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欲望の館

信憑性

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「みんな大変!片須君と毒島君、車に轢かれて意識不明の重体だって!」

朝早く、学校でその話を聞いて、音緒はぎょっとした。
しかし、すぐにただの偶然だと思い直した。


「皆、ホームルーム始めるわよ…」

暫くして入ってきた担任の口調は暗かった。

「皆、落ち着いて聞いてね…たった今、片須君と毒島君が亡くなりました…」

その日は生徒が2人死んだことで、授業は中止になった。

早く家に帰ることができた音緒は、『欲望の館』を見ていた。

マジかよ…2人いっぺんに死ぬなんていくらなんでも偶然とは言えないよな…
いや、でもこんなサイトの書き込みで人が死ぬとか論理的にあり得ない。

音緒は気になって、もう一つ『望み』を書いてみた。

『蛙汰右を辞めさせてほしい。』

蛙汰右(アタウ)は、音緒の学校の数学教師だ。この前、宿題を提出出来なかったのは片須たちが破いた所為だと知りながら、音緒を居残りさせた教師である。

これも叶えたなら…信じてみても良いかな…

次の日学校に行くと、校門のところにマスコミが押し寄せていた。

なんだろう。
と思いながらもスルーして教室に向かった。

ーーー

「ねえ!外の騒ぎさぁ、蛙汰右先生が逮捕されたかららしいよー。」

「え?!まじ?蛙汰右何やらかしたの?」

「痴漢だって!」

「うわぁーきもーい!」

女子生徒たちのその話を聞いて、音緒は『欲望の館』を信じざるを得なくなった。

「でさあ、痴漢の被害者、隣のクラスの山居さんだって!山居さん、ショックで引きこもってるらしいよ。」

「うわー、可哀想…」

関係ない奴まで巻き込んだか?

音緒は少し悪いことをしたと思ったが、その考えはすぐに取り消された。

「でもさあ、山居の奴、いじめっ子だからバチが当たったんじゃねーの?」

1人の男子生徒が言った。
すると、他の生徒達も、確かに!と同意し出した。

「そうだよね!山居さんにいじめられてた子の気持ち考えたら…いい気味よね!」

「ざまあみろよ!」

「片須とか毒島もだけどさぁ、なんか昨日からウザい奴ばっか消えるよな♪」


クラスメートたちの反応を見て、音緒は思わずフッと笑ってしまった。

マジかよ…あのサイト…
快感半端ねえな…『欲望の館』最高!
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