異世界転生、したくないです。

酒とささくれ

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プロローグ

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 頭がぐわんぐわんする。脳がゆれる。当然と言えば当然だ、なにせ酒と薬をちゃんぽんしたんだからな。よくないこととはわかっているが、残念なことに慣れたことだ。自傷を覚え、薬を覚え、酒を覚え、煙を覚え、どれか1つに偏ってはいけないとハイブリッドにやってきたが、ここいらが限界だ。いつもより高い酒と、多く薬を入れるだけ。そうすれば最高にハイってやつだが、まどろんでろくに動けなくなる。あとは首をくくるだけ。それも研究してあんだ。といっても、ほどけにくい紐の結び方に、自重をかけても気道が確保できる紐の巻き方程度で、どれも少し調べたり実践すればわかることなんだが。これくらいお膳立てしてやらないと死なないんだから困ったものだ。
 まぁ、振り返ってみれば全部が全部悪い人生ではなかったと思う。少なくとも共通の話題で盛り上がれれる友人なんてはちょくちょくいたし、地元は住みやすくていいところだった。酒はうまいし、そん時に吸う煙はもう最高だ。めちゃくちゃうんめぇんだ―――とはいえ家庭環境が悪すぎた、機能不全家族ってやつ。成人してから子どもの頃のことでうだうだ言うな、なんていう人がいるが、むしろこういうのってのは後からくるんだ。渦中にいるときはソレしか知らないからソレが当たり前でさ。何時間も一方的に怒鳴られるのも、殴られるのも、蹴られるのも、引きずられて家追い出されるのも、飯ぬかれるのも。比較対象を知らないから絶対的な辛さだけで済む、皮肉なことにね。世間一般ではソレが普通ではないと、おかしいことと知ってしまうとそこに相対的な辛さも加わる、どうして自分だけって。それにこういうのってどういうわけかなかなか人に話せない。他人に言ってはいけない暗示がかかっているというか、想起すること自体を体が拒否しているというか。そうこうしているうちに大人になって、普通のふりするけど内側はこじらせまくってるやつが爆誕して。ってあーあーあーなんでこんなしみったれたこと考えてんだ最期だってのに。ポジティブにいこう、死は救済だ。
 私は貝になりたいなんてのがあったが、いやぁ貝もいいかな。何にもなりたくないよ。無がいいです、記憶とかもろもろ消してもらって。一時は普通の家庭がすごくうらやましかったこともあります、ええ。家族が笑って歩いてくるのとすれちがうだけで謎のダメージもらってた時期がありましたとも。でもそれも今は昔、もう慣れました、私は元気です。
 ……っていうか今際の際長くないか?さすがに死ぬのは初めてだからよくわからない。幻聴なのか遠くで赤子の泣き声がする、いよいよか。死後の世界とか本当にあるのかな、三途の川ってやっぱ渡るのかな。天国には行けそうにないけど地獄の沙汰も金次第なのかね。金なんてなし死後の世界なぞないに越したことはないのだが。んー泣き声が大きくなってきた。頼む……静かに…。烏羽玉の夢見る蓮は露知らず泥より出でてそのみこそ知れ、なっつって辞世の句。個人的には今川氏真のが好きだけど実は辞世の句じゃないとかなんとか。というかうるさい…誰だよギャン泣きしてるの、ってお前だよ。……ん??のか???
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