復讐のレヴェヨン

猫屋敷 鏡風

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défendu

マリー=アンジュ・マクシミリアン

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「レオポルド!私、何か間違ってる?」

マクシミリアン邸の庭で紅茶を飲みながら、マリー=アンジュは向かい側に座る幼馴染のレオポルド・マルスラン・トゥシャールに愚痴を漏らす。

「いや、君の考えは正しいよ。お姉さんが後継を授からないなら君が……合理的だと思う。でも肝心のはどうなんだ?」

心配そうなレオポルドに聞き返され、マリー=アンジュは唇を噛み締めた。

……ナディアに責められる姉を庇った日、自分はナディアに向かってはっきりと言ってしまった。
姉が後継を授からなかった場合、自分がシャンデルナゴール家のに嫁いで後継を産むと。

しかしその肝心の彼、ロイク・シルヴェストル・シャンデルナゴールは自分を女として見ていないとマリー=アンジュは内心分かっていた。

「あいつは…ロイクは昔から自由な奴だからさぁ、多分シャンデルナゴール家の事とか…増してや結婚の事なんて全く眼中に無いと思うよ。そういうのは全部兄のエドワールさんに任せっきりだと思う。」

次々と現実を突きつけてくるレオポルド。しかし彼の言葉は全て事実である。

「でも…お義兄様とお姉様に後継が産まれないならロイクと私が子供を作るしかないじゃない!それが両家の為でしょ?」

両家の為…口ではそう言ったがマリー=アンジュの本心は違った。

「マリー=アンジュ、それは君自身の為じゃないのか?」

即座にレオポルドに図星を突かれ、マリー=アンジュの心臓が強く脈打った。

「俺は君とロイクの幼馴染だ。ずっと一緒に育ってきたんだから君の気持ちに気付かない訳ないだろ?」

レオポルドの真剣な眼差しに、マリー=アンジュは思わず目を背け俯いた。そして下を向いたまま答える。

「そうよ…私はずっとロイクの事が好き……。お姉様には悪いけど後継が出来ないのは私にとっては好都合だわ。ロイクの婚約者になる口実が出来るんだもの。本当、最低な妹ね。」

気まずい沈黙が2人の間に流れた。
やがて、レオポルドが口を開いた。

「…それで、あいつの事はどう説得するんだ?というより、あいつは今どこにいるんだ?」

レオポルドの問に答えられずまた黙り込んでしまうマリー=アンジュ。彼の言う通り、まずは今現在行方不明になっているロイクを探す事が先決だ。ナディアに自分がロイクの子を産んでみせると言った時にも同じことを言われた。

『マリー=アンジュ…あなた、面白い娘ねぇ…。良いわ。やってごらんなさい。出来るものなら…ね。ただ、ロイクは今行方不明なのよ。それも後継だの政略結婚だの親の決めた人生を歩むのが嫌になって家出したと置き手紙に書いていたわ。まあ仮にも私の息子だから召使達に捜索はさせているけれど……。マリー=アンジュ、どうしてもロイクに嫁ぎたいならまずはあの子を見つけてきてちょうだい、でないと話にならないわ。それにあの子、あなた如きの手に負えるかしらねぇ。』

そう言った時のナディアの不敵な笑みを思い出し、マリー=アンジュは眉間に皺を寄せた。
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