16 / 125
15話
しおりを挟む
翌日の日曜日。今日は夢ののしかかりで公は目覚めた。
「お義兄さま。朝ですわよ」
「何時………だ?」
「6時ですわ」
「さすが早すぎ。9時まで寝かせてくれ」
公は頭まで布団をかぶって起きることを拒否した。
「仕方ありませんわね」
そう言いながら夢は布団に潜り込んで一緒に寝始めた。
もとより起こす気はなく、ただただ公と一緒に寝たかっただけなので、すぐに夢も夢の中へと入っていった。
*
【ようこそにゃ!夢の国へにゃ!】
公は目の前のネコが喋っている光景に頭を悩ませた。
【どうされましたかにゃ?】
ネコは首を傾げるが、公からの返事はない。
「作者」
公が作者を呼びますが、返事はありません。
「作者!」
【ここは夢の国にゃので、作者の干渉はにゃいにゃ】
「確かに今俺は寝てるが、今まで夢の国なんて来たことないぞ」
【その夢じゃにゃいにゃ】
「じゃあどの夢なんだ?」
【義妹の夢のことにゃ】
ネコの説明に公は考える。
「つまり、夢の夢の国と?」
【そういうことにゃ。『夢』と『夢』はニュアンスで聞き分けてくださいにゃ。義妹の夢はゆめで寝てる時見る夢がゆめですにゃ】
「俺は聞き分けられるとして、読者は?」
【気合いと根性でお願いしますにゃ】
「いや。ムリだから」
【では、話の流れから大体でいいんで読みとってくださいにゃ】
「分かりやすくはしないんだな」
【めんどくさいにゃ】
「お前も作者と一緒か!」
【あんな理不尽な存在と一緒にしてほしくにゃいにゃ!】
抗議の声をあげるネコ。
"でもな~。今の話の流れを考えるとどう考えても作者と似たようなものだと思うんだけど"
公はジーとネコを見た。
【夢のところまで案にゃいするにゃ】
勝手に歩き出すネコを見ながら公は頭を掻いた。
"こうなった以上、ついていくしかないんだよな"
諦めのため息を吐きながら公はネコのあとをついていった。
やって来たのは1面の花畑で、その中心で夢はたくさんの動物に囲まれていた。
【にゃ~】
ネコが鳴くと夢の視線がこちらに向いた。直後、公を見た夢は驚いたが、すぐに笑顔になると走ってきて公に抱きついた。
「お義兄さま!」
公のお腹に顔を擦り付ける夢。その足元にやって来たネコは夢の足に体を擦り付ける。
「お義兄さまを連れてきてくれてありがとうですわ、ネコさん」
【どういたしましてにゃ】
ネコに微笑みかけた夢はまた顔を擦り付けはじめた。
「今日はお義兄さまとデートできるだけでなく、こうして夢の中でも会えるなんて最高の1日ですわ」
満面の笑みで見上げてきた夢の頭を公が撫でると、夢は少し顔を赤くした。
「そうですわ」
公から離れると夢は一瞬で大人になり、公は小学生の身長まで縮んだ。
「おぉ」
"さすが夢の中。なんでもありだな"
なんて公が思っていると夢に抱きしめられた。
「可愛いですわー!」
現実ではどうやっても抱きしめられる側の夢なので、夢の中とはいえ、こうして公を抱きしめる夢が叶って大満足だった。
その後はなにをするわけでもなく、夢は終始笑顔で公を抱きしめていた。
*
目が覚めた公が時計を見るとすでに11時。1時間も経っていないと思っていた公は少し驚いた。
夢ってそんなものでしょ?
"作者"
おはよう。よく眠ってたわね。
"どういうことだ?"
どういうとは?
"夢が繋がるなんて普通あり得ないからお前の仕業だろ"
正解~!どう?楽しかった?
