幻影の讃美歌

第三章

〜過去の記憶〜⑪中身のない器〜

「お前の妹ヨシアは・・我々の・・そして・・生きとし生きるもの・・全てを生み出しこの世界を創造した「主」の器になる者・・。
それが・・宿命。」

「・・何訳のわからない事を・・、ヨシアは俺が死んでも・・渡さねぇっ」

「・・「兄」のつもりか？アザゼル・・。
まあ・・仕方あるまい・・今日までの月日・・共に生きてきたのだからな・・だが・・血のつながりのない「偽り」の兄弟・・。
・・お前の両親は・・寛大な心で、人型の赤ん坊を受け入れてくれた・・。
「・・可愛そうに・・産まれてすぐに母親が亡くなるなんて・・心配しなくとも私達が愛をもって育てていきます。」とな。
我々がお前の両親へ預け、育てていたモノを返してもらうだけだ・・。」

「・・騙したのか・・？・・俺や・・母さん・・そして・・父さんを・・・・？・・。」

「そんなデタラメな話し・・耳を貸すんじゃねぇぞっアザゼル・・。
それにな・・この俺がお前達二人を・・側で見てきたんだ・・互いに親を亡くし・・互いに・・互いに・・兄弟の様に生きてきたんだ・・こんなデタラメ・・信じるかよっ！！」

「・・ならば貴様らに・・一つ問う・・。」

「！？・・」

「・・人間のお前達には、我々と違い「赤い血」が流れているな・・。」

「そんな事・・当たり前だっ、ふざけてんのかっ？」

「・・では・・ヨシアの「血」を・・お前達は、見たことがあるか・・？
器となる体には・・一滴も血など存在せぬ。
まるで・・人間の形をした人形だ・・。」

ジャリジャリッ！

バサアッッッ！

「くっ！？・・こしゃくな真似をっっ。」

握りしめた砂を天使神にぶちまけ、ミカエルは叫んだ。

「アザゼルっっ！今のうちにヨシアを連れて逃げろっ、早くっ！。」

「行くぞヨシアっ」

「・・・・・・・・・・・・。」

ガシッとヨシアを抱き抱え走り出した。

花畑が枯れ、木々も枯れ果てた荒れ地を、ただがむしゃらにアザゼルは走った。

「ハアハアハアハアっ、ヨシアっ、おいっ、ヨシア！しっかりするんだっ！」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

息も絶え絶え、ヨシアに呼びかけても返事がない。

ここは砂漠・・もはや身を隠す場所さえ見当たらない。

「・・・・頼むから返事してくれっ！ヨシアっ！
ハアハアハアハア・・ウワァッ！」

ザザザザザッ・・・・。

砂に足を取られ、勢いよく地面に倒れこんだ。

「いってぇ・・痛っ・・、ハアハア・・ヨシアッ！おいっ！しっかりするんだっ！ヨシアっ！」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「うっ・・う・・ウワァアアアアアアッッッ・・ハアハアハアハアたっ頼むから返事してくれ・・ヨシア・・・・目を・・目を・・開けて・・くれ・・。」

ドサッ。

目の前に落ちてきたのは・・血まみれになり、変わり果てたミカエルの姿。

「・・・・そ・・そ・・そんな・・お、おい・・嘘だろ・・？なぁ・・お前も返事・・返事しろよ・・？・・ミカエル・・？ハアハア・・・・・・
ちくしょーーーーっウワァアアアアアアアア！！」