず申し訳ありません」
「逆!逆です!」
「ふふ、今から行くところは確かに貴族御用達ではありますが、私は顧客ですので気にしないでください。お金もすべて私が負担しますから」
僕は彼に借りしかないので、「申し訳ない」しか重ねていない。僕は首を横に振るが、しかしメルは僕の胸からぴょんと飛び出し、お目当てのお店に入っていった。
「最近の富裕層は最近できた大きな百貨店の建物に入っていくのですが、しかしやはり古き良きを重んじる貴族はこういった通りに馬車で赴くのです」
僕たちはメルに引き続いて店の中に入っていく。店の中はカタログで選んでオーダーメイドもしくは倉庫から持ってくるシステムの様で、店の内装は意外とシンプルでソファが中央に置かれていた。先に入ったメルはソファのほうに既に近づいており、店員さんは複数人でメルを止めようと慌てていた。
メルはソファに座っている人物の足にボクシングをしていたのだ。
「おや、シアン君。天使が僕のもとに降りてきたと思ったら、君とこんなところで出会うとは」
ソファには漆黒の髪に深紅の瞳を持つ麗しき青年、ディアさんが座っていた。
詐欺師アルトと出会ってから数日が経った。警部は返金を受けたものの、しかし騙されたことをすぐに水に流すことは心が追い付いていないようで、しつこく僕に話を聞いてくる。けれど僕はアルトさんについて喋ることはしたくないため、ただ沈黙だけで返事をしていた。
ミハエルも心配そうに僕の周りをうろちょろしては腰をさすってくる。本当に何もなかったと言ってるのに、全然信じてくれない。どれだけ僕は信用されていないんだ。
一方メルはカウンターから身を半分乗り出しじーっとこっちを見ている。
「どうしたんだい、メル」
「ママ最近遊んでくれない」
「あー・・・。本当にごめんね、ここのところ仕事が立て続いてて」
メルはぷいっと顔を背け、再びカウンターに隠れる。僕が出かけているときは町子さんが面倒を見てくれているが、しかし最近は予告なく出ずっぱのことが多かった。僕としては依頼をこなしていって少しでもメルに可愛いお洋服を買ってあげたいのだけれど、メルにとっては父親である僕と過ごす時間が大事なのだということを思い出す。
「メル、今日は仕事がないから一緒にお出かけしようか」
「先輩、そこは仕事の有無ではなくて『一緒に遊びに行きたい』と言ってあげたほうがメルちゃんも喜びますよ」
確かにミハエルの言うとおりだ。僕はメルと目線を合わせるためにしゃがんで目を合わせて言い直す。メルは頬を膨らませていたものの、しかし、こくんと頷いてはこちらに走って抱き着いてきた。かわいらしいツインテールの片方のしっぽが僕の顔にあたる。多分これは町子さんに結ってもらったのだろう。
「僕が代わりに店にいますから、先輩達は気兼ねなく遊んできてください。さすがに娘がいる前で先輩は不倫しないと思いますし」
「ミハエル、ありがとう」
メルは先ほどの不機嫌が嘘のように笑顔になり、僕の手を繋ぐ。僕もまたメルの愛らしい手を握り返し、店の扉を開いた。外は雲一つない快晴で、室内に籠るには勿体ないほどだ。
「メルはどこに行きたい?」
「お買い物!」
「よし、じゃあ大通りに行こうか」
メルは久々のお買い物が嬉しいのか、いつもより速足で僕の手を引く。最近は本当にこの子に時間を割いてあげられず、ただただ申し訳なかった。父親失格だ。僕たちは仲良く大通りに出て、鮮やかな店が並ぶ場所へと進んでいった。
「そうだメル、今日は天気がいいからお帽子を買おうか」
「うん!」
可愛いメルにはどんな帽子が似合うだろうか。リボンが付いたつばの広い麦わら帽子もいいかもしれない。メルの綺麗な金の髪を悪い大人から隠すためにも、面積が大きいもののほうがいいだろう。子供は長く同じものを着用できるわけではないが、しかし愛娘に金銭を惜しめないというのが親というものである。しかし店に入る前に一度手持ちを確認しよう。
・・・
・・・・・・・
そういえば財布・・・。あのバーに置いてきたんだった・・・。
メルは今にも店に入ろうとしているが、一度抱き上げて動きを止める。
「やら!ママ!やー!!」
「ちょっと、ちょっと待ってねメル。パパちょっと、お財布をお家に忘れちゃった」
「やー!!お家やー!!」
「お家」という単語を僕が発したせいでお出かけ中断だと思ったのだろう、メルは全力で僕の胸で抵抗をしているため、はた目から見ると誘拐犯に見える。ママと叫ぶせいで母親に助けを求めているいたいけな女の子にしか見えない。しかしここで口を手でふさぐと本当に誘拐犯みたいになる・・・!!けれど手持ち0の中で店に入るのはさすがに気が引けるためここでメルを離すわけにはいかない。どうすべきかと悩んでいると後ろから誰かが声をかけてきた。
「シアン君・・・?」
「その声・・・」
振り向くと、輝く長い金髪の男性がいた。エメラルドの瞳が僕の目に映る。アルトさんだ。先ほどまで抵抗していたメルは、知らない男性の登場に目を丸くして固まった。人見知りの子なので、知らない人の前ではとても静かなのだ。
「シアン君、またお会いしましたね。こんなところでまた貴方を見れるなんて、今日の僕はなんて幸運なのでしょう」
「アルトさん・・・。あ、違うんです。この子は僕の娘で決して誘拐とかでは」