"不思議な体験ではあったな。しかし、お前でも干渉できない世界があるんだな"
私も眠れば夢の世界に行くことはできるわよ。でも、その場合はロマに執筆を任せないといけないからあまり自由にできないんだよね~。ホントならみんなの夢に入っていろいろイタズラしたいんだけどね~。
"それを聞いて安心したよ"
公は夢を揺すって起こした。
「夢。起きろ」
「んぁ。お義兄さま………」
寝ぼけ眼の夢は公に抱きついてニヘ~と笑った。
「どうした?」
「さっきまで見ていた夢の中で、大人になった私が子どもになって可愛くなったお義兄さまを抱きしめていたのですけれど、やっぱりこうして抱きついているほうがわたくしは落ち着きますわ」
だったらと、公は夢を抱きしめた。
「幸せですわ」
そう呟きながら夢は公のお腹に顔を擦り付けた。
「夢。ごめんな」
「どうしてお義兄さまが謝るのですか!?」
夢は驚いて公を見上げた。
「少しだけ寝るつもりが、11時まで寝てしまったからな」
一瞬ポカンとした夢だが、クスクスと笑い出した。
「なんで笑うんだ?」
「もともと今日のデートは昼から出かけようと考えていましたわ」
「そうなのか?」
「はい。ですから、お義兄さまが謝る必要はどこにもないですわ」
ホッとした様子の公を見て、夢はまたクスクスと笑った。
「では、昨日渡した服に着替えてダイニングに来てくださいませ」
「わかったよ」
夢が出ていったので手早く着替えを終えた公は部屋を出て違和感を感じた。なんだろうと考えながら1階に降りた時に公は違和感の正体に気づき、ダイニングに入った。
「母さん達は?」
キッチンで昼食の準備をしていた夢に問いかける。
「義母さま達には2人っきりになりたいので外出してもらっていますわ」
「そうなんだ」
「お義兄さまは昼食ができるまでゆっくりと待っていてくださいませ」
「わかったよ」
椅子に座った公は、料理している夢の姿を見つめた。
公に見つめられる中、夢は玉ねぎを荒みじんにすると1センチ程の大きさに切った鶏肉とともにフライパンへ。鶏肉に火が通ったらご飯入れて塩コショウして軽く炒め、さらにケチャップを入れてチキンライスを作り、形を整えながらお皿に盛り付けた。
次に夢はボールに卵を3つ割り入れ、よーく混ぜてからフライパンへ。箸で適度に混ぜながら半熟状態にすると、オムレツにするのではなくそのままチキンライスに乗せた。
"オムレツにして割るっていうのをやってみたい思いはありますけど、失敗する確率が高いのでムリせずにいきますわ"
最後にケチャップでハートを描けばオムライスの完成。
夢は早速出来上がったオムライスを公の前に置いた。
「どうぞ、召し上がれですわ」
「いただきます」
公はオムライスを一口。
「うん。美味しい」
公の美味しいという言葉と笑顔にホッとしつつも表情が華やいだ夢。
「夢も食べなよ」
「はいですわ」
公の隣に座った夢はオムライスを食べ始めた。そうしてゆっくりと昼食の時間は過ぎていき、オムライスを食べ終えた公は手を合わせた。
「ごちそうさま」
「お粗末様ですわ」
夢は食後のコーヒーを公に差し出し、自分には紅茶を用意した。
「ありがとう。それで、これからどこに出かけるんだ?」
「デパートに行って春物の小物を見に行きたいですわ」
「わかった」
急がない2人はゆっくりと飲み物を飲んでいた。
なんなのかしら、こののんびりとした雰囲気は。つまらないわね。
「つまらなくて結構」
「作者の都合に付き合う気はないですわ」
熟年夫婦みたいな雰囲気だよ。
「んぐっ!ゴホッゴホッ!」
私の熟年夫婦という言葉に反応した夢がむせた。
「大丈夫か?夢」
「だ、大丈夫ですわ」
フッフッフ。こんな簡単に反応するなんて、まだまだだな、夢。
「作者。死んでくださいませ」
アッハッハ。安心しろ。俺が死ぬときがお前達の命日だ!
「お前と一緒に死ぬなんて最悪だな」
「ゴメン被りたいですわ」
でも、作者と登場人物は一蓮托生だから、どんなにイヤだと言っても死ぬときは一緒なのだよ!ハーハッハ!
