私のための小説

桜月猫

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95話

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 大会はお昼休みに入り、公達は会場内の机でお弁当を食べていた。

「ちなみに、公が食べているお弁当は桜の手作り弁当なんだけど、こういう時って応援にきたほうがお弁当を作ってくるのが普通じゃないの?」

 私のジト目をうけながらも、公は気にした様子もなく豚のしょうが焼きを頬張っていた。
 なので、食べ終わるまで待っていると、豚のしょうが焼きを食べ終えた公は玉子焼きに箸を伸ばしたので手首を掴んで止めた。

「そこら辺、どう思っているのかな?」

 すると公は呆れたようにため息を吐きながら私の手をはらった。

「どうもこうもそういう決まりがあるわけじゃないんだからいいだろ」

 公は玉子焼きを頬張った。

「そうかもしれないけど、大会を控えている人を早起きさせてお弁当を作らせることに対して何も思わないのかな?」

 さらにジーっと見つめていると、公も悪いとは思っているのだろう、目を反らし始めた。

「確かに俺が作るべきなんだろうが、俺が作るより桜が作った弁当のほうが美味しいし、桜も作ってくれるって言ってくれたから任せたんだよ」

 お弁当を美味しいと褒められた桜の口元がわずかながらにやけていた。

「なるほどね。ホレた弱みってヤツね」

 そのわずかな変化を見逃さなかった私は納得しながらおにぎりを食べた。
 私が桜を見ていたことに気づいた瑠璃の視線は桜へ。そして、瑠璃も口元がにやけていることに気づき、ニヤニヤしながら桜に近づいた。

「やっぱり公くんに褒められると嬉んだ~」
「なっ!」

 桜は慌ててにやけていた口元を引き締めて何事もないように装うが、すでに声が出てしまったのでバレバレだ。

「そんなことないですよ」

 それでもごまかそうとする桜に、瑠璃はさらにニヤニヤしながら接近した。

「別に恥ずかしがらなくてもいいのに」
「恥ずかしがってません」

 否定しながらも桜は瑠璃から視線を反らした。

「ツンデレちゃんなんだから」
「作者!」

 瑠璃は睨まないくせに私はあっさりと睨み付けてきた。

「公に美味しいと言われて口元をにやけさせたのは誰かな~」
「な~」

 私は正面からニヤニヤ。瑠璃は隣でニヤニヤ。2人からニヤニヤされた桜は私を睨み付けて拳を握りしめた。

「桜。作者なんかムシして弁当食えよ。じゃないと時間なくなるぞ」
「わかっているわよ」

 拳をといた桜はイライラしながらもお弁当を食べ始めた。
 そんな桜の隣ではお弁当を見つめる彩の姿があった。

「彩。ご飯食べないの?」
「あともう1歩ってところまでいけたのに」

 彩は球に接戦で負けたことを悔やんでいた。特に、1セット目と4セット目のデュースになった時に競り負けたことを悔やんでいた。

「あそこで競り勝ててれば勝てたはずなのに。そして、あそこで競り勝つためにはもっと練習をしてもっと強くならないと」

 悔いるのを止めて気合いを入れ直している彩を見て、球は「スゴいな~」と感心していた。

「あれが、全国大会の1回戦で負けただけで『この人達には勝てない』と決めつけて心が折れた弱い私に足りなかったモノ。そして、これから強くなっていくために必要なモノ」
「その通り」

 いつの間にか近くにいた瑠璃が微笑みかけた。

「そして、それに気づいた今の球ちゃんなら大丈夫でしょ?」
「はい!」

 力強く頷いて微笑み返した球が彩のほうへ視線を戻すと、彩の前で公が手を振っていた。

「彩。彩!」
「え、はい!」

 公の声に反応してハッとした彩。

「さっきの試合の反省をするのはいいけど、とりあえず今はご飯を食べなよ」
「そうだよ。まずはご飯食べましょう」
「はい」

 2人に促されて彩はお弁当を食べ始めた。

「それに、彩の敵は私がとってあげるから」

 そう言いながら桜は挑発的の視線を球に向けた。
 その視線を受けた球は余裕の笑みを返した。
 このまま順調に勝ち上がれば桜は準決勝で球とあたることになる。

「でも、そのためには桜ちゃんは強敵を倒さないといけないんだな」
「強敵、ですか?」

 瑠璃が強敵とまで言う相手がこの大会にいることに桜は少し驚いていた。

「えぇ。その強敵とは、桜ちゃんの次の対戦相手、私の昔からのライバルのA子よ」
「ちょっと待った!作者!」
「なに?」

 私は首を傾げた。

「一子に名前をつけたからってA子を使い回すな」
「使い回すもなにも、モブの名前はAもしくは1からって決まってるでしょ?」
「それはわかる。だから一子にA子にしたんだろ」
「そうよ」
「だったら次に出てくるモブはB子なんじゃねーか?」

 それは間違いではない。

「でも一子って名前がついたからスーパーモブに格上げになっちゃったのよ。だから、モブがいなくなったからまたA子からなのよ」

 私の説明に納得しきれないのか、公はなんともいえない表情をしていた。

「もう決まりだからね」

 私は言いきるともうこれ以上異論を聞く気はないのでおにぎりを頬張った。

「そのA子さんは強いんですか?」
「もちろん。なんたって私のライバルだからね」

 少しドヤ顔で答える瑠璃。

「瑠璃先輩と同じくらいの強さなんですか?」
「えぇ。だから、全国区の選手よ」

 瑠璃の言葉に桜は気合いを入れ直した。

「つまり、そのA子さんに勝てれば瑠璃先輩に勝てる可能性も出てくるってわけですね」
「ふふっ。私もA子もそう簡単に勝たせてあげないわよ」

 瑠璃が微笑みかけると桜も微笑み返した。

「わかっています。でも、初めから負けにいく気はありませんよ」

 桜の微笑みは挑戦的な微笑みに変わった。

「そうよ。勝ってきなさい」

 瑠璃はさらに笑みを深めた。
 瑠璃の言葉にさらに気合いを入れた桜は、昼からの試合の力をためるためにお弁当を食べ始めた。
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