盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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世界樹の子 後編

新しい武器

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隆とライナが抜けて二人でユグドラシルに向かうことになったリトスはまず自分の武器を買うためラルアに地図を見てもらい近い町を目指すことにした。

(ここからだと行ったことのあるナイアシンかそうでないマルトースだね)

「マルトースか…それだと死の街からちょっと遠ざからない?」

(僕は急いでないし遠回りしても大丈夫だよ)

しばらく歩くと日が暮れてしまい、火を起こしていると遠くから大きな足音が聞こえてきた。
二人はトロルかと思い気にせず過ごしていたが「おい」と声をかけられて振り向くとトロルではなく二本角を生やした巨人だった。

(オーガか)

「この俺を見て驚かないとはいい度胸をしているな!踏み潰されたいのか!」

(その足が要らないのならやってみるといい)

ラルアが挑発すると面白いほど簡単に乗り、二人を踏み潰そうとするがラルアが出した木によって足を弾かれて後ろに倒れてしまった。

(最近魔王とかヒメとか相性が悪い人達とばかり戦っていてその度負けているんだ)

「気にしてたんだね。私より強いのに」

(だからこうやって君みたいな傲慢なやつが僕の実験に来てくれると非常に助かるんだ)

蔦でオーガを縛り付けて踏もうとしてきた足に手を伸ばす。

(意識があるギリギリまで吸収して僕の新しい力を見せてあげよう)

ラルアはいつも通りに吸収してオーガを虫の息にすると薄くなった肉を貫いて腕を入れる。
そして体内から体外へ、まるで花が咲き誇るかのように多くの枝を貫かせた。
更に力を入れると枝の色が黒く変色し、オーガの肉体が腐っていく。

(これが僕の新しい力。どうだい?)

「凄いなぁ…武器買ってもずっと頼りきりになりそう」

拍手をするリトスに嬉しくなり、毒が残ったままの手でハイタッチしようとしたラルアだったがリトスが危険を感じたのか離れてしまった。

「毒ってやっぱりティアマトと戦った時のもの?」

(うん。おぬしらしいからって体を壊さない程度に残してくれたんだ。今のところ相手に枝を貫通させてそこから毒を流し込むってやらないと効果は期待できないけどね)

「そっか。…はぁぁ、私も技の一個や二個取得出来たらいいんだけどな」

ラルアの付き添いなのだからずっと守られているわけにもいかない。
武器を変えればいいのか、戦い方を変えればいいのか。
そんなことを考えているうちにいつのまにか寝てしまっていた。

次の日には昼に三回、夜に二回もアスモディアンや人間の盗賊から襲撃を受けていた。

「マルトースの周辺ってこんなに治安悪かったかな、大きな町ではないし商人もそこまで通ってないからそれ目当てでもなさそうだし」

(地図を見ても原因は分かりそうにないね。ただ今日襲撃してきた盗賊たちは町の方から来てたね)

その夜、ラルアは自分たちの周りに仕掛けを作ってから寝ることにした。

朝起きて確認すると特に何も掛かってはおらず、もうすぐ着くであろう町を目指してまた足を進めた。
この日は四人の盗賊が襲ってきただけでアスモディアンが現れることは無かった。
ラルアが最後に吸収する盗賊の一人にマルトースはあとどれくらいかと聞くと見逃してくれると思ったのだろう、素直に「もうすぐ」と答えてすぐに吸収された。

盗賊の言った通り昼過ぎにはマルトースの町に着くことができた二人。
入り口に見張り等はおらず武器屋を探すついでに見回ることにした。

いつも通り、森の外に出ることが珍しいエルフのリトスとアルラウネのアスモディアンであるラルアを見る目はいいものではなかった。
しかしもう慣れてしまった二人は特に気にすることなく町を歩く。

武器屋を見つけた二人は人間ではない客を目の前にして怯えている主人を無視して武器選びを始めた。

(前に使っていた武器もあるね)

「それでもいいんだけどねー。戦闘時は前に出たほうがいいのかなーって」

(それは無理だろう…そうだ、鞭なんてどうだい?手から離さず、一定の距離で攻撃ができる)

リトスに鞭を渡すと主人のいない方向へ鞭を叩きつけて感触を確かめる。
しかし手に馴染まずあった場所に戻してしまった。

「飛び道具じゃ消費しちゃうし、大剣なんて持てないしどうしたものかな」

(うーん…おっ、ちょっと持てるか不安だけどこれなんてどうだい)

ラルアに鎖の音をするものを持たされ、軽く振ってみると先端に何かがついているような重さがある。

「何これ?」

(モーニングスターだよ。鉄球の大きさは小さめのものを選んだけど威力はありそうだ)

どこまで伸びるのか検証しつつラルアが出した木でその感触を確かめる。

「うん、これがいい」

支払い終え町に用がなくなった二人は町を出た。
するとすぐに追いかけてきたのか盗賊の一人が前に回り込んだ。

「嬢ちゃんたち、悪いことは言わねぇから金目の物全部置いてきな」

使い古されて研いでもいない剣を構えて笑う男。
しかし戦い慣れていない事は一目瞭然だった。

(剣に対して体が引きすぎだろう、盗賊なのに傷つくことを恐れてるみたいだ)

「初めて…だとしたら他にも人が付いてるはずだけどね。町にいるのも不思議と言えば不思議だし」

「うるせぇ!いいからよこせって言ってんだろ!」

ナイフで人を刺すように両手で剣を構えている。
リトスがモーニングスターを一振りすると軽い音を立てて折れてしまった。

「なっ!?」

「意外と当たるものねー。次は顔にでも当ててやろうかな」

鎖の部分を持ち鉄球を回すリトス。
やけくそになった男はリトスに殴りかかるが鉄球を顔面に食らってしまい後ろへと吹き飛んでしまった。

「これなら自分の身くらいは守れるかな。よし!行こうか」

新たな武器を手にしたリトスは意気揚々と死の街へと歩きだした。
戦力不足という不安は消えないまま。
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