「お義兄さま。そろそろ行きませんこと」
「そうだな」
あっ。無視しやがった。
食器の片付けを終えて家を出た2人は目的地のデパートにやって来た。
「ここの4階に小物を売っているお店があるのですわ」
なので、エレベーターに乗ったのだが、さすがに日曜ということもあってエレベーターはぎゅうぎゅう詰めで、2人は奥に押し込まれた。
「大丈夫か?」
壁に両手を突っ張り、夢のスペースを作る公。夢を公の体にくっつきながら頷いた。
「お義兄さまがスペースを作ってくださってるので大丈夫ですわ」
「ならよかったけど、これは4階で出れるのか?」
ムリだろうね。
「作者。お前の嫌がらせか?」
日曜日なんだから俺が嫌がらせしなくてもこんなもんなんだって。
「それもそうだな。すまんかったな、作者」
いいよ。それに、このままだと話が進まないから、
俺はエレベーターが4階に着いた瞬間に2人をエレベーターの外へワープさせた。
「こんな気前のいいことをするなんて、なにを企んでやがる?」
公が俺を疑ってきた。そんな公の後ろでは、頬を膨らましてむくれている夢。
おや、夢。どうしてそんなにむくれてるのかな?ニマニマ。
「なんでもないですわ!お義兄さま。行きましょう」
「え?あぁ」
夢が公の手を引いて歩き出したので、公は俺を問い詰めることができなくなった。
「ここですわ」
お店に着くころには夢の機嫌もなおって笑顔になっていたので、公も俺を気にするのをやめて笑顔になった。
お店の中に入ると、早速夢はいろんな小物を見て回った。そんな中で夢が手に取ったのは青い蝶の髪飾りと赤いリボンの髪飾り。
「お義兄さま。どちらのほうが夢に似合いますでしょうか」
男性が女性にされて困る質問がやってきましたね。さぁ、公は正しい答えを出せるのでしょうか。
私がワクワクしながら見てると、公は蝶のほうを指さしました。
「蝶のほうが夢に似合ってるぞ」
「では、蝶のほうを買ってきますわ」
「いや」
公は蝶の髪飾りを夢から取るとレジに行って会計を済ませ、夢の髪につけてやった。
「プレゼントだ」
公の粋な計らいに夢は顔を赤くしながら蝶の髪飾りを触った。
「一生大事にしますわ!」
満面の笑みを浮かべた夢は公の腕に抱きついた。
うわ~。キザだね~。さすがシスコンの天然ジゴロだね~。
「だから、その称号やめろ!」
ムリだよ。1度ついた称号は2度ととれないのよ。
「最悪だ」
落ち込んだ公だが、夢とのデートの最中なのですぐに気持ちを切り替えた。
「このあとはどうするんだ?」
「あとはウィンドウショッピングをしようと思いますわ」
「そうか」
お店を出た2人は腕を組んでいろいろとお店を見て回る中でクレープ屋さんを見つけた。
「お義兄さま。クレープ食べませんか?」
「いいよ」
2人はレジにやって来た。
「いらっしゃいませ。なににいたしますか?」
「夢はなにがいい?」
「わたくしはチョコバナナにしますわ」
「俺はキャラメルティラミスで」
「かしこまりました。2つで1060円です」
公がお金を払い、出来上がったクレープを受け取ってチョコバナナのほうを夢に渡した。受け取った夢は早速一口。
「美味しいですわ」
夢の笑顔を見ながら公も一口。
「確かに美味いな」
「お義兄さま。一口どうぞですわ」
差し出されたクレープを一口食べてから公も自分のクレープを夢に差し出した。
「お礼に一口どうぞ」
少し照れながらも一口かじる夢。
「美味しいですわ」
さらに笑顔になる夢。
☆
「あ~あ。お暑いわね~」
《マスター。ひがまないでください。みっともないですよ》
「みっともなくていいですよーだ。2人は楽しそうにクレープを食べてるし」
《微笑ましい光景じゃないですか》
「妬ましいから邪魔しにいこうかしら」
《止めてください》
「はぁ~」
私はため息を吐いてふて腐れます。
《マスター。早く続けてください》
「15話はこれにて終了!」
「お義兄さま。朝ですわよ」
「何時………だ?」
「6時ですわ」
「さすが早すぎ。9時まで寝かせてくれ」
公は頭まで布団をかぶって起きることを拒否した。
「仕方ありませんわね」
そう言いながら夢は布団に潜り込んで一緒に寝始めた。
もとより起こす気はなく、ただただ公と一緒に寝たかっただけなので、すぐに夢も夢の中へと入っていった。
*
【ようこそにゃ!夢の国へにゃ!】
公は目の前のネコが喋っている光景に頭を悩ませた。
【どうされましたかにゃ?】
ネコは首を傾げるが、公からの返事はない。
「作者」
公が作者を呼びますが、返事はありません。
「作者!」
【ここは夢の国にゃので、作者の干渉はにゃいにゃ】
「確かに今俺は寝てるが、今まで夢の国なんて来たことないぞ」
【その夢じゃにゃいにゃ】
「じゃあどの夢なんだ?」
【義妹の夢のことにゃ】
ネコの説明に公は考える。
「つまり、夢の夢の国と?」
【そういうことにゃ。『夢』と『夢』はニュアンスで聞き分けてくださいにゃ。義妹の夢はゆめで寝てる時見る夢がゆめですにゃ】
「俺は聞き分けられるとして、読者は?」
【気合いと根性でお願いしますにゃ】
「いや。ムリだから」
【では、話の流れから大体でいいんで読みとってくださいにゃ】
「分かりやすくはしないんだな」
【めんどくさいにゃ】
「お前も作者と一緒か!」
【あんな理不尽な存在と一緒にしてほしくにゃいにゃ!】
抗議の声をあげるネコ。
"でもな~。今の話の流れを考えるとどう考えても作者と似たようなものだと思うんだけど"
公はジーとネコを見た。
【夢のところまで案にゃいするにゃ】
勝手に歩き出すネコを見ながら公は頭を掻いた。
"こうなった以上、ついていくしかないんだよな"
諦めのため息を吐きながら公はネコのあとをついていった。
やって来たのは1面の花畑で、その中心で夢はたくさんの動物に囲まれていた。
【にゃ~】
ネコが鳴くと夢の視線がこちらに向いた。直後、公を見た夢は驚いたが、すぐに笑顔になると走ってきて公に抱きついた。
「お義兄さま!」
公のお腹に顔を擦り付ける夢。その足元にやって来たネコは夢の足に体を擦り付ける。
「お義兄さまを連れてきてくれてありがとうですわ、ネコさん」
【どういたしましてにゃ】
ネコに微笑みかけた夢はまた顔を擦り付けはじめた。
「今日はお義兄さまとデートできるだけでなく、こうして夢の中でも会えるなんて最高の1日ですわ」
満面の笑みで見上げてきた夢の頭を公が撫でると、夢は少し顔を赤くした。
「そうですわ」
公から離れると夢は一瞬で大人になり、公は小学生の身長まで縮んだ。
「おぉ」
"さすが夢の中。なんでもありだな"
なんて公が思っていると夢に抱きしめられた。
「可愛いですわー!」
現実ではどうやっても抱きしめられる側の夢なので、夢の中とはいえ、こうして公を抱きしめる夢が叶って大満足だった。
その後はなにをするわけでもなく、夢は終始笑顔で公を抱きしめていた。
*
目が覚めた公が時計を見るとすでに11時。1時間も経っていないと思っていた公は少し驚いた。
夢ってそんなものでしょ?
"作者"
おはよう。よく眠ってたわね。
"どういうことだ?"
どういうとは?
"夢が繋がるなんて普通あり得ないからお前の仕業だろ"
正解~!どう?楽しかった?
