私のための小説

桜月猫

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42話

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「でも~、公と楓が生徒会に入るなんて意外だったね~」

 行きつけの喫茶店でくつろいでいた暁は楓を見た。

「そう?」
「そうね。公や楓っていつも帰宅部だったから多少の驚きはあったわね」

 公はいつも「めんどくさい」と言っていたし、楓は「興味ないわ」と言って中学では部活には入らなかった。

「どんな心変わりなのかな~」

 首を傾げながら暁は楓を見つめた。

「そうね。夏先輩が可愛かったっていうのもあるけど、それ以上に楽しそうかなって思ったからね」
「お待たせしました。珈琲と紅茶とカフェオレにオムライスとサンドイッチとナポリタンです」

 彩が運んできた料理を見て暁は微笑んだ。

「彩。そのまま桜達とお昼にしなさい」
「わかりました」

 マスターが差し出したドリアとレモンティーを受け取った彩は桜の隣に座った。

「そういえば、彩はどこかの部活に入ったの?」
「私はこの店の手伝いがあるから入ってないです」
「別に手伝いなんていいって言っておるのに聞かんのだよ」

 困ったように言いながらマスターはナポリタンを作っていた。

「そうそう。学生の時はよく遊び、よく学ぶ。それが1番なんだからな」

 この喫茶店でアルバイトしているフリーター利太りたが笑顔で言った。

「だからといって、利太みたいにはなるなよ」
「誰も利太さんみたいになろうとは思わないでしょ」
「あり得ないですね」
「絶対にイヤだね~」
「大丈夫ですよ、お祖父ちゃん。利太さんみたいになる気はないですから」
「全員否定してくるなんてヒドくないか!?」
『ヒドくない』
「ショック!」

 話に加わってなかったお客からも言われて、利太は叫びながら頭を抱えた。

「利太。それ以上サボるようなら給料はやらんぞ」
「それだけは勘弁してください!」

 というわけで利太は必死になって働きだした。

「それで、マスターもああ言ってくれてるんだし、彩も部活に入ったらどう?」
「何か気になる部活はあった?」
「気になる部活はなかったです」

 笑顔でそう答えた彩はドリアを一口。

「嘘をつくでない。彩は中学では卓球部で、高校でも入ろうか悩んでおったではないか」

 マスターの一言に彩はむせた。

「お祖父ちゃん!その話はもう終わったでしょ!」
「いや!終わってなんかないわ!」

 桜は彩の肩を掴んで強引にこちらへ向けた。

「ねぇ、彩。土曜日はあいてる?」
「その日も手伝いが」
「手伝いはいらないぞ、彩」
「でも!」

 桜に肩を掴まれているので顔だけで振り返った彩に、マスターは微笑みかけた。

「彩が居ない分は利太が頑張って働くから大丈夫じゃよ」
「俺の負担がでかくないですか!?」
「学生の時はよく遊び、よく学ぶのが1番と言ったのは誰じゃ?」

 マスターに問われて利太は手を上げた。

「なら、学生が遊ぶのを手助けしないとのう」
「はい」

 うなだれながら仕事に戻る利太。

「それに、土曜日は佳英かえも居るから大丈夫じゃ」
「というわけで、ラケットとシューズ持って9時にこの喫茶店の前に集合ね」
「う、うん」

 マスターに外堀を埋められたうえに、桜の勢いに押されて頷いてしまった彩。
 彩の了承を得た桜は上機嫌でナポリタンを食べた。

「桜は卓球が関わると子供になるんだから~」
「そこが桜の可愛いところでもあるじゃない」
「そうだね~」


          ◇


 休憩のために寄ったパーキングエリア。

「ふ~!」

 車から降りた史はおもいっきり背伸びをした。

「お疲れさま」
「ホントに疲れるよ」

 史は肩を回してコリをほぐした。

「普段から夏蓮さんに運転を任せっきりにしているから、たまに運転するとすぐに疲れるのですわよ、お姉さま」

 夢のもっともな指摘に史は苦笑した。

「お義姉ちゃんが車を出してくれたからこうして家族旅行が出来てるんだから、そんなこと言っちゃダメだよ、夢ちゃん」
「でも、自業自得ですわ」
「はいはい。2人ともそこまで」