妙な瞬間に再会をしてしまった。アルトさんはメルを興味ありげに見てから、懐から何かを取り出してメルに渡す。飴だ。メルはピンクに輝く棒付きの飴を受け取り、輝く目で眺める。
「こら、メル。お礼は?」
「ありやと!」
ふう・・・。これでメルは一旦落ち着いてくれた。僕はアルトさんにお礼を言おうとしたが、しかしアルトさんは何事もなかったように笑顔で首を縦に振った。さて、彼のおかげで無銭で店に入るという気まずい行為は避けられそうだ。今のうちに家まで戻ってお金を取りに行こうか。
「では僕たちはこれで。アルトさん本当にありがとうございました」
「え?そちらのお店に入ろうとしていたのではないのですか?」
「あー・・・。まあ、そうなんですが、あはは」
そういえば財布をアルトさんとマスターに渡したため、ここで財布がないという発言は出来ないことに気が付いた。それを言うと遠まわしに「返してほしい」と言ってるのと同じになるからだ。さて、どう言ってこの場を後にすべきだろうか。
「ひょっとしてお財布がないとか・・・」
「いえ、いえ!?忘れ物を思い出したので僕たちは一度戻る予定だったんです!では!」
「やー!飴ちゃんもっとほしい!」
去ろうとする僕の胸の中で、メルはアルトさんに手を伸ばし白いスーツを掴んだ。うそだろ、さっき貰ったばかりなのにもう食べたのか。ひょっとして飲み込んだわけじゃないよなと思いメルに口を開けてもらい確認するが口の中には砕けた破片があった。飴の食べ方が分からなくて噛んだのか。
「こら、せっかく貰ったのに何度もおねだりをするのは失礼だろ?後で買ってあげるから我慢しなさい」
「いえいえ、沢山持ってますから良いんですよ。ほらメルちゃん」
「ひゃー!」
アルトさんは次は棒付きの黄色い飴を取り出してメルに渡す。なんでそんなに飴を持っているんだろう。いや、まさかと思うが僕とメルに会うために喫茶店の捜索をしていたとかそんなことはないだろうな。そしてメルに会って懐柔しようとしていたとかじゃないだろうな。
「いえ、実は喫茶店をめぐっていればいずれは貴方に会えると思って巡っていたのです。そして会えたら娘さんと仲良くなりたいと思いまして」
向こうから先にすべてカミングアウトしてくれた。疑わしい情報を先に開示してくれたのは非常に心証がいい。一瞬ストーキングを疑ってしまい申し訳なくなってくる。
「貴方が置いていった財布をお返ししたかったのです。私は貴方から一銭たりとも金銭を受け取りたくはないんです」
「アルトさん・・・」
おそらくここで財布を拒否しても彼は延々と僕の居所を探し出して返そうとしてくるだろう。ここは素直に受け取っておこう。そうして右手にメルを抱え左手で受け取ろうと手を伸ばした僕に財布を返す。なんか、前に持っていたより二倍以上分厚くなっている気がするけれど気のせいだろうか。そしてアルトさんは僕の手首を優しく手で包んだ。
「これでお別れは絶対に嫌です。お買い物に私も付き添ってはいけませんか・・・?」
僕より背が高いのに、顎を引いて上目遣いになった。メルはアルトさんのことは飴をくれる以上に興味はないのか、今度は飴をぺろぺろ舐めながら彼をじーっとみていた。拒否反応はなさそうだからまあいいだろう。
「分かりました。ですが面白いものではありませんよ?」
「いえ、娘さんの帽子を見るのですよね?私の娘にもなるのですから喜んで御伴いたします。けれど、よければおすすめのお店がございます」
アルトさんは僕の肩に手を載せ、普段は行かない通りへと僕をエスコートする。メルは直感でこれから楽しいことを控えていると気が付いたのか、僕の体に手の甲を押し付けて遊んでいる。そこにはパパの乳首があるからあまり触らないでほしい。
段々と通りを歩く人間の格好も変わっていき、店もガラス張りのショーウィンドウが増えてきた。なんというか、ここはセレブ街というやつではないだろうか。段々歩みを遅めていく僕に気にせずアルトさんは意気揚々と僕を案内する。
「ちょっと、あの、明らかに僕みたいなのが歩いてはいけない空気がこの通りから漂っているんですが」
「言われてみれば確かに、貴方のような美しい人にこの場所はみすぼらしいですね。これは配慮が足らず申し訳ありません」
「逆!逆です!」
「ふふ、今から行くところは確かに貴族御用達ではありますが、私は顧客ですので気にしないでください。お金もすべて私が負担しますから」
僕は彼に借りしかないので、「申し訳ない」しか重ねていない。僕は首を横に振るが、しかしメルは僕の胸からぴょんと飛び出し、お目当てのお店に入っていった。
「最近の富裕層は最近できた大きな百貨店の建物に入っていくのですが、しかしやはり古き良きを重んじる貴族はこういった通りに馬車で赴くのです」
僕たちはメルに引き続いて店の中に入っていく。店の中はカタログで選んでオーダーメイドもしくは倉庫から持ってくるシステムの様で、店の内装は意外とシンプルでソファが中央に置かれていた。先に入ったメルはソファのほうに既に近づいており、店員さんは複数人でメルを止めようと慌てていた。
メルはソファに座っている人物の足にボクシングをしていたのだ。
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