"不思議な体験ではあったな。しかし、お前でも干渉できない世界があるんだな"
私も眠れば夢の世界に行くことはできるわよ。でも、その場合はロマに執筆を任せないといけないからあまり自由にできないんだよね~。ホントならみんなの夢に入っていろいろイタズラしたいんだけどね~。
"それを聞いて安心したよ"
公は夢を揺すって起こした。
「夢。起きろ」
「んぁ。お義兄さま………」
寝ぼけ眼の夢は公に抱きついてニヘ~と笑った。
「どうした?」
「さっきまで見ていた夢の中で、大人になった私が子どもになって可愛くなったお義兄さまを抱きしめていたのですけれど、やっぱりこうして抱きついているほうがわたくしは落ち着きますわ」
だったらと、公は夢を抱きしめた。
「幸せですわ」
そう呟きながら夢は公のお腹に顔を擦り付けた。
「夢。ごめんな」
「どうしてお義兄さまが謝るのですか!?」
夢は驚いて公を見上げた。
「少しだけ寝るつもりが、11時まで寝てしまったからな」
一瞬ポカンとした夢だが、クスクスと笑い出した。
「なんで笑うんだ?」
「もともと今日のデートは昼から出かけようと考えていましたわ」
「そうなのか?」
「はい。ですから、お義兄さまが謝る必要はどこにもないですわ」
ホッとした様子の公を見て、夢はまたクスクスと笑った。
「では、昨日渡した服に着替えてダイニングに来てくださいませ」
「わかったよ」
夢が出ていったので手早く着替えを終えた公は部屋を出て違和感を感じた。なんだろうと考えながら1階に降りた時に公は違和感の正体に気づき、ダイニングに入った。
「母さん達は?」
キッチンで昼食の準備をしていた夢に問いかける。
「義母さま達には2人っきりになりたいので外出してもらっていますわ」
「そうなんだ」
「お義兄さまは昼食ができるまでゆっくりと待っていてくださいませ」
「わかったよ」
椅子に座った公は、料理している夢の姿を見つめた。
公に見つめられる中、夢は玉ねぎを荒みじんにすると1センチ程の大きさに切った鶏肉とともにフライパンへ。鶏肉に火が通ったらご飯入れて塩コショウして軽く炒め、さらにケチャップを入れてチキンライスを作り、形を整えながらお皿に盛り付けた。
次に夢はボールに卵を3つ割り入れ、よーく混ぜてからフライパンへ。箸で適度に混ぜながら半熟状態にすると、オムレツにするのではなくそのままチキンライスに乗せた。
"オムレツにして割るっていうのをやってみたい思いはありますけど、失敗する確率が高いのでムリせずにいきますわ"
最後にケチャップでハートを描けばオムライスの完成。
夢は早速出来上がったオムライスを公の前に置いた。
「どうぞ、召し上がれですわ」
「いただきます」
公はオムライスを一口。
「うん。美味しい」
公の美味しいという言葉と笑顔にホッとしつつも表情が華やいだ夢。
「夢も食べなよ」
「はいですわ」
公の隣に座った夢はオムライスを食べ始めた。そうしてゆっくりと昼食の時間は過ぎていき、オムライスを食べ終えた公は手を合わせた。
「ごちそうさま」
「お粗末様ですわ」
夢は食後のコーヒーを公に差し出し、自分には紅茶を用意した。
「ありがとう。それで、これからどこに出かけるんだ?」
「デパートに行って春物の小物を見に行きたいですわ」
「わかった」
急がない2人はゆっくりと飲み物を飲んでいた。
なんなのかしら、こののんびりとした雰囲気は。つまらないわね。
「つまらなくて結構」
「作者の都合に付き合う気はないですわ」
熟年夫婦みたいな雰囲気だよ。
「んぐっ!ゴホッゴホッ!」
私の熟年夫婦という言葉に反応した夢がむせた。
「大丈夫か?夢」
「だ、大丈夫ですわ」
フッフッフ。こんな簡単に反応するなんて、まだまだだな、夢。
「作者。死んでくださいませ」
アッハッハ。安心しろ。俺が死ぬときがお前達の命日だ!
「お前と一緒に死ぬなんて最悪だな」
「ゴメン被りたいですわ」
でも、作者と登場人物は一蓮托生だから、どんなにイヤだと言っても死ぬときは一緒なのだよ!ハーハッハ!