 公が間に入って2人の頭を撫でた。

「とりあえず中に入ろうか」
『はい(ですわ)』

 2人が公と腕を組んだので、史はバックハグで抱きついた。

「義姉さん。流石に少し歩きづらい」
「運転して疲れたんだからねぎらってくれてもいいじゃないか」
「わかったよ」

 公は歩きづらさを我慢してパーキングエリアに入った。しかし、そんな格好で歩けば人目をひくのは仕方ないことで、みんなが公達を見ていた。


          ◇


「ア・ホ・か」

 人は不良3人の頭をハリセンで叩いていた。

「ゴールデンウィークやっちゅうのに人様に迷惑かけんなや」
「迷惑ってナンパしてただけだろが」

 頭を抱えてた不良Aが涙目になりながら人を見上げた。

「しつこすぎるねん。相手がムリってゆったらさっさと諦めんかい」
「そんな簡単に諦めてたらいつまで経ってもナンパに成功しないんだよ!」

 不良Bの悲痛な叫びに他の2人が頷いた。それを見てため息を吐いた人は3人の頭を再度ハリセンで叩いた。

「そもそも、ナンパを成功させたいならその時代錯誤な不良の格好を止めることから始めや」
「なっ!」
「この格好を止めろだと!」
「そんなのムリに決まってるだろ!」
「やったらナンパの成功確率はゼロやな」

 人にゼロと言いきられて3人は落ち込んだ。

「わかったらうちへ帰れ」

 落ち込んだ3人は言われた通りに家に帰っていった。

「相変わらずなことしてるのね」

 その言葉に人が振り返ると雪がいた。

「おっ、雪やないか。どうしたんや?」
「たまたま人を見かけたから声をかけただけよ」
「そうか。でも、ゴールデンウィークなんやから俺なんかにかまってないで有意義に過ごしや」
「それを言ったら人は不良達にかまってないで有意義に過ごしたらどうなの?」

 鋭い返しに人は額をぺちっと叩いた。

「イタタタタ。それを言われたら痛いわ~」

 本気でそう思ってるわけじゃないのを理解している雪はため息を吐いた。その反応を見て、人はおちゃらけるのを止めた。

「俺にとってはこれが趣味みたいなものやって知ってるやろ。だから、これ以上ないってくらい有意義に過ごしてるで」
「そうだったわね」

 そう言いながら雪が自然と歩きだしたので、人も自然とついていく。

「それで、ゴールデンウィークになんか予定はないんか?」
「今日はないけど、明日から友達と遊んだりはするわよ」
「だったらなんで今日から遊ばんねん!その1日の空きはなんやねん!」
「仕方ないでしょ。明日からしか時間が合わなかったんだから」

 人のテンション高いツッコミをさらっと受け流して答える雪。
 暖簾に腕押しの状況に人が頭を掻いていると、いつの間にか2人は商店街にやって来ていて、八百屋のおっちゃんが声をかけてきた。

「よぉ、人」
「あっ、おっちゃん。腰の様子はどうや?」
「ぼちぼちだな」
「あんまりムリしてまたぎっくり腰になるなよ」

 すると、向かいの肉屋の奥さんが出てきた。

「人ちゃん。揚げたてのメンチカツいるかい?」
「おっ!いるいる!おばちゃんの揚げたメンチカツは日本一やからな」
「上手いこと言って~。どうせ他のところでもそう言ってるんだろ?」
「うわっ!バレてもた!」

 人の冗談に笑いながらおばちゃんはメンチカツを差し出した。人はメンチカツを受け取って早速一口。

「やっぱり揚げたては最高やな。おばちゃんありがとうな」
「またよってきなよ」

 おばちゃんと別れて歩きだしたのだが、次から次へと商店街の人達に声をかけられて人の周りにはちょっとした人混みが出来ていた。
 その様子を微笑ましく見ていた雪は人を置いて歩きだした。
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