幻影の讃美歌

ごさまる

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第二章

〜ロネ〜

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突然ハデスの目の前に現れた小さな男の子、ハデスも知っている様子に優は驚いた。

「ここからじゃ、少し離れていて二人とも見えづらいけど・・顔見知りのようだね?ミーミル?」

「・・男の子の名前は「ロネ」・・俺と出会う前から知っているらしい・・」

ミーミルは、そう言うとこれ以上なにも話さず、ただ静かに二人を見つめていた。



「ハデスのおじちゃん!また、会えて嬉しいよ!久しぶりだね♪今回も、ルシファーのおじちゃん達と一緒なんだね♪」

「あぁそうだ、一緒だ・・俺も会えて嬉しいよ・・しかしロネ・・まだお前がここにいると言う事は・・母さんには、会えてないのか・・?」

「・・うん。」

サラサラサラ~っと優しい風が吹き、二人の回りに桜の花びらが舞い上がった。

「でもねっ!ハデスのおじちゃんっ!きっと僕は見つけてみせるよっ!だって男だもんっ!」

「・・そうか・・そうだな・・見つかるといいな・・」

今までに見たこともない、ハデスの寂しそうな顔に思わずミーミルは、口を開いた・・。

「・・ロネの家は母親と二人暮らしで、小さな酒場で働く母親のわずかな金で、随分貧しい暮らしをしていた・・。 
そんな中・・母親は一人の男と出会った。仕事は医者だった。
二人はいつしか愛し合い、ロネの家で暮らすようになった・・ロネも父親が出来たと喜んだ・・しかし・・月日が流れ、男は仕事のストレスから酒浸りになり、毎晩の様に明け方まで酒を飲んでは、仮眠し仕事に行くという事を繰り返した。
そんな中・・拍車をかけるように、母親の酒場も客足が遠退き、店の売り上げも悪い日が続いた・・
いつしか二人の苛立ちはロネへと・・向けられた。
以前なら気にもしなかったロネの小さなイタズラも、二人は執拗に怒鳴るようになり、それは気付けば暴力へと変わっていった・・。」


「・・ねぇ・・ミーミル・・あんなに小さな男の子に暴力って・・」

「・・そうだ・・人間・・己が追い詰めらると容赦ない生き物さ・・。」

ミーミルも悲しげに話した。

優は、驚きと怒りを隠せずミーミルに聞いた。

「・・それで、しばらく暴力は続いたの!?」

「・・二人の暴力に必死に耐えていたんだ・・いつの日か、以前の様に三人で幸せに暮らせると信じてな・・
小さなロネにとって、母親が全てだった・・
そんなある日・・ロネは、酒浸りになった二人の代わりに夕食を準備していた・・
火を使うことが出来ないロネは、わずかな金を持ち、近くのパン屋でパンを三つ買った。
なかなか起きてこない二人を、ロネは必死に起きて来るのを待った・・。
だが・・まだまだ小さな子供だ・・我慢出来ずに自分の分を先に食べてしまった・・。」

そこまで話すと、ミーミルはしばらく黙った。

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