私のための小説

桜月猫

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107話

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「説明はいりませんよ。◯◯製菓の社長で白の父親の白父さん」

 公の言葉に白父も萌衣も萌香も驚いていた。

「公様。知っていたのですか?」

 1番早く驚きから返ってきた萌衣から問いかけた公は頷いた。

「こういうこともあると思ったから少し話を聞いたんだよ」
「話を聞いた?誰からだい?」

 驚きから返ってきた白父は、情報提供者が気になった。

「相手のプライバシーもありますし、それは言えませんね」

 白父の問いを公は笑顔でさらりとかわした。
 そんな公の対応に白父は頭を掻きながら少し視線を鋭くした。

「そうか。代わりに1つ聞いていいかい?」
「答えられることなら」

 笑顔を崩さない公。

「私がここに来るように仕向けたのは君なのかい?」

 白父の言葉に萌衣も萌香も驚きながら公を見た。

「どうしてそう思うのですか?」
「簡単なことだよ」

 白父は公に笑顔を向けた。

「白と君に逃げられてから2週間程の間、黒服達は君達を見つけることが出来なかった」

 その言葉に萌香は少し表情を固くしたが、白父は気にした様子もなく言葉を続けた。

「それなのに、昨日になって黒服達は君を見つけ、さらにこの家で白がお世話になっていることがわかったという報告があった。
 昨日は白が見つかったことが嬉しくて気がつかなかったが、冷静に考えるとあまりに事が上手く進みすぎているとは思わないかい?」

 萌香が「ハッ!」と息をのみ、萌衣は納得したように頷いた。

「そしたら、さっき君は誰かから話を聞いて私のことを知っていたと言った。
 なら、君が昨日、わざと黒服達に見つかり、この家に白が居ることを気づかせ、私をここに呼んだと考えるのが普通じゃないかな?」

 白父が「どうだろう?」と笑顔を向けてきたのに対し、公は笑顔を返した。

「残念ながら、高校生にそんなこと出来ませんよ」

 苦笑しながら否定する公へ疑念の目を向ける白父。

「君は普通の高校生には見えないけどね」

 萌香が頷いて全力肯定していたので、公はさらに苦笑した。

「普通の高校生ですよ」

 それでも普通と言う公に白父は苦笑した。

「普通の高校生なら、匿っている家出した子の親がいきなりやって来たこの状況で、そんなに冷静に対応できないよ」

 これには萌衣も頷いていたので、公は内心「おいおい」とツッコみながら「なら」と考えた。

「えっ。やばっ。見つかった。白の親がやって来た。どうしよう。白に知らせないと。いや。それより逃がすために時間稼ぎしたほうがいいのか?あぁ。どうしよう。って感じに慌てふためいたほうがよかったですか?」

 公のこの返しに、一瞬ポカンとした白父だか、すぐに笑いだした。その隣では萌香は呆然としていた。

「ホントに君は高校生かい?」

 笑いながら面白そうに白父は公へ問いかけた。

「えぇ。間違いなく高校生ですよ」

 また少し笑った白父は萌衣に視線を向けた。

「なるほど。萌衣さんが主人として選ぶだけのことはあるね」
「でしょ?」

 萌衣はどこか誇らしげだった。

「で、白とは会わせてくれるのかい?」

 ひとしきり笑った白父は真面目な顔に戻った。

「えぇ。見つかってしまったからには逃げも隠しもしませんが、その代わり条件があります」
「条件かい?」

 まさかそんなことを言ってくるとは思わなかった白父は少し驚いていた。

「えぇ。まず、話し合いはこの家でしてください。どんな結果になるにせよ、関わったからには最後まで見届けたいですからね。
 そして、今、この家には萌衣さんを除いて全員学生で未成年です。なので、カッとなって手をあげるなどの暴力は止めてください。
 この2つの条件が守れるのでしたら白と会わせます」

 条件を聞いた白父は顎に手をあてて考えはじめた。

「なぜ私達があなたの言うことを聞かなければいけないのですか」

 萌香が食って掛かってきたが、それを白父が手で制した。

「社長!」

 萌香は驚いた表情で白父を見つめた。

「落ち着きなさい、萌香」
「はい。申し訳ございません」

 萌香は1歩下がって白父の後ろに控えた。

「その条件をのまないと白には会わせてくれないというのですね」
「えぇ」

 すると、白父の表情が厳しいものへと一転し、鋭い視線を公へ向けた。

「娘を迎えにきた親に条件をつけるなんていい度胸だね。その条件をこちらがのむ必要なんてないから無理にでも連れて帰らせてもらうよ」

 家の中に入ってこようとする白父の前に公が立ちはだかった。

「その場合、不法侵入で警察を呼びますよ」

 公はいつでも電話ができるようにスマホを取り出した。

「なら、こちらは君を娘を監禁しているという理由で警察に突き出すこともできるが」

 対抗するように白父もスマホを取り出した。

「どうぞご自由に」

 公は1歩も引くことなく白父と見つめあった。
 2人の言い合いが警察に言う言わないというところにまで発展して激しくなるとは思ってもいなかった萌香は驚き、オロオロしていた。
 対して萌衣は公の後ろに控えて堂々した様子で2人の会話の決着を見つめていた。
 すると、白父が「フッ」と笑って表情を緩めた。

「まさか、私相手に1歩も引かずにここまで言い合うとはね」

 スマホをしまった白父から関心と興味の目を向けられた公は、スマホをしまいながら笑顔で問いかけた。

「それで、どうします?」
「あぁ。その条件をのむよ。だから、白に会わせてくれるかい?」

 白父が公の条件をあっさりとのんだことに萌香は今日何度目の驚きをうけた。

「社長。よろしいいのですか?」
「あぁ。娘が自分の意思でここにいるのに、そらを監禁だなんだと騒ぎ立てて警察に言ったところで警察が取り立ててくれるわけもないし、そんなことをして恥をかいて困ることになるのは私のほうだ。それに、警察に頼らないと家出した娘を連れ戻せないなんて親として失格だと思わないかい?」

 問いかけられた萌香は軽く頭を下げた。

「では、こちらへどうぞ」
「失礼するよ」

 萌衣が用意したスリッパに履き替えた白父は、先導する公のあとについていった。
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