「お義兄さま。そろそろ行きませんこと」
「そうだな」
あっ。無視しやがった。
食器の片付けを終えて家を出た2人は目的地のデパートにやって来た。
「ここの4階に小物を売っているお店があるのですわ」
なので、エレベーターに乗ったのだが、さすがに日曜ということもあってエレベーターはぎゅうぎゅう詰めで、2人は奥に押し込まれた。
「大丈夫か?」
壁に両手を突っ張り、夢のスペースを作る公。夢を公の体にくっつきながら頷いた。
「お義兄さまがスペースを作ってくださってるので大丈夫ですわ」
「ならよかったけど、これは4階で出れるのか?」
ムリだろうね。
「作者。お前の嫌がらせか?」
日曜日なんだから俺が嫌がらせしなくてもこんなもんなんだって。
「それもそうだな。すまんかったな、作者」
いいよ。それに、このままだと話が進まないから、
俺はエレベーターが4階に着いた瞬間に2人をエレベーターの外へワープさせた。
「こんな気前のいいことをするなんて、なにを企んでやがる?」
公が俺を疑ってきた。そんな公の後ろでは、頬を膨らましてむくれている夢。
おや、夢。どうしてそんなにむくれてるのかな?ニマニマ。
「なんでもないですわ!お義兄さま。行きましょう」
「え?あぁ」
夢が公の手を引いて歩き出したので、公は俺を問い詰めることができなくなった。
「ここですわ」
お店に着くころには夢の機嫌もなおって笑顔になっていたので、公も俺を気にするのをやめて笑顔になった。
お店の中に入ると、早速夢はいろんな小物を見て回った。そんな中で夢が手に取ったのは青い蝶の髪飾りと赤いリボンの髪飾り。
「お義兄さま。どちらのほうが夢に似合いますでしょうか」
男性が女性にされて困る質問がやってきましたね。さぁ、公は正しい答えを出せるのでしょうか。
私がワクワクしながら見てると、公は蝶のほうを指さしました。
「蝶のほうが夢に似合ってるぞ」
「では、蝶のほうを買ってきますわ」
「いや」
公は蝶の髪飾りを夢から取るとレジに行って会計を済ませ、夢の髪につけてやった。
「プレゼントだ」
公の粋な計らいに夢は顔を赤くしながら蝶の髪飾りを触った。
「一生大事にしますわ!」
満面の笑みを浮かべた夢は公の腕に抱きついた。
うわ~。キザだね~。さすがシスコンの天然ジゴロだね~。
「だから、その称号やめろ!」
ムリだよ。1度ついた称号は2度ととれないのよ。
「最悪だ」
落ち込んだ公だが、夢とのデートの最中なのですぐに気持ちを切り替えた。
「このあとはどうするんだ?」
「あとはウィンドウショッピングをしようと思いますわ」
「そうか」
お店を出た2人は腕を組んでいろいろとお店を見て回る中でクレープ屋さんを見つけた。
「お義兄さま。クレープ食べませんか?」
「いいよ」
2人はレジにやって来た。
「いらっしゃいませ。なににいたしますか?」
「夢はなにがいい?」
「わたくしはチョコバナナにしますわ」
「俺はキャラメルティラミスで」
「かしこまりました。2つで1060円です」
公がお金を払い、出来上がったクレープを受け取ってチョコバナナのほうを夢に渡した。受け取った夢は早速一口。
「美味しいですわ」
夢の笑顔を見ながら公も一口。
「確かに美味いな」
「お義兄さま。一口どうぞですわ」
差し出されたクレープを一口食べてから公も自分のクレープを夢に差し出した。
「お礼に一口どうぞ」
少し照れながらも一口かじる夢。
「美味しいですわ」
さらに笑顔になる夢。
☆
「あ~あ。お暑いわね~」
《マスター。ひがまないでください。みっともないですよ》
「みっともなくていいですよーだ。2人は楽しそうにクレープを食べてるし」
《微笑ましい光景じゃないですか》
「妬ましいから邪魔しにいこうかしら」
《止めてください》
「はぁ~」
私はため息を吐いてふて腐れます。
《マスター。早く続けてください》
「15話はこれにて終了!」
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる