7 / 53
7
しおりを挟む
「久しぶりだね、パルちゃん。いつもリサと仲良くしてくれてありがとう」
「こんにちは、おじさん。ごぶさたします」
「いつも礼儀正しいね。リサにも見習わせたいよ」
「そんな事はないですよ。リサもいつもちゃんとしてますよ」
「そうかい?」
おじさんとわたしは近所の井戸端会議みたいな会話をしていた。
そんな話しの中から、宿屋について会話の糸口を探していた。
どう話しはじめるか。下手な話し始めでは、リサに被害が行きかねない。
「おじさんも、お仕事どうですか?あんまり忙しいとリサとゆっくり話す時間もないでしょう?」
「まぁ、それなりだよ。リサも手伝ってくれるしね。パルちゃんもお家の仕事は手伝うだろう?」
「そうですね。たまにサボってますけど」
ダメだ。子供相手と思っているからか愚痴めいた事すら話してもらえない。
ここはズバッと言ってしまうかな?
リサに被害が行かないようにと思っていたが難しそうだ。
わたしは方向転換をあっさりと決めた。
「おじさん、近くに新しい宿屋ができたって聞いたけど、どんな宿屋なんですか?」
「ん?ああ、パルちゃんも知ってるんだね。まぁ、新しいからきれいだしね。ウチとはいろいろ違うみたいだ」
「どんなところがですか?」
「古い所よりは新しい方がいいだろう?皆そう思うのは同じだよ」
「古いところにも良いところはたくさんあると思いますけど。工夫次第じゃないですか?」
「どうやって?」
おじさんはわたしの話しに興味を持ってくれたようだ。
わたしはそこに乗っかる事にした。
「おじさん。わたしにはいくつかの考えがあります。それにはもちろんおじさんからの情報も必要です。正しい情報や環境がわからないとうまくいきませんから。ただ、わたしの狙いが上手く行ったら、わたしにご褒美をほもらえませんか?気持ちで良いので報酬が欲しいです。もちろん、報酬はおじさんにお任せします。どうでしょうか?」
「パルちゃんの考えが上手く行ったらでいいのかい?」
「はい。わたしには実績がないので信じてください。と言っても信じられないでしょうから、そこは結果が出てからの判断で良いです」
「面白そうだね。でもね」
おじさんは信じきれないようだ。子供のわたしが言うことが、どうだろうと思っているのだろう。無理もない話で、わたしが同じ立場なら半信半疑にでこの話には乗らない。
ただ気持ちはわかるので説得もしやすい。
「おじさん。ダメだとしても、おじさんに損はないですよ。自分で考えて上手くいかないのか、人の意見でうまくいかないのかの違いじゃないですか?それに、わたしが失敗したらわたしの責任です。おじさんの責任ではありません。どうですか?」
「それはそうだね」
おじさんは揺れているようだ。少し面白がっている様子もある。子供の友達がこんなことを言い出すとは思ってなかったはずだ
でも一番大きいのは、わたしのおじさんの責任ではない、が大きい様子だ。
ここはもう一押し。
「おじさん。始めから失敗するつもりでやってみるのも良いんじゃないですか?成功したらラッキー位のつもりで。どうでしょう?」
「そうだね。始めから上手くいかないつもりなら、それはそれでいいかものね」
「そうですよ。やれることはやってみましょうよ」
わたしの言葉におじさんは頷いていた。
なんとか説得することが出来た様子だ。
おまけにリサから話を聞いたとは思っていない様子。リサとの約束も守れたみたいだ。
そこは安心できた。
わたしは一息つくと改めて口約束でがあるが契約内容を確認する。
「じゃあ、おじさん。確認ですが。わたしはおじさんから情報をもらう。その内容からこの宿の改善点を探し出して改善させる。おじさんが改善できたと思ったら、わたしはおじさんが良いと思った報酬をもらうことができる。合ってますか?」
「ああ。それで良いよ」
「ありがとうございます。では」
「リサちゃん。そこまで話をちゃんとするなら契約書を作ろうか?」
「?ありがたいですけど。わたしではそこまでの条件は満たせないと思いますけど」
「関係ないよ。口約束では後から揉めるといけないからね。契約書の大事さを実感するのは大事だよ。特にパルちゃんのウチは商店だからね」
「ありがとうございます。ではよろしくお願いします」
わたしはおじさんの好意に甘えることにして契約書を作ってもらった。
正式なものではないけど、子供のわたしを相手に簡単なものでも契約書を作ってもらうのはありがたいことで、嬉しかった。簡易でも契約相手として認めてもらえたのは予想外の事でこちらの世界では始めてだからだ。
それにわたしの勉強も兼ねてくれたようだ。わたしの家業も関係しているのだろう。おじさんの配慮には感謝しかない。
おじさんとわたしは内容を確認して契約書にサインを入れた。もちろん同じものは2枚ある。
サインを済ませるとわたしとおじさんは握手をした。
「では、これからよろしくお願いいたします。できる限りの事をさせていただきます」
「こちらこそ。お願いするよ。パルちゃんの考えを楽しみにしているよ」
「はい。全力をつくします」
二人で満足げにしていると、リサだけは呆気に取られてわたしとおじさんを見ていた。
「こんにちは、おじさん。ごぶさたします」
「いつも礼儀正しいね。リサにも見習わせたいよ」
「そんな事はないですよ。リサもいつもちゃんとしてますよ」
「そうかい?」
おじさんとわたしは近所の井戸端会議みたいな会話をしていた。
そんな話しの中から、宿屋について会話の糸口を探していた。
どう話しはじめるか。下手な話し始めでは、リサに被害が行きかねない。
「おじさんも、お仕事どうですか?あんまり忙しいとリサとゆっくり話す時間もないでしょう?」
「まぁ、それなりだよ。リサも手伝ってくれるしね。パルちゃんもお家の仕事は手伝うだろう?」
「そうですね。たまにサボってますけど」
ダメだ。子供相手と思っているからか愚痴めいた事すら話してもらえない。
ここはズバッと言ってしまうかな?
リサに被害が行かないようにと思っていたが難しそうだ。
わたしは方向転換をあっさりと決めた。
「おじさん、近くに新しい宿屋ができたって聞いたけど、どんな宿屋なんですか?」
「ん?ああ、パルちゃんも知ってるんだね。まぁ、新しいからきれいだしね。ウチとはいろいろ違うみたいだ」
「どんなところがですか?」
「古い所よりは新しい方がいいだろう?皆そう思うのは同じだよ」
「古いところにも良いところはたくさんあると思いますけど。工夫次第じゃないですか?」
「どうやって?」
おじさんはわたしの話しに興味を持ってくれたようだ。
わたしはそこに乗っかる事にした。
「おじさん。わたしにはいくつかの考えがあります。それにはもちろんおじさんからの情報も必要です。正しい情報や環境がわからないとうまくいきませんから。ただ、わたしの狙いが上手く行ったら、わたしにご褒美をほもらえませんか?気持ちで良いので報酬が欲しいです。もちろん、報酬はおじさんにお任せします。どうでしょうか?」
「パルちゃんの考えが上手く行ったらでいいのかい?」
「はい。わたしには実績がないので信じてください。と言っても信じられないでしょうから、そこは結果が出てからの判断で良いです」
「面白そうだね。でもね」
おじさんは信じきれないようだ。子供のわたしが言うことが、どうだろうと思っているのだろう。無理もない話で、わたしが同じ立場なら半信半疑にでこの話には乗らない。
ただ気持ちはわかるので説得もしやすい。
「おじさん。ダメだとしても、おじさんに損はないですよ。自分で考えて上手くいかないのか、人の意見でうまくいかないのかの違いじゃないですか?それに、わたしが失敗したらわたしの責任です。おじさんの責任ではありません。どうですか?」
「それはそうだね」
おじさんは揺れているようだ。少し面白がっている様子もある。子供の友達がこんなことを言い出すとは思ってなかったはずだ
でも一番大きいのは、わたしのおじさんの責任ではない、が大きい様子だ。
ここはもう一押し。
「おじさん。始めから失敗するつもりでやってみるのも良いんじゃないですか?成功したらラッキー位のつもりで。どうでしょう?」
「そうだね。始めから上手くいかないつもりなら、それはそれでいいかものね」
「そうですよ。やれることはやってみましょうよ」
わたしの言葉におじさんは頷いていた。
なんとか説得することが出来た様子だ。
おまけにリサから話を聞いたとは思っていない様子。リサとの約束も守れたみたいだ。
そこは安心できた。
わたしは一息つくと改めて口約束でがあるが契約内容を確認する。
「じゃあ、おじさん。確認ですが。わたしはおじさんから情報をもらう。その内容からこの宿の改善点を探し出して改善させる。おじさんが改善できたと思ったら、わたしはおじさんが良いと思った報酬をもらうことができる。合ってますか?」
「ああ。それで良いよ」
「ありがとうございます。では」
「リサちゃん。そこまで話をちゃんとするなら契約書を作ろうか?」
「?ありがたいですけど。わたしではそこまでの条件は満たせないと思いますけど」
「関係ないよ。口約束では後から揉めるといけないからね。契約書の大事さを実感するのは大事だよ。特にパルちゃんのウチは商店だからね」
「ありがとうございます。ではよろしくお願いします」
わたしはおじさんの好意に甘えることにして契約書を作ってもらった。
正式なものではないけど、子供のわたしを相手に簡単なものでも契約書を作ってもらうのはありがたいことで、嬉しかった。簡易でも契約相手として認めてもらえたのは予想外の事でこちらの世界では始めてだからだ。
それにわたしの勉強も兼ねてくれたようだ。わたしの家業も関係しているのだろう。おじさんの配慮には感謝しかない。
おじさんとわたしは内容を確認して契約書にサインを入れた。もちろん同じものは2枚ある。
サインを済ませるとわたしとおじさんは握手をした。
「では、これからよろしくお願いいたします。できる限りの事をさせていただきます」
「こちらこそ。お願いするよ。パルちゃんの考えを楽しみにしているよ」
「はい。全力をつくします」
二人で満足げにしていると、リサだけは呆気に取られてわたしとおじさんを見ていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる