盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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世界樹の子 後編

それぞれの目的

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隆の意識が戻ると目の前では壮絶な戦いが繰り広げられていた。
飛び道具が放たれた瞬間に弾け飛び、生えていた木は乱雑に切り捨てられている。

「ほらほら!ウチに勝つんじゃないの!?」

ライナが距離を取ろうとするがヒメがライナの速さに余裕で追いついてしまっている。
しかしライナのも反撃はしている。
ただ当たらない。
心でも読んでいるかのように刀で受け止められ、避けられてしまう。
諦めろとでも言わんばかりに弄ばれてライナの戦意は喪失しかけていた。

一方、その場から去ったリトスはラルアと合流していた。
事情を話し巻き込まれない距離で戦っているヒメとライナの様子を様子を見ることにしていた。

「ただ待ってるのも退屈だし、賭けでもする?」

(賭け?)

「ライナが勝つかヒメが勝つか。当てた人は…それは後で考える」

(ヒメってさっきの人のことか。僕はライナが勝つって信じるよ)

「じゃあ私はヒメに賭ける」

楽しそうに笑うリトスを見てラルアは首を傾げた。

(リトスに勝ってほしくないのかい?)

「勝ってほしいよ。けどヒメはライナに戦い方とかを教えていてここに来たのも家族が待ってるからって迎えに来たんだって」

(そういえばライナはそもそも隆の首を狙っていたんだったね。それで失敗したから帰れなくなったんだった)

「そうそう、でもヒメは町の中で一番強くて町長を黙らせるからってね」

二対一で戦い圧倒的な強さに手も足も出なかった。
そう考えると何故ヒメに戦いを教わっていたのに初対面時あんなに弱かったのか納得のいかないラルアだった。

「あ、決着ついたみたいだね」


膝をついたのはライナだった。
貰った道具は全て使いきってしまい、短刀も折れた。

「参り…ました…」

「だから言ったろう?ウチには勝てないって」

「ふっっざけんな!」

後ろから殴りかかる隆の顔を容易く切るとライナの腕を握って強引に立たせる。

「楽しかったろうが旅の時間は終わりだ。ライナ、お前にはお前のやるべきことがあるんだよ」

大人しく町の方へと歩くライナ。
その途中で待っていたかのようにラルアとリトスが立っていた。

「やっぱり取り戻そうって?」

刀を構えるヒメに対して敵意がないと両手を振るリトス。

「ないない!別れの言葉を言いに来ただけ。ライナ、元気でね」

(一緒に魔王を倒したんだ、これから困ることは無いだろう)

別れを惜しむようにライナの手を握るラルア。
そこにヒメはおらず、リトスと小声で話していた。

「魔王っていたの?」

「いたっていうか生きてるよ。あの馬鹿がここに呼ばれた理由が魔王倒すためだから。それでまぁ誤解だとか色々あって魔王を倒して仲良くなって、今ラルアの親であるユグドラシルに向かってたの」

「はー。そんな大冒険してたのかライナ。ってことはこれから三人で向かうんだ、途中死の街もあるし大変じゃないの?」

「だからライナを連れて行っちゃ困るって話だったの。ちょっと前までいた魔法使いのおっさんも用事があるってどこかに行ったし正直今から新しい仲間探すのも苦労するし面倒なの」

「そりゃそうだ。あのアルラウネの親がユグドラシルっていうのを信じるやつはそういないだろうしあんな死の街に行くやつも大概だし」

「あんなって行ったことあるの?」

「一度飛ばされたことがあってね。橋の下で昼寝してたらいつの間にかそこに飛んでたんだよ。片っ端から脅迫して戻れたからいいけど…あ、その顔はついてきてほしいなーって感じだな。悪いがライナのこともあるから行かないぞ」

「ちぇっ…それじゃライナをよろしくね」

「頼まれるまでもない」

ライナとヒメに別れを告げて隆が倒れている場所へと歩いていく二人。
すると隆が走って二人の前まで走ってきた。
まだ完全に肉体が復活していないのか若干顔がずれている。

「ライナは!?」

「帰ったけど」

「なんで止めなかったんだ!」

「止められるわけないでしょ。言葉巧みに訴えようとして折れる相手でもないんだし」

「だったら魔王に頼めばいいだろ!」

その言葉が頭にきたのか、リトスは思い切り隆をはたいた。
隆ははたかれた理由が分からず呆然としている。

「馬鹿じゃないの。ラルア、行くよ」

(う、うん…)

ついてくるなとラルアに木の壁を張らせてその場を離れた。

「なんなんだ…どいつも俺をのけ者にしやがって…!」

地面を力強く殴る隆。
しかし反応してくれる相手は誰もいない。

「俺が弱いからか?いや俺は魔王を倒したんだ!俺が弱いわけがない!」

隆の頭には「強くなる」という思考がなかった。
仲間と一緒に戦ったからこそ魔王に勝てたとは考えていなかった。
だから隆は考えた。
もっと強い仲間を集めればいいのだと。
「ラルアの親に会う」という目的など、もう忘れて